「発表のときはめっちゃドキドキしました(笑)」太田基裕×阪本奨悟が挑む『xxxHOLiC』ワールド
CLAMPによる伝説的コミック『xxxHOLiC』がついに舞台となる。最大の注目は、すべての登場人物を男性キャストが演じるオールメイルでの上演となること。願いを叶えるミセの主人・壱原侑子に扮するのは太田基裕。アヤカシに好かれやすい男子高校生・四月一日君尋を阪本奨悟が演じる。
シェイクスピアをオールメイルで上演するなど、演劇では古くからある手法のひとつだが、馴染みのない観客にとっては完全なる未知数。はたしてどんな世界が待っているのか。今また2.5次元作品の歴史がひとつ更新されようとしている――。
女性役ということに対する気負いはない
――漫画ファンにとって、CLAMPは特別な存在です。そのCLAMP作品がついに舞台になるんだという驚きがありました。
太田「その熱量はすごく感じますね。情報解禁のときも、こんなに反応があるんだってビックリしました。僕は普段漫画をあまり読まないので、CLAMP先生についてこのお話をいただくまで詳しく知らなかったんですけど、4人で一緒に作品をつくっていらっしゃると聞いて。めちゃくちゃ面白い体制ですね。」
――創作のスタイルとか気になりますよね。
太田「そうそう。どんなふうに作品をつくっているんだろうっていろいろ想像しました(笑)。いつかお会いできたら、ぜひそんなお話も聞いてみたいです。」
阪本「僕もお名前は知っていたんですけど、作品を読んだことがなかったので、今回初めて読ませてもらいました。」
――いかがでしたか。
阪本「魅力的な作品だなと思いました。侑子さんが謎めいた存在で、もっと侑子さんのことを知りたくなるし、登場人物のキャラクターはみんなすごく際立っていて。」
太田「お話自体はかなりリアリティがあって、ほろ苦いところもある、メッセージ性の強い作品なんですけど、キャラクターのおかげというか、侑子さんのスタンスのおかげで、いい距離感で読者に訴えかけてくる感じがして。そこが僕は読んでて面白かったです。」
阪本「原作が、唯一無二の世界観なので、それを僕たちがどう表現すれば原作ファンのみなさんに喜んでもらえるかというプレッシャーはすごく感じています。僕の演じる四月一日はピュアで混じり気のない素直な少年。妖艶で謎めいた侑子さんとの対比が面白いところなので、その関係値をもっくん(太田)としっかりお芝居で表現していかなきゃいけないなと思いました。」
――太田さんは女性役が来たことについて率直にどう感じましたか。
太田「今までも何度か女性役をやらせてもらったこともあって、女性だから云々という思考回路があんまりなくて。」
――そうなんですか。
太田「もちろん声質とかシルエットの美しさとか多少気にするところはあるけど、男性も女性も同じ人間なので、どこか一緒だろうと思っている自分がいて。女性役ということに対する気負いは特に感じていないんです。」
――では侑子という役柄について今感じているのはどんなことですか。
太田「侑子さんの奥深さを表現するのはすごく難しいだろうなと。それを表現しようとしたら、自分がどういう生き方をしてきたかも全部炙り出されちゃう。侑子さんが、テンパってたらおかしいですからね。にじみ出る余裕がないと。若い自分だったらまずできなかったなと思うんです。」
――演じ手の器が試される役なんですね。
太田「それがはたして今の自分にできるのかという挑戦ですね。以前演じた役でも同じような難しさがあって、そのときは自分の器の小ささに愕然としたんですよ。もちろん自分の中では一生懸命やっているんですけど、こういう深さのあるキャラクターを演じるにはやっぱり経験が足りないんだって痛感した覚えがあって。その悔しさを払拭できたらなというのが、今回の個人的な課題です。」
阪本「僕の演じる四月一日は侑子さんとは対照的で。アヤカシが見えるという特殊体質ではあるけど、基本的な性格は謎めいたところの少ない、少年らしい男の子。好きな(九軒)ひまわりちゃんに対してはぞっこんで、わかりやすいくらい好きという気持ちを表現しつつ、ちょっと恥ずかしがったり、どうやってひまわりちゃんと仲良くなっていこうかという男の子らしいピュアな悩み方をしてて。百目鬼(静)に対してはそこまで嫌いじゃないけど、なんかムカつくなっていう感じで。どちらの感情も僕が四月一日と同じ年齢の頃に経験してきたことなので、すごく共感できる。学生時代の無邪気でまっすぐなときを思い返して演じられたらいいなと思っています。」
――そういうピュアな気持ちはまだ自分に残っていそうですか?
