2019年から公演を重ねてきたミュージカル『憂国のモリアーティ』(以下、モリミュ)シリーズ。原作10周年を迎える2026年は、初演の物語Op.1が『緋色の研究 Reprise』として2026年6・7月に上演される。
カンパニーの大黒柱である“犯罪卿”ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役の鈴木勝吾、“名探偵”シャーロック・ホームズ役の平野良をW主演に、2チーム体制にて再びゼロから犯罪卿と名探偵の物語が動き出すこととなる。
初日まで2か月をきった5月4日(月・祝)、モリミュカンパニーは昨年に続き、日比谷ステップ広場で開催される「HIBIYA LIVE FESTIVAL 2026」ステップショーに登壇。ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役の鈴木勝吾、シャーロック・ホームズ役の平野良、演奏の境田桃子(Piano)、林周雅(Violin)が出演、ステージMCをルイス・ジェームズ・モリアーティ役の山本一慶が担当した1回目の様子をレポートする。
明け方まで大荒れだった空模様が嘘のように、爽やかな晴天が広がった日比谷ステップ広場。MCを務める山本を先頭に、平野、鈴木、そして演奏の境田、林が登壇すると、観客からは大きな拍手と歓声が巻きおこった。

「この青空にぴったりな衣装を用意していただきました」とお茶目にポーズを決める平野に「かわいい~」の声が上がったり、モリミュファンにはおなじみの林による「裏シャーロック・ホームズ役の林です」という自己紹介に待ってましたとばかりに笑いが起こったり。長年、ともに作品づくりをしてきたカンパニーならではの心地よいファミリー感が漂う。

山本のMC台本が強風でめくれてしまうと、平野がトコトコとやってきて、林が平野にするように、“裏シャーロック・ホームズ”ポジションに立ってサポートする。するとすかさず鈴木もニコニコと近づいてきて、山本をサンドイッチ。「ちょっと読みにくいんでやめてもらっていいですか? 後輩をいじめないでください!」と進行に焦る山本に、「この回はちょっとくらい(時間が)押してもいいって聞いたから(笑)」と平野が冗談を飛ばし、それを嬉しそうに鈴木が見守る。モリミュの醍醐味である歌声と生演奏を耳にする前から、会場はモリミュの世界に引き込まれていた。彼らが7年間積み重ねてきた絆そのものが、作品を支える大きな力になっていることを、改めて感じさせてくれた。

和気あいあいとしたトークの後、まずは鈴木・平野による「扉をあけて」が披露された。トークの陽気さから一転、2人はすっと役者のスイッチを入れ、ピアノ・バイオリンとの息のあった歌声で観客をモリミュの世界へ誘う。2人が青空の下、同じ地平に立ち同じ光景を観ながら歌うこのナンバーは、その歌詞の内容や作中でこのエピソードが担う役割も相まって、会場に春の日差し以上の温かな感情を運んできてくれた。

さらに、ここからはソロ曲が続く。鈴木による「この世界を」は、ウィリアムの意志を灯した楽曲。気持ちよく伸びる鈴木のハイトーンとともに、ウィリアムの信念が空間に染み込んでいくような感覚を味わえた。平野による「その凍えた魂を」は、このステージのために、よりクラシカルなアレンジに。トーンやテンポを変更したことで平野の歌声をじっくりと味わえる、イベント仕様のぜいたくな仕上がりとなっていた。そして山本はルイスがウィリアムを思い歌う「あなたがくれた命」を、しんみりと歌い上げる。



ラストの楽曲の前には、モリミュを支えるアンサンブルの大澤信児、熊田愛里、田中奏、若林佑太が登壇。主演の2人はつねづね「アンサンブルこそがモリミュの主役」と語っている。アンサンブルが生み出すロンドンの民衆や貴族の姿があってこそ、この物語は成り立つ。そんな作品に欠かせないアンサンブルの面々がこのステージに立つのはこれが初となる。

鈴木、平野、そしてアンサンブルの4人によるラストナンバーは「巡れ輪舞曲」。輪舞曲は主旋律が巡り巡って何度も奏でられる楽曲だ。モリミュもこの7年で、『Op.5 最後の事件』まで描き、そしてこの度、始まりの物語へと再び舞い戻ってきた。上演を控える『緋色の研究 Reprise』への期待を高めるのに、これほどぴったりな選曲はないだろう。

最後に平野は「7年ぶりに初演の演目をやりますが、構成や楽曲をガラリと変えた部分もあれば、そのままな部分もあるので、初演を観た方はもちろん、これまで名前は知っているけど途中からだと入りづらいと感じていた方も、今回は最初の物語を描くので、これを機会に劇場で体感していただくいいチャンスになるかと思います」と挨拶。
鈴木が「民衆や報われない人間、力なき人間に寄り添い、力ある者たちをどう打ち倒して、どう世界を変えていけるのかという話でもあります。皆さんの心のなかにあるいろんな思いに応えられるような作品になっていると思いますので、ぜひ劇場で応援していただけたら」と締めくくり、約30分のショーが終了した。
モリミュの物語は霧がかったロンドンの街を舞台に繰り広げられるが、爽やかな五月晴れの下で聴くナンバーは、まるで希望の灯のように輝いていた。7年前、この場所から始まったモリミュが、再び始まりの物語へと帰ってくる。巡り巡って戻ってきた物語が、今度はどんな景色を見せてくれるのか。6月の開幕が待ち遠しい。
取材・撮影:双海しお
