舞台「魔法歌劇アルマギア~episode.0~」通し稽古レポート

『月刊アクション』(双葉社)、『GANMA!』ほかで連載中の「アルマギア-Project-」。漫画のほかにも豪華声優陣が歌うキャラクターソングや、文化放送での作品ラジオなど幅広くメディアミックスを展開してきた人気作が待望の舞台化。舞台「魔法歌劇アルマギア~Episode.0~」では、歌うことにより体内に魔法を注ぎ込むことができる『ディーヴァ』と、その魔力により変身し戦闘力へと変える『マーギアー』と呼ばれる少女たちの、歌の力による戦いと絆を描く壮大な漫画ストーリーの前日譚、始まりの物語が描かれる。イクタル王国の次期女王でディーヴァのティアを演じる主演の太田奈緒を中心とした、女優陣による熱い舞台の初通し稽古の模様をレポートする。

都内稽古場。この日は初通し稽古のために、全キャストが集合した。稽古場に独特な緊張感は漂っているが、キャストはダンスの振付や殺陣を確認したり、発声をするなど各々リラックスした表情でスタインバイ。キャスト同士で楽しそうに談笑する姿も。

演出助手から「皆様、全員いらっしゃいますか?よろしくお願いいたします。初日まで全員そろうのは3回ですので頑張ってください」と声がかかる。続いて演出の松多壱岱氏から「今まで詰めて稽古をしてきたと思いますので、皆さん集中してやってください」という言葉が。キャスト全員の表情が引き締まる。

午後1時10分。初通し稽古スタート。稽古場の空気が変わった。

幕開きはイクタル城のシーン。ティア・イクタル役の太田奈緒とその妹ミア・イクタル(マーギアー)役の高井千帆、そして二人の教育係、ケラ・ジュリィ(ディーヴァ)役の長谷川里桃とマーブル・ハチェット(マーギアー)役の小山璃奈が登場。次期女王としてイクタル王家を背負わなければならない姉妹、ディーヴァのティアとマーギアーのミアを演じる太田と高井の息の合った姉妹愛が物語の世界へ誘う。ティアとミアのやり取りが可愛くて、教育係のおおらかなケラと生真面目なマーブルを演じる長谷川と小山も息ぴったり。

そして、迫力のオープニング。アップテンポのテーマ曲『アルマギア』の歌と華やかな群舞で、一気に観客を引き込む演出。これからどんなストーリーが展開されるのかワクワクしてくる。

場面が変わり、ディーヴァとマーギアーを軍事利用しイクタルに侵攻を計画するオリジアース帝国の兵士たちの訓練シーン。バジス・バジス(マーギアー)役の野本ほたるの激しい格闘アクションに目が留まる。カッコいい!

左から)星守紗凪、野本ほたる

ここで、バジスと共にいるディーヴァのラミノーズ(演:反田葉月)、ディーヴァのマツリカ・オーナメント(演:岡田夢以)とペアのマーギアーのククル・マイド(演:星守紗凪)も登場。マツリカとククルのやり取りはちょっとコミカルで楽しい。オリジアース帝国の兵士たちのキャラクターも個性的だ。

この後、イクタルである事件が起こり、教育係のケラとマーブルが敵と戦うシーンへ。原作にない戦いながら歌うマーギアーも舞台版の見どころのひとつ。かなり大きな武器を持って行う殺陣は大迫力だ。

高井千帆

そして、オリジアース帝国のボス、ガノイン大佐が登場すると場がピリッと引き締まる。舞台版オリジナルの冷酷な悪役キャラクターを、明音亜弥が佇まい美しく演じている。

歌が重要なカギとなっている今作。芝居から歌、歌から芝居、そしてダンスもあり、物語はテンポよく進んでいき全く飽きさせない。何より美しいメロディと心に響く歌詞の魅力ある楽曲の数々が、舞台をより華やかに彩っている。

稽古中、出番を待つキャストたちは、稽古場の壁際に並べられた椅子に座って、演じられている芝居を真剣な眼差しで見つめていた。出番がほぼ一緒ということもあるのだろうが、ティア役の太田とミア役の高井の二人が常に隣に座っているのが微笑ましく思えた。

写真左奥)真剣な眼差しで芝居を見つめる太田と高井

もう一人、舞台版オリジナルキャラクターとして登場する、ガノイン大佐が軍事利用するために開発した最強のディーヴァのクラウンテールも魅力的だ。ガノイン大佐の命令に従いイクタルを滅ぼすため、暴走していく狂気を花奈澪が気高く演じている。

そのクラウンテールの暴走を食い止めるアカネ・パークライド(演:浜浦彩乃)も印象的だ。同じく軍事利用のため開発された最強の人工ディーヴァ同士の歌による戦いが悲しい。

クライマックスはイクタルに侵攻したオリジアース帝国との激しい戦いを、歌と殺陣とダンスでドラマティックに観せていく。ラストシーン間際、ティア役の太田の瞳の輝きが印象に残った。全身全霊で演じる彼女たちの汗がとても美しく、通し稽古取材ということを忘れてしまうくらい、思わず見入ってしまった。

太田奈緒

演出が一度も止めることなく、約2時間の通し稽古が終了。
演出助手の「お疲れ様でした!」が稽古場に響き、キャストみんなが笑顔に。
取材はここまでだが、休憩を挟んでさらに稽古は続くようだ。

芝居、歌、ダンス、殺陣、すべてがよりブラッシュアップされ、華やかなキャラクタービジュアルで魅せる本番が待ち遠しい。

取材・文/井ノ口裕子
撮影/ローチケ演劇部(つ)