舞台『ジョーカー・ゲームⅡ』が、6月14日(木)東京・シアター1010にて初日を迎えた。
吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞をダブル受賞し、シリーズ累計120万部を突破する小説『ジョーカー・ゲーム』(柳広司著)と、アニメーション制作会社ProDuction I.GによるTVアニメを原作とした舞台。2017年の初舞台化が好評を博しての第2弾舞台となった。
実井役・木戸邑弥、蒲生次郎役・君沢ユウキ、風戸中佐役・合田雅吏、結城中佐役・谷口賢志、三好役・鈴木勝吾の5名が登壇して意気込みを語った囲み会見と、ゲネプロの模様をレポートする。
アニメ原作の2.5次元としては珍しいストレートプレイで、役者たちの息遣いまで伝わってくるような緊迫感と、スパイモノとしての激動感、あっと騙される展開が話題を呼んだ舞台『ジョーカー・ゲーム』。
第2弾となる今作は、第1弾に引き続き脚本・演出を西田大輔が担当。スパイ組織・D機関のキャストも続投する。そして新勢力に、D機関と真っ向から対立する諜報組織「風機関」が登場。TVアニメ『ジョーカー・ゲーム』と、小説『ラスト・ワルツ』の中から「ワルキューレ」を原作として、激動の時代を暗躍するスパイたちを描く。
まずは初日前、ゲネプロ直前に行われた囲み会見のコメントを届ける。
――舞台への意気込みをお願いします。
≪実井役・木戸邑弥≫
「約1年前が初演でした。お客様に喜んでいただき、第2弾を迎えることになって嬉しく思います。僕を始めとするD機関のメンバーは初演に引き続き同じ役をやらせていただくので、喜びと同時にプレッシャーも感じているのですが、ここまで稽古をやってきて、前回以上のものをお客様に届けられるという自信を持っておりますので、その自信を胸にお客様に届けたいと思います」
≪蒲生次郎役・君沢ユウキ≫
「僕と合田さんは今回から参加させていただきます。D機関にはやはりグループ感を感じたので、そのD機関に対して、どれだけ風機関が強い存在でいられるのかが勝負だと思っています。皆さんの期待を越えられるように頑張ります」
≪風戸中佐役・合田雅吏≫
「対立する風機関の長として、やることはひとつ。負けないようにではなく“負けない”という意気込みで臨みます」
≪三好役・鈴木勝吾≫
「第2弾ということで、より“深度”の増した作品になればいいなと思って稽古をしてきました。前作からの続役メンバーに、その名の通り風機関が新しい風となって加わっていますので、厚みが増した作品で、たくさんの方を騙せたらいいなと思っています(笑)」
≪結城中佐役・谷口賢志≫
「『ジョーカー・ゲーム』という作品はとても面白くて、小説とアニメで面白さも変われば、男性と女性が感じるカッコ良さも違う、色々な側面を持った作品だと思っています。その中で僕たちは舞台だから、僕たちだからできることを探してやってきました。全員を欺けたらいいなと思います」
――第2弾舞台の見どころは?
≪実井役・木戸邑弥≫
「舞台オリジナルシーンもありますので、そこが見どころになるかと思います。また、スパイとして別の人物も演じていくので、一人ひとりが色々な役を演じていることになります。舞台装置も演出も見ているだけで飽きない面白さがありますので、ぜひ注目していただければと思います」
≪蒲生次郎役・君沢ユウキ≫
「とても硬派な舞台です。ダンスや歌もなく、ストレートプレイで勝負しているので、このまま映画やドラマになってもいいくらいのクオリティだと思っています。お客様も一緒にシリアスな空気を感じていただければと思います」
≪風戸中佐役・合田雅吏≫
「見どころは全部ですが、ひとつにはリアルな時代背景があると思います。第二次世界大戦前という実際にあった時代を、演出の西田さんがすごくこだわって作ってくださっていたので、ぜひ観に来てくださる方にも、こんな時代があったんだということを感じていただければと思います」
≪三好役・鈴木勝吾≫
「見どころとしては、やはり全部です。“全部観ていないと騙されるぜ?”というところです(笑)。物語がハイスピードで展開するところもあれば、じっくりお芝居を見せるところもありますし、色んな緩急の中で進んでいきますので、役者一人ひとりの演技の隅々まで注目していただき、僕らと勝負してくれたら嬉しいです」
