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今まさに届けたい、楽しく温かい気持ちを提供できる作品!
舞台『刀剣乱舞』无伝 夕紅の士 -大坂夏の陣-が4月11日に開幕。名だたる刀剣が戦士の姿となった刀剣男士たちが、IHIステージアラウンド東京(以下、ステアラ)を駆け巡っている。
刀剣育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」(DMM GAMES/Nitroplus)を原案とした舞台シリーズの最新作。圧巻の立ち回りと重厚な“ものがたり”で観客を魅了した「天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-」から続く、二部作の二作目だ。初演から三日月宗近役として作品の要を担ってきた鈴木拡樹が、2018年上演の「悲伝 結いの目の不如帰」ぶりに“出陣”している。
鈴木「舞台『刀剣乱舞』(以下、刀ステ)をステアラで上演できることが素直に嬉しいです。他の場所ではできない演劇のスタイルでお届けできるので、作品をどう伝えようかと考えることから楽しいですし、この劇場ならではの迫力ある演出で見ていただければと思います」
鈴木は同劇場のこけら落としシリーズである『髑髏城の七人 Season 月《下弦の月》』に天魔王役で出演しており、ステアラは二度目。それでも刀ステの座組でバックステージを巡ったときには新鮮な心地がしたという。
鈴木「やはりセットが変わると、裏からの景色も全く違いますから。『髑髏城~』のときはスタッフさんの手厚い誘導で助かっていたのですが、とにかく広いので、迷子になってしまわないように気を付けねばと思いました」
飄々と惚けてみせる口調に、刀剣男士・三日月宗近が重なる。三日月宗近は「天下五剣」と呼ばれる名刀のひとつだが、平安時代に作られた太刀で、自らを“じじい”と称するキャラクターだ。鈴木も冗談を欠かさない。
鈴木「三日月宗近は戦闘前に“給料分は仕事をするか”と呟くので、天下五剣は高給取りなのではないかと思っているんですよ。今作では同じく天下五剣の数珠丸恒次も出陣するので、出費がかさむ戦になりそう(笑)」
初登場となる刀剣男士を含め、今作では八振りが出陣。さらに「真田十勇士」や高台院といった、創作と史実が入り交ざる人物たちが登場する。
鈴木「全員のことを愛せると思います。嫌いになる登場人物がいないですね。大坂の陣という天下を取り合う合戦を描いていますが、ドラマは熱く爽やか。今まさに届けたいと思える、温かい作品です。脚本・演出の末満健一さんもすごく楽しそうで、会心の出来なのかなと思う節もあるくらい。初めてご覧になる方にも、楽しく温かい気持ちを提供できる作品になっていると思います」
コロナ禍で密なコミュニケーションが難しい中でも、皆が笑顔で稽古に取り組んでいたという。出口の見えない状況が続いているが、鈴木たちは怯まない。
鈴木「目標があるから。そして支えていただいているからだと思います。本番があって、来てくださるお客様がいらっしゃる。そのことを考えるだけで十分救われます。全公演を完走する大変さは以前から言われていましたが、現実的により厳しくなっているとは思います。でも最後までやりきることで誰も悲しむことなく、幸せな気持ちになれるのであれば、そこを最大の目標に掲げたい。そのためなら何事にも折れずに頑張っていけます」
公演は三ヶ月間に及ぶ長丁場だが、鈴木は「残り日数はカウントしません」と断言。その理由は「悲伝」で明かされた三日月宗近の真実にあった。
鈴木「刀ステの三日月宗近には、とある設定があります。普通の舞台では一公演が終わったら自分をリセットして、またフレッシュな気持ちで次のステージに立つものですが、その設定のために『悲伝』の時は初日だけ“初めての出来事”として演じて、その後の公演は同じ時間軸を繰り返しているつもりでやっていました。しんどかったですね(笑)。残りをカウントすると余計に自分の首を絞めるなと思ったので、数えないようにしていて。ただ、通常の人生では経験できないことも舞台という世界だったからやれた。三日月宗近の立場を追体験できて良かったです。この設定をご存知の方々には、またひとつ深い視点で三日月宗近のことを見ていただける部分があるかもしれません」
では、今作の三日月宗近にも何か“仕掛け”が秘められているのだろうか。鈴木はにこやかに躱した。
鈴木「どうでしょう?それは駆け抜けた後のお楽しみに」
インタビュー・文/片桐ユウ
※構成/月刊ローチケ編集部 4月15日号より転載
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
鈴木拡樹
■スズキ ヒロキ ’85年、大阪府出身。最近の出演作は『最遊記歌劇伝-Sunrise-』、舞台『幽☆遊☆白書』其の弐など。