『HIGH CARD the STAGE – CRACK A HAND』が1月19日(金)より東京・シアター1010にて開幕する。本作は、特定の者に異能力を与える52枚の《エクスプレイングカード》をめぐる《トランプ×異能力バトルアクション》。ドラマCD、漫画、小説、そしてアニメと多彩なメディアミックスを展開し、ムーブメントを巻き起こしている。
そんな中、待望の舞台化が実現。主人公、フィン・オールドマンを赤澤遼太郎が演じる。明るい笑顔と繊細な心を併せ持つ赤澤だから表現できるフィンが、もうすぐステージの上に現れる。
フィンとの共通点は、切り替えの早さ
――赤澤さんは『HIGH CARD』のどんなところに魅力を感じましたか?
アニメを観るときは結構オープニングを重視する派なんですけど、『HIGH CARD』はオープニングから掴まれましたね。曲もカッコいいし、映像もスタイリッシュ。「オープニングが神だ!」っていうことにまずテンションが上がりました(笑)。
――実際、作品世界も洗練されていてお洒落ですよね
無駄がなくて、ソリッドな印象を受けました。あとはやっぱり異能系ならではの面白さですね。バトルものは中学時代いちばんよく観ていたジャンルだったのもあって、全話一気に観ちゃいました。
――そんな『HIGH CARD』が舞台化。演出を赤澤さんとは馴染みの深い山本一慶さんが担当します。ローチケのインタビューで山本さんが赤澤さんのことを「遼太郎はお茶目なんだけど真面目。お芝居に対して全力で取り組んでくれる素敵な俳優です。フィンとは明るさが似ている気がするんですよね。2人とも素敵な笑顔の持ち主だけど、決して突き抜けて明るいわけではなく、ちゃんと人生に悩んでいる」とコメントされていました
なんだか占いみたいですね(笑)。でも合っていると思います。確かに突き抜けて明るいわけではない。むしろどっちかと言うと、自分のことは陰だと思っています。
――人生に悩んでいますか?
悩みは尽きないですね。僕ももう27(歳)だし、もっと頑張らなきゃいけないという焦りみたいものは年を重ねていくごとに増したかなと。それこそ一慶くんと最初に共演したのはまだ19歳。あの頃とはまた違う悩みがやっぱり出てきますよね。
――そういう意味では、フィンにシンパシーを感じる部分も?
結構ありますね。フィンは人の言葉を信じやすいタイプ。誰かから言われたことを額面通りに受け止めて一喜一憂する感じは似ているというか。フィンほどではないですけど、僕も人の言葉の裏があんまりわからない方なので。リンジー(・ベッツ)から「君が(孤児院に)帰ってこない方が、僕にとってはずっとうれしいことなんだ」と言われて悩むところとか、僕もああなるなと。リンジーの言いたいことは頭ではわかるんだけど、そんなこと言われたらちょっとショックだよなと思いました。
――じゃあフィンのように落ち込んだら、赤澤さんも部屋に引きこもったり?
なるかもしれないですね(笑)。本来、落ち込むことがあまりないんですけど、一度落ちたら「僕なんか…」って落ちるところまで落ちる。ただ、僕は寝たら回復するんで、そこは結構単純かも。嫌なことはどんどん忘れていくタイプです(笑)。
――まあ、フィンも意外と立ち直りは早かったですし(笑)
確かに。そこの切り替えの早さは案外似ているかもしれないです(笑)。
晴ちゃんさんの楽屋は南海岸みたいでした(笑)
――そんなフィンのバディとなるのが、クリス・レッドグレイヴ。演じる丘山晴己さんとはミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』で共演しました。赤澤さんから見て、丘山さんはどんな人ですか?
“晴ちゃんさん”ってことなんだと思います。みんな、晴ちゃんって呼んでいて、僕はまだそこまでいけなくて、晴ちゃんさんとお呼びしているんですけど。みんなが晴ちゃんと呼ぶ意味はわかるというか。唯一無二の明るさとキャラクターとお芝居感を持っていらっしゃる方だなと『チェーザレ』のときに思いました。あ、あと楽屋がすごかったです!
――丘山さんの楽屋はどんな感じなんですか?
南海岸みたいでした(笑)。でっかいエアマットだったり、間接照明だったり、いろんなものを持ち込んで、音楽が流れていて。「おはようございます」と挨拶をするときに楽屋がチラッと見えたんですけど、すごいことになってました。
――ちなみに赤澤さんの楽屋はというと?
綺麗にしようとは思っているんですけど、わりと散らかってます(笑)。本番前はどうしても散らかりますよね…。だから、ある程度は仕方ないとあきらめて、帰りに片づけるようにはしているつもりです。
公演期間中は喉薬だったり、スチーム吸入器だったり、ケア用品が増えて、鏡前に物が溢れ返っちゃうんですよ。今も別現場で「汚い」ってちょっと怒られています(笑)。
――丘山さんとお芝居をする上で楽しみなところは?
節々に感じる晴ちゃんさんの品とカッコよさがクリスにぴったりだなと思っていて。これまで培ってきたものが立ち居振る舞いからにじみ出ているんです。そこが素晴らしいなと。ああいうものは一朝一夕で身につくものではないですけど、いろんな面でたくさん勉強させていただけるんじゃないかなと思っています。
――どんなバディになりそうですか?
未知数だと思います。僕がこれまでