舞台「ラストアンコール~死者の夜明け~」ゲネプロレポート

ダンスボーカルグループBUGVELのKOSHINとMINATOがW主演を務める舞台「ラストアンコール~死者の夜明け~」が東京・銀座の博品館劇場にて開幕した。本作は、アプリ「マンガボックス」で連載中の志宇によるオリジナルコミックが原作。舞台版の脚本は鳥澄ワカタ、演出は田邊俊喜が務めている。

開演前。ステージには空に湧き出るような雲が投影され、タイトル文字が浮かび上がっていた。雲間からの日差しのように差し込んでくるライトの光の筋が、天国への階段のようで印象的だ。開演を待っていると、意外なところから血に汚れたセーラー服の少女が現れ、ステージに上がっていく。…客席の私たちもまた、死神によって霊が見えるようになっているようだ。

この世に未練を残す霊の願いを聞き届けるために暗躍する死神の海(KOSHIN)。自分を死に追いやった相手を殺してほしいという死者のため、探偵の大牙(MINATO)は海に協力し、不本意ながら死者の身辺調査を行っていた。とある事情で、妹の明音(熊沢世莉奈)の命を海に握られてしまったからだ。死者の無念を晴らしたい海と、人の命を奪うことが納得できない大牙は、常に激しくぶつかり合う。ただ、何も知らない明音の前では、2人は良き仕事仲間のように振舞うのだった。

KOSHINとMINATOは、本作が初舞台。初めての演技経験とのことだが、そんな初々しさを感じさせないような堂々とした芝居を観ることができた。死神・海を演じるKOSHINは、冷静かつ冷酷。決して荒く強い口調ではないのに、反論を許さないような凄味をセリフに纏わせていた。MINATO演じる探偵・大牙は、少しヤンチャで熱い魂を持ったキャラクター。その熱さを感じさせられる声量で、荒っぽく振舞いながらも目の前の人を救いたいという優しさが随所にじみ出る。そして、人の命を奪う手伝いをしているという葛藤を、声色にしっかりと乗せられていた。

物語は5つのエピソードと前日譚となるエピソード0で構成されており、恋人に殺された女、半グレ集団のボスに捨てられた男など、さまざまな死者が2人のもとに訪れる。その1つ1つのエピソードも、それぞれの死生観や倫理観をゆさぶるような物語となっており、それを目の当たりにしている大牙の苦悩にいつの間にか寄り添ってしまっていた。

死者の悩みに触れ続けている2人の前に、もうひとりの死神・樹(野口準)と謎の女・夢乃(花奈澪)が現れる。彼らは、死神になる前の海の“最悪の過去”を知っており、その過去に関係する男・朝日(阿部快征)と海を引き合わせようとしていた。大牙は探偵の先輩・杏一郎(久下恭平)の協力を得て、海の過去に迫っていく――。

物語はテンポよく進んでいき、エピソードがどんどんと解決されていくごとに、海の謎が深まっていくため、終始目を離すことができなかった。また、死神の大鎌を使ったアクションでは、ハッと驚かされるような場面もあり、さまざまな場面で映像投影が多用されており、視覚的にもわかりやすく、物語の世界観に入り込める。あっという間の2時間に感じられた。

開幕を前に、演出の田邊氏と、主演のKOSHIN、MINATOのコメントが公表された。田邊氏は「嘘を本当にすることができるのが演劇の力。また演劇はコミュニケーションの芸術であると思っております。たくさんコミュニケーションを取って、キャスト、スタッフと作り上げてまいりました。ここからは観客の皆さんとつながることができる物語をお届けしていくのみ」とコメント。

海役のKOSHINは「この舞台を皆さんにたくさん楽しんでいただき、この世界観をより知っていただけるよう全力で稽古に取り組んできました。海という死神を演じることは決して簡単ではありませんでしたが、スタッフの方々や共演者の皆さんに支えていただき、たくさんの壁にぶつかりながらも、本番までたどり着けたことをとても嬉しく思います」と、その胸中を吐露。そして「初めて僕のことを知る方もいらっしゃると思いますが、役者としてのKOSHINを魅せられたらなと思います。教えていただいたことを全力で出せるように頑張りますので、応援よろしくお願いいたします」と意気込んだ。

大牙役のMINATOは「毎日毎日を大切にし、素敵なキャストさん、スタッフの方々に囲まれ切磋琢磨してきました」と、過酷な稽古の日々を振り返る。そして「皆様が足を運んでくださるからこそ、舞台として成り立つものであり、お披露目する機会をいただけたことを何よりも感謝しております。この気持ちを忘れずに千穐楽まで大牙として駆け抜けていきますので、最後の最後までお付き合いをお願いいたします!」と、来場を楽しみにしているファンにメッセージを送った。

舞台「ラストアンコール~死者の夜明け~」は、東京・銀座博品館劇場にて、4月2日(日)まで上演される。

取材・文/宮崎新之