阪本「探してみます!どこにあるのかわからないので(笑)。」
撮影のときは、もっくんだけ時空が違っていた
――情報解禁の際はSNSでも大きな反響を呼びました。ああした反響はやはり気になりますか?
阪本「めっちゃ気になりましたね。」
――エゴサはしました?
阪本「やっちゃいましたね(笑)。」
太田「しちゃいますよね(笑)。」
――それは作品名で?それともご自身のお名前で?
太田「どっちもやります。あだ名でもやるし。」
阪本「「もっくん」でってことですか?」
太田「そうそう。「もっくん」もいろいろな「もっくん」がいるので、そっちの人かいと惑わされながら(笑)。どう思ったんだろう?って、いろいろなパターンで調べて。厳しい意見ももちろん聞き入れながら、なるほどそう思ったかと。」
阪本「ティザービジュアルが出たときは反響がすごくて。これだけ多くの方に注目されているんだなと改めて気が引き締まりました。」
――太田さんの侑子さんはインパクトがありましたね。
阪本「侑子さんの衣裳を着たもっくんは、そこだけ時空が違っていましたね。撮影しているもっくんたちと、それを見ている周りのスタッフの間に見えない壁ができていたんです。それくらいめちゃくちゃつくりこまれていて。その完成度の高さに感動しました。さすがもっくんだなと。」
――太田さんは鏡でご自身をご覧になっていかがでした?
太田「そうですね。可愛いと思いました(笑)。」
阪本「(笑)。」
太田「いや、うそうそ(笑)。こういうのって役者本人に似合うスタイルとキャラクターの魅力のバランスがすごく大切で。そこはメイクさんや衣裳さんと一生懸命話し合いながらできたので、いい写真を撮ることができたかなと思います。ここから本番に向けて、また動きの面とかいろいろ課題は出てくると思うけど、しっかりチームのみなさんと相談しながらやれたらいいなと。」
――今回はオールメイルということで、また独特の世界になりそうですね。
阪本「僕、オールメイルは初めてなんです。」
太田「稽古場では絶対笑っちゃうと思うよ?だってメイクも何にもしていないわけだから。」
阪本「「ひまわりちゃ〜ん」って言いながらさわったら筋肉がついてたりするんですもんね。あ~、どうなんだろう(笑)。わかんない。未知だから。」
太田「めっちゃ男だから。下手したらタンクトップとか着て、筋肉バッキバキで「四月一日く〜ん」って来る(笑)。」
阪本「待って。それは確かに相手役の方にちょっと気をつかってほしいかも(笑)。」
太田「せめてスカートでも履いてもらおうか(笑)。これまでの経験上、やっぱりちょっとしたパーツを身にまとうだけで、きゅっと気持ちが引き締まるんですよね。だから、僕も稽古ではちょっと早めのうちからヒールを履いたり、何かしら考えてみようかなと思う。」
昔、心霊写真を撮れたことがあります
――では、ここからは作品にちなんだお話を。四月一日はアヤカシが見えるという特異な体質ですが、人と違う体質って何かありますか?
阪本「僕はめちゃくちゃ敏感肌です(笑)。」
太田「僕もわりとそう!だから、刺激強めなのとか荒れちゃう。」
阪本「わ~、一緒ですよ。日焼けとかできます?」
太田「いや。大学時代に同級生に日サロに連れて行かれてめっちゃ火傷した。最悪だった。」
阪本「一緒です。」
太田「日焼けはダメ。真っ赤になって終わるタイプ。」
阪本「僕もそうです。弱いんですよ。基本的にいろんなことが敏感ではあります(笑)。」
――ずばり霊感的なものは?
阪本「小さい頃、そこに人がいるなと思って近づいていったら消えたみたいなことはありましたね。」
太田「普通に霊感あるじゃん、それ。」
阪本「あと、心霊写真もあります。」
太田「えー!鳥肌立ってきた。」
阪本「友達と海に行って、夜、花火をしたんですよ。そこで写真を撮ったら、ちょうど友達と僕の間に全然知らないめちゃくちゃ髪の長い女の人が写っていて。」
太田「本気のやつじゃん…。」
阪本「で、鑑定してもらったら、これ本当に霊ですよって。たぶん花火をしていたのが羨ましかったんだろうねって言われました。」
太田「ドラマみたいな話だ…。」
阪本「僕に恨みとかはないから、ほっといてもいいよって言われたので、そのままにしたんですけど。もっくんはあります?」
太田「シャワー浴びてるときに、後ろに人がいるかもと思ったことはあるけど。基本、ビビりだから(笑)。昔、トイレの水を流すのも怖かったし。」
――どういうことですか?