≪結城中佐役・谷口賢志≫
「漫画やアニメを原作とした2.5次元舞台の中で、こんなに出演者の平均年齢が高い舞台が存在するんだろうか……と思うぐらい、キャストの年齢層が高い舞台です(笑)。プロデューサーさんや制作さんを含め、2.5 次元界の中でかなり尖った作品をみんなで作っているなと感じていますので、そこが見どころです」
――お客様へのメッセージをお願いします。
≪結城中佐役・谷口賢志≫
「木戸邑弥が述べてくれると思うので、僕からはひと言だけ。何卒、観に来てください。よろしくお願いします」
≪三好役・鈴木勝吾≫
「こんなに演劇って面白いんだなと思っていただける舞台にしたいです。一人でも多くの方に観に来ていただきたいと思っています。よろしくお願いします」
≪風戸中佐役・合田雅吏≫
「僕は48歳、カッコ良くて恐い風戸中佐を演じられるよう精一杯頑張りたいと思います」
≪蒲生次郎役・君沢ユウキ≫
「このカンパニーでは33歳の若手として(笑)、期待以上のものを演じたいと思っております。一度目は必ず裏切られる舞台だと思いますが、二度目も必ず裏切ります。ぜひ観にいらしてください」
≪実井役・木戸邑弥≫
「真っ向からお芝居で勝負をしている作品です。前回よりも白髪の先輩が増えてパワーアップしたことでも(笑)、前回以上のものを見せられると思いますし、初めての方にも、何度観にいらしても楽しめる内容になっています。また次に繋げられるよう、キャスト・スタッフ一同頑張っていきます。どうか応援をよろしくお願い致します」
真摯なコメントがあふれる囲み会見。
その中でも、谷口が「おじさんたちが頑張って若い子をキュンキュンさせます!“白髪カッコイイー!”って言われたい(笑)」と吐露して会場から笑いを誘い、「結城の杖をグッズ化してくれないかな?」と、登壇者たちが盛り上がる姿も見られた。
この後は、あらすじとゲネプロの模様を届ける。
物語は、世界大戦の火種がくすぶる昭和12年秋。
帝国陸軍の結城中佐によって、スパイ養成部門“D機関”が秘密裏に設立される。その機関員として選ばれたのは、一般人でありながら超人的な選抜試験を平然とくぐり抜けた若者たち。彼らは魔術師のごとき知略を持つ結城中佐の元、スパイ活動に必要なありとあらゆる技術を身につけ、任地へと旅立っていく。
彼らのポリシーは1つ、「死ぬな、殺すな」
目立たぬことを旨とするスパイにとって、自決と殺人は最悪の選択肢であるとするD機関の思想は、時の陸軍中枢部から猛反発を受けるが機関員達は世界中で暗躍し始める。
そんな“D機関”と真っ向から対立する、帝国陸軍の精神を備え陸軍士官学校を卒業した生粋の陸軍軍人で構成される諜報組織“風機関”が設立される。
彼らが掲げたのは、「躊躇なく殺せ、潔く死ね」
「ダブル・ジョーカー」はいらない……どちらか失敗した方がスペア。
果たして、諜報戦を制するのは一体どちらか。
風機関が狙うターゲットを巡る攻防「ダブル・ジョーカー」と、ドイツ・ベルリンで展開する「ワルキューレ」、そして別の原作エピソードもちりばめられ、ストーリーは幾本にも連なり交差していく。
ベテラン勢はもちろん、続投メンバーもスーツ姿が板についており、重厚感たっぷりの芝居が繰り広げられる。D機関のメンバーそれぞれに活躍の場が与えられているため、スパイとして別人物に成りきって生きる彼らの“本当の顔”や“性格”が垣間見えたと感じられるシーンも。
当時のドイツに実在した人物たちとD機関のスパイたちが交流して、時代背景や心情を語る舞台オリジナルの要素を含むシーンなど、どこを取っても見どころ、そして見逃せない場面が続く舞台だ。
舞台装置である可動式の階段2つが大きく動き、プロジェクションマッピングと共に場面を演出。緊張感を高ぶらせる懐中電灯の明かりや鏡の反射、窓や“幽霊”などをあらわす照明、そしてD機関のメンバーが燻らすタバコの灯……“光”の多彩さも印象的。
どこから騙され、どこまで欺かれるか。
様々な生き様を見せるスパイたちを見届けに、ぜひ劇場へ足を運んで欲しい。
東京・シアター1010にて6月14日(木)~20日(水)まで上演。その後、大阪・大阪メルパルクホールにて6月23日(土)~26日(火)まで上演予定。
チケットは好評発売中。また千秋楽公演は日本全国の映画館にて生中継ライブビューイング上映が決定している。
取材・文/片桐ユウ