見たら驚くライブ体験ーーー舞台『ARGONAVIS the Live Stage2 ~目醒めの王者と恒星のプログレス~』│脚本・演出 毛利亘宏 インタビュー

アニメ、ゲーム、リアルライブなど、様々なメディアミックスで展開されるバンドプロジェクト『from ARGONAVIS』。2021年に上演された舞台版第1弾に引き続き、第2弾が2023年2月18日(土)より東京と神戸にて上演される。

アニメと同じキャストで行われる舞台版は、ステージ上にバンドセットを組み、実際にメンバーが演奏する他では見られない画期的な構成。演出・脚本は今回もプロジェクトスタート時から携わっている毛利亘宏が担当。いったいどのような内容になるのか?稽古場に伺い話を聞いた。

ーー“ナビステ(ARGONAVIS the Live Stage)”の第2弾が上演されます。現在の心境は?

いきなりこんなことを言うのはアレですが、アプリゲームのサービスが終了したり、決して順風満帆ではありませんでした。そんな逆境のなかでもお客様が熱い支持をしてくださいまして、新しい舞台ができる環境になったことを嬉しく思っています。

ーー『from ARGONAVIS』のプロジェクトは、作品で登場したバンドたちが現実社会でも活動しているところが大きな魅力のひとつです

Argonavis(アルゴナビス)やGYROAXIA(ジャイロアクシア)といったバンドは、リアルライブを重ねて成長しています。今回の舞台はポジティブな気持ちが前に出る舞台になっていると思います。

ーーどのようなストーリーになるのでしょうか? 

ArgonavisやGYROAXIAが参加していた「ライブ・ロワイヤル・フェス」が中断されて、次のステージに向かう彼らの覚悟を改めて問い直すことが全体を通してのテーマになります。

ーーアニメ~ゲームアプリで描かれてきたその後の世界ですね

自分自身、セミプロであった時間が長かったんです。30代の中頃になってようやく自分がプロだなと思えることがあって、そこで覚悟を新たにしたタイミングがありました。第2のスタートじゃないですけど、彼らにおいてのその瞬間をしっかり描いておきたいなと思ったんです。

ーー夢を追って東京にきたけども、そんな簡単に道は開けない。進路や友情など、誰もが悩むことでArgonavisのメンバーも悩むわけですね

このプロジェクト自体がみんなで苦労して、等身大でお客さんと一緒に進んでいく感覚があります。また、実際問題として、次に配信が予定されているアプリでは、彼らが上京してからの活躍が描かれるので、そこに至るまでの経過をちゃんと描きたかったという気持ちもありました。なので、タイミング的にも舞台でそのエピソードを描けるのは良かったです。

ーー今回はArgonavisだけでなく、GYROAXIAにも焦点が当てられます

前回はArgonavisの結成秘話だったので、今回はGYROAXIAを深堀りしようと。『目醒めの王者』という素晴らしい小説がありますので、それをモチーフにして作りはじめました。

ーー3月24日には「劇場版アルゴナビス AXIA』の公開を控えます。ますますGYROAXIAの魅力が膨らんでいきますね

GYROAXIAはプロフェッショナルというか、自分たちの音に凄いこだわりを持っているんですよね。ジャイロがジャイロであるためには何をしたらいいのか?メンバー全員がひとつのバンドとして凄い境地に達している。その過程は見ていて楽しいです。

ーーArgonavisとGYROAXIAの関係はとてもいいですよね

お互いがお互いを刺激しあっていいライバル関係だと思います。一緒に上がっていくというスタンスが凄くカッコいいなと思っています。

ーー成長過程をファンが実際に見れているというのは大きいですよね

このコンテンツって、演者がキャラクターについて自分で考えるんですよね。演出家に言われたからとか、誰かに言われたからじゃなくて、彼らがキャラクターを成長させていく。なので、バンドの実力もどんどん上がっていく。ライブを見に行くたびに腕を上げたなって感じがします。リアル育成ゲーム感があるというか。