太田「ないですか?トイレの水を流すときの、あのブオーッて吸い込まれていく音が怖いっていうの。全然霊とかじゃないんですけど(笑)。あ、あと金縛りは1回だけある。」
阪本「え?そうなんですか。」
太田「しかもわりと大人になってから。30歳くらいのときかな。寝ていて、動けないってなって。」
阪本「えー!」
太田「怖っと思っていろいろ調べたら、金縛りは疲れからくるって書いてて、あ~よかったって(笑)。ない?金縛り。」
阪本「まったくないです。」
太田「疲れ溜まらないのかな…?」
阪本「まだ、そうですね。頑張ってます(笑)。」
願いが叶うなら、しゃがれた声がほしい
――では、次の質問を。侑子さんの「この世に偶然なんてない、あるのは必然だけ」という言葉が印象的ですが、おふたりはこの言葉に共感しますか?
太田「僕はなんでも必然だと思いすぎるタイプで。たとえばミスしたりしても、たまたまじゃなくて、自分の行いが悪かったからだとか、そういうふうに受け入れすぎてしまって、よくヘコんだりするんですけど。だから、侑子さんの台詞にはすごい共感できて、自分のことだって思いました。」
阪本「僕はなんでもたまたまだって思ってしまう人間なので、今のもっくんの話を聞いて、見習わないとなって思ってしまいました。」
太田「そっちの方がいいって。そっちの方が生きるのが楽だから。息苦しいよ、なんでも思い込みすぎちゃうのは。」
阪本「その中でも必然だと思えるのは、やっぱりこの仕事をしていること。今までいろんなことがあったけど、そのどれが欠けていても、今この場所には辿り着けていなかっただろうなという気がします。」
――では最後の質問です。侑子さんの店では、同等の対価を支払うことで願いを叶えてくれますが、おふたりならどんなことを願いますか?
太田「それこそ奨悟くんのような声帯とかほしいですよね。(阪本の方を見て)お金で買えるならいくらですか?」
阪本「いやいやいや。僕、声めちゃくちゃ弱いですよ。」
太田「そっか。じゃあNGで(笑)。」
坂本「すごいきっぱり(笑)。」
太田「うそうそ(笑)。でもやっぱり声とか身体能力とか、そういうものがもしお金で買えるんであればいいなって思うダメな自分はいますね。」
――この人の声がほしいという人はいますか?
太田「ロックが好きなので、昔はしゃがれ声が大好きだったんです。エアロスミスとかボンジョビとか、ブライアン・アダムスとか、スティングとか、ああいう渋い男の人の声に憧れていて。桑田(佳祐)さんが声をしゃがれさせるためにお酒飲みまくったって言うから、試してみたんだけど、なかなかならない。ああいう渋い声がほしかったですね。」
阪本「まったく一緒です。僕も声を潰したくて、学生時代はとにかくカラオケ行ってみんなで叫んでたりしたんですけど、変わらないんですよね、次の日には綺麗な声になってる(笑)。僕もロックシンガーが大好きで、エアロスミスも通りましたし、ボンジョビも通ったし。あとはSum 41とか流行ってて。」
太田「パンクいいよね。ニルヴァーナとか?」
阪本「(興奮して)ニルヴァーナ通った!」
太田「フー・ファイターズとか?」
阪本「(さらに興奮して)フー・ファイターズも通った!」
太田「ニッケルバックとか!」
阪本「(さらにさらに興奮して)ニッケルバックも通った!でも、ニッケルバックはさすがにあきらめました。」
太田「あの太さにはいけないと(笑)。」
阪本「僕はもうちょっと可愛いロックだなと(笑)。だから、しゃがれた声がほしいという気持ちはすごくわかります。」
インタビュー・文/横川良明
Photo/中田智章
※今回、ホリックはWEB用に別原稿まとめてあります。
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
太田基裕
■オオタ モトヒロ ’87年生まれ。東京都出身。近作にミュージカル「ダブル・トラブル」、ロックミュージカル『MARS RED』など。
阪本奨悟
■サカモト ショウゴ ’93年生まれ。兵庫県出身。近作にBWミュージカル「イン・ザ・ハイツ」、「池袋ウエストゲートパーク」THE STAGEなど。