『HUNTER×HUNTER』THE STAGE│稽古場レポート!

冨樫義博による少年漫画『HUNTER×HUNTER』が舞台化、5月より東京・天王洲 銀河劇場にて上演される。『HUNTER×HUNTER』主人公のゴンが、まだ見ぬ父と同じハンターになるため、仲間とともにさまざまな試練に立ち向かっていく冒険譚。現在も「週刊少年ジャンプ」連載中で、世界中にファンの多い人気作品となっている。

今回は、ゴンがキルアやクラピカ、レオリオと出会い、ハンターになるための試験に臨む<ハンター試験編>と、ゾルディック家に連れ戻されたキルアをゴンらが助けに向かう<ゾルディック家編>が描かれるという。

稽古も佳境に入ってきた4月某日の午後、稽古場にお邪魔することができたので、その様子をレポートする。

この日の稽古は、キャストとアンサンブルの多くが出演している群舞のシーン。すでに大がかりなセットが組まれており、立ち位置などを確認しつつ振り入れをしている最中から拝見させてもらった。ハンター試験を受ける面々が、二次試験会場に向かう場面で、手拍子と足踏みのサウンドに合わせて、細かくリズムをカウントしながら振付を確認していく。大人数ならではの迫力と、ピタリと揃った際の気持ちよさは格別。その一体感を作り出すために、時間をかけてじっくりとシーンに挑んでいた。

その中央に立つのは、ゴン役の大友至恩。オーディションで抜擢された新星で、表情に初々しさがありながらも必死に現場に食らいついていた。まだ15歳の若さでこのビックタイトルに臨む大友。そのひたむきな姿は、ゴンのまっすぐな性格にも重なるように思えた。

そして、群衆の中をスケボーで颯爽と駆け抜けるのは、キルア役の阿久津仁愛だ。ただスケボーで移動するだけではなく、カウントのリズムに合わせて移動距離を調整し、ターンして戻ってくるタイミングなどをかなりシビアに動きを固めていく。SNSなどでもスケボーの練習に励んでいる様子がうかがえるが、このシーンの稽古の中でも移動のスピード感が増しており、回を重ねるごとに上手くなっていったのが印象的だった。

彼らに並ぶのは、クラピカ役の小越勇輝とレオリオ役の近藤頌利。ゴン、キルア、クラピカ、レオリオは、このシーンで振付だけではなくセリフもある。彼らも振りとセリフのタイミングを繰り返しストイックに確認。その眼差しが時間を追うごとにさらに真剣さを増していき、集中力の高さがうかがえた。シーン終盤ではセットが大掛かりに動くこともあり、カウントごとの場位置をひとつひとつ確認しながら作り上げられていた。

休憩に入ると、全員の表情が一気にほどける。この日の参加キャストには椎名鯛造(ゼノ役)、田鶴翔吾(ゴトー役)、川崎優作(ハンゾー役)、丘山晴己(ヒソカ役)もおり、控えで時に笑い声が上がるような場面が何度もあった。中でも阿久津は大友を気にかけているようで、休憩時間や稽古の合間などでも話しかけに行く姿が何度も見られた。それぞれ連れだって休憩スペースに移動し、にこやかに談笑する姿からは、このカンパニーの仲の良さが十二分にうかがえる。

ところが、ものの数分で話題は稽古の内容になり、先ほどの振付の確認が始まった。稽古中の真剣さとはまた違った柔らかいトーンで「ここはこんな感じかな?」と話し合っており、誰もが舞台のことで頭がいっぱいのようだ。そして、田鶴が自分の出番外で腹筋をしていたり、阿久津がスケボーのアクションを練習したりと、ちょっとした時間も無駄にしていなかった。

このカンパニーの仲の良さ、心地よい空気感は、脚本・演出の山崎 彬の醸し出す雰囲気によるところが大きいのではないだろうか。演出においても、目指すべき到達点を示す前に、役者がどうしたいのかを同じ目線で考えているような印象を受けた。そして誰もがその心地よさに甘えることなく、よりよい作品にするために尽力している。役者の可能性を信じて導いているからこそ、キャストやスタッフが自由に相談し合い、高め合えるような雰囲気が出来上がっているのだろう。稽古で見学できたのはワンシーンだけだったが、このほんの2時間ほどだけでも彼らが目指したいものの”凄み”は十二分に感じられた。

そして既に公開されている通り、キャストの衣裳やメイクのクオリティの高さには舌を巻くものがある。感染対策のためマスク着用などの制約がありながらも、稽古でこれだけの期待を抱かせるのだから、本番がどのようなものになるのか、楽しみでならない。

『HUNTER×HUNTER』THE STAGEは5月12日(金)から5月28日(日)まで、東京・天王洲 銀河劇場にて上演される。

※川崎優作の「崎」の表記は、(たつさき)が正式

取材・文/宮崎新之
撮影/村上宗一郎