ーーリアルバンドとしてライブをやっているというのは『from ARGONAVIS』プロジェクトの凄さでもあり、武器ですね

そうですね。前回の舞台よりもお芝居も演奏も格段にレベルアップしていますからね。それぞれ役者出身だったり、音楽畑出身だったり、声優出身だったりとみんな出自はバラバラなのに、バンドになるとそれを感じさせない。GYROAXIAのドラムの宮内(告典)なんかは音楽畑出身で、役者は前回の舞台がはじめてみたいなところからスタートしているのに、今回は普通の役者でもツラいよってくらいのボリュームのことをやっていますからね。

ーー芝居をしながら、ライブ演奏もするというのは特殊な舞台ですよね

この舞台は彼らじゃないとできないし、同じ企画を他でやろうと思ってもできない。役者さんであそこまで演奏できる人はいないし、ミュージシャンであそこまで芝居できる人はいないですから。長い時間をかけて醸成されたコンテンツだと思います。

ーー前回公演でびっくりしたのはメンバーがBGMも演奏していたことです

しかもアレンジも全部、演者が考えてやっていますからね。

ーー通常は音楽監督がやられるのでは?

ハハハ。音楽監督はいないですからね。今回ではあればGYROAXIAのファンの方も良く知るあの曲ができていく過程を見せていくのですが、私たちは完成形のあの曲は知っていても、それがどのような過程でできたかは知らない。どうやって曲ができていったかのエピソードを再現します。これは凄いことだと思います。

ーースタジオで曲ができていく過程を本人たちが演じるわけですよね?演出するのが難しいのでは?

私は専門家じゃないんで、「こういう雰囲気で、何回かで成功する過程を作ってくれない?」みたいなことを伝えるだけです。そうすると「じゃあ、バンド練習でやってきます」って。私はできあがってきた曲を聞いて、「おおっ~」って。

ーー演者への演出というよりもミュージシャンへのリクエストですね

そうですね。実際、五稜結人役の日向大輔と曙 涼役の秋谷啓斗に関しては打ち込みのBGMもお願いしていますからね。なので音楽的にはかなり詰め込んだ凄いことをやっているという自負があります。

ーー即興演奏もできそうですね

多分、遊んでいくんじゃないかな。ミスっても誰も本当のことを知らないですからね。それこそアドリブってことになりますね。

ーー“ナビステ”は芝居とライブが同時に楽しめるわけですけど、芝居と演奏の間にまったく違和感がないのはびっくりです。いつの間にか生演奏がはじまっている感覚はミュージカルとも違う感覚です

技術的なことよりも、気持ちの繋がりが大事なんですね。気持ちを乗せた芝居のまま演奏するから曲が伝わる。そこがこのステージの面白さだと思います。気持ちが繋がらないと上手く歌えなかったり、演奏できなかったりするので。嘘なことはしないように、等身大でお芝居をして欲しいって伝えています。

ーー今回の舞台では、前回登場していなかった“古澤嘉寿樹(井俣太良)”という新キャラクターがクレジットされています

内容に触れるので詳しくは言えませんが、古澤が登場するエピソードは以前にも書いてまして、今回への伏線になっています。かなりコアなファンしか知らないと思いますけど……。

ーー会場は池袋のBrillia HALLと、神戸のAiiA 2.5 Theater Kobeです

Brillia HALLはかなり大きな会場なので楽しみですね。神戸は昔、オリエンタル劇場だったところですが、高校時代に名古屋からお芝居を観に行ったりしていて、自分にとっては青春の思い出が詰まった劇場です。それこそ古澤役をやる井俣と一緒に行ったんじゃないかな。

ーー最後に読者にメッセージをお願いします

お芝居体験ともライブ体験とも違う、エンタメ経験ができるのがこの“ナビステ”です。とにかく観に来ていただいて、現場で起こっている凄いことに驚いていただきたいと思います。

インタビュー・文/高畠正人
写真/村上宗一郎