20周年を迎えた『プリキュア』の新たなる挑戦
男の子がプリキュアになる。シリーズ初の舞台作品『Dancing☆Starプリキュア』The Stageが発表となったとき、多くのファンが驚きを隠せなかった。
鷲尾 安心してください。僕も驚いています(笑)。でも、皆さんが想像する範囲内のことをやっても面白くない。自分が一番驚くものを実現したら、きっとファンの皆さんにも驚いてもらえる気がしたんです。
『プリキュア』シリーズの生みの親・鷲尾 天はそう語る。
鷲尾 『プリキュア』を立ち上げるとき、初代の西尾(大介)監督と話していたのは、『男の子らしくも、女の子らしくも、どっちも嫌だよね』ということ。この20年、固定観念を一つひとつ壊しながら、『プリキュア』をつくり続けてきました。だからこそ、“プリキュアだからこうあるべき”というものもなくていいと思っていて。どんな形であってもエンターテインメントとして楽しめて、その上でご覧になった方に“プリキュアってこうだよね”と思っていただけるものを、舞台でお届けできればと思っています。
脚本・演出のほさかようもシリーズを愛するひとりだ。
ほさか 『プリキュア』の面白いところは、ただの勧善懲悪のストーリーではないところ。敵キャラクターにも正義があって、単純に割り切れない物語を20年前の『ふたりはプリキュア』からやり続けていた。舞台でも、そうした『プリキュア』シリーズの精神はしっかりと受け継ぐつもりです。
舞台では実現不可能と思われるような変身シーンにも果敢に取り組んでいく。
ほさか ここで覚悟を決めてお伝えします。舞台上で変身します!『プリキュア』をやる以上、袖で着替えて出てくるだけではダメ。頭の中には今いろんなアイデアがあるので、それをここから形にしていければ。
主人公たちは、ダンス部に所属する男子高校生。ダンスが舞台の大きなポイントとなる。
ほさか きっとダンス部の子たちなら、振りの練習をしながら会話することもあるだろうし、気分が盛り上がったときについアクロバットをすることもあるはず。戦いや変身のシーンはもちろん、そうした日常のシーンにもダンスを取り入れていきたいなと考えています。
鷲尾 僕からお伝えしたいことは一つ。日常のリアル感をしっかり感じられるものにしてほしいということです。彼らが何に一生懸命になり、何に悩んでいるのか。日常の中でぶつかる壁を、敵との戦いを通じて突破する。そこで起きる奇跡を『プリキュア』は大事にしていました。舞台でもそれは変わりません。
20周年という節目の年に、誰も見たことのない『プリキュア』の幕が上がる。
鷲尾 これまでも『プリキュア』は積み上げてきたものを壊して、また新しいことをやるということを連綿と繰り返してきました。舞台もその一環だと思って観ていただければ嬉しいですね。
ほさか ファンの皆さんそれぞれに好みがある。それと今回の企画が必ずしも全員に一致しているとは思っていないです。それでも面白かったねと言っていただけるものをつくるのが僕らの責任。『プリキュア』の一つの形として認めていただけるものを、これから全力でつくっていきます。
インタビュー&文/横川良明
Photo/中田智章
※構成/月刊ローチケ編集部 9月15日号より転載
※写真は誌面と異なります
掲載誌面:月刊ローチケは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
鷲尾 天
■ワシオ タカシ
’98年、東映アニメーション入社。『プリキュア』シリーズ初代プロデューサー。
ほさかよう
■ホサカ ヨウ
脚本家・演出家。主な作品に舞台『魔法使いの約束』シリーズなど。