「とことん世界に飛び込む」本能バースト演劇「sweet pool」櫻井圭登インタビュー

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本能バースト演劇「sweet pool」が3月12日に東京・天王洲 銀河劇場にて開幕する。2008年に発売されたNitro+CHiRALのボーイズラブ18禁アドベンチャーゲーム「sweet pool」の初舞台化となる本作。脚本を内田裕基、演出を中屋敷法仁が務める。稽古場にて、主人公・崎山蓉司を演じる櫻井圭登に話を聞いた。

自分によく似た人物を演じるということ

――お稽古はどうですか?

「この作品は僕が演じる蓉司と周りの人たちの関係性がすごく出るものなので、今はそれぞれの関係性を丁寧につくっている段階です。お芝居が上手な方ばかりなので、勝手に引き込まれています。3ルートあって、それぞれが“別作品”と言えるくらい違うので、分量的には大変ですが、楽しいほうが勝つ稽古場です」

――この作品には【通常公演】(哲雄が蓉司の運命を導くストーリー)と【エクストラver.睦】、【エクストラver.善弥】がありますもんね。大変そうです。

「でもどこか櫻井圭登の役者としての“挑戦状”みたいな感じの作品なので、やり甲斐しかないですよ。お客様にどう届くんだろうというドキドキもありますしね」

――「役者としての挑戦状」というのは?

「もちろん分量もあるのですが、役である蓉司と自分がかなり似ているんです。ここまで感情移入できる役は初めてかもしれないと思いますし、そのぶん舞台上で自分自身を見せられるかもしれないと思っています。新たな一歩になりそうです」

――その蓉司ってどんなキャラクターですか?

「人との関係性のつくり方が苦手だったり………ふふっ、なんかこれ」

――そうですよね(笑)。今似てるっておっしゃったから。

「言えば言うほど自分の話に(笑)。でも僕、昔、世の中に対して生きづらいっていう感情があったんですけど、そういう感性みたいな部分がすごく似ているなと思います。だから、もっと考えなきゃ言えないかなと思った台詞も、口に出すと自然とその気持ちになれる。そういう感覚も初めてなんですよ。自分の持っているものがポロッと出るような」

中屋敷さんにもっと料理してもらえるように

――ストーリーはどのように思われていますか?

「“生”の物語だと思います。そしてやっぱり“生”きるためには“愛”が大事なんだなと思いました。人間は一人では生きられない、というのを感じましたし、愛の持ち方次第で人はいろんな道に行ってしまうことも、すごく考えさせられます」

――中屋敷法仁さんの演出は『ワールドトリガー the Stage』(’21年)から2作目となりますね。

「中屋敷さんとまたご一緒できるのが本当に嬉しいです。とにかく頭の回転が速い方で、僕が想像しているよりもっともっともっと先の世界が見えていて、それを共有してくださる。なのでなんの不安もないし、役者として居心地のいい現場をつくってくださるなと感じています。でもだからこそ、もっともっと料理してもらえるようにがんばっていきたいです」

――この作品には何を求められていると思われますか?

「やっぱりBLはひとつのテーマとしてあるので。それぞれの絡みの美しさなどは他のジャンルでは見られないものですし、僕たちもとことん世界に飛び込んで、とことん絡み合っていきたいです。そういう美しい画や、時には残酷な画を見せられるのは、『sweet pool』ならではなのかなと思います」

――振付もあるそうですね。

「そうなんですよ。今までにあまりやったことのない動きをします。お芝居に寄せてつくっていただいているので、こちらの感情がちゃんと出ないとその動きにはならないような振付ばかりです。3つのストーリーでそれぞれ全然違うので、お客様は楽しんでいただけると思います」

――いろんなところから心が揺さぶられる舞台になりそうですね。

「そうですね。先日、前半を通したんですけど、感情がぐちゃぐちゃになって。一気に眠くなりました(笑)。でもそのくらいの熱量を届けたいです」

どこまで作品に捧げることができるか

――各公演ごとの相手役のお話もうかがいたいです。まずはメインの通常公演、城沼哲雄役の砂川脩弥さんはどんな方ですか?

「初共演なんですけど、だいぶ仲良くなりました。稽古場でずっと一緒にいますし、帰り道も一緒なので二人で帰ったりもしています。その中で自然と好きになっているし、知れば知るほど自分と似ている人だなとも思います」

――似てますか。

「似てますね。同じ空気感を持っていて、それは蓉司と哲雄とも重なるので、役づくりにも使えそうだなと思っています。どこまで予測されてキャスティングされたのかわからないけど、これは運命だなと思いましたね」

――蓉司と哲雄って、そんなにたくさんお喋りせずとも心が近づいていくような関係性だと思うのですが、そういう空気みたいなものも自然と生まれそうですね。

「これからつくっていくところではありますが、なんとなくベースはできているんじゃないかなと思います。話さなくても、目を見ると何を思っているかとかがスッと入ってくるんですよ。いや砂川くんはどう思っているかわからないですけど(笑)。でも僕はそう感じているので、今あるものをベースにどんどん広げていけたらいいなと思います」

――三田睦役の杉江大志さんはどうですか?

「大志くんとは長い付き合いなのですが、ここまで距離が近い役は初めてです。だから『大志くんってこんな表情するんだ』と思うようなことがこの現場ではすごく多いですね。今までは仲間やライバルみたいな関係性の役が多くて、役者としてもライバル的な関係性だったと思うんですけど、この稽古が始まってからは、大志くんとの“愛”についてすごく考える……」

――愛!

「(笑)。今までとは全く別のベクトルから大志くんとの関係性をつくりあげている感じがします。知っているからこそ知らなかったこともあるなと思いますね」

――その感じ、役ともリンクしている気がします。

「僕もそう思います。多分、大志くんもそう思っていると思います。それがまた楽しいです」

――翁長善弥役の宇野結也さんはどうですか?

「宇野くんはほんと、パワフルな人です(笑)。でもそのパワフルさが“生”にしがみついてる善弥とマッチしていて、彼の叫び声にすごく心が揺さぶられます。自分が持ってないものを持っている方でもありますね。【エクストラver.善弥】はまだそんなに稽古ができていないのですが、つくっていくうちに新たな発見がたくさん生まれると思うので、そこがこれからの楽しみです」

――最後に、櫻井さんが今、稽古場で心揺さぶられていることを教えてください。

「29歳になり、座長という立場でやらせていただくにあたって、自分がどこまでできるんだろうと思っています。いろんな経験をした今の自分が、どこまで作品に捧げられるのか。そこはまだ未知数です。だから、本番の自分がどうなっているかが楽しみであり、ドキドキもします。絶対にお客さんの想像を越えたものをつくりたいです」

ライター:中川實穗
カメラマン:村上宗一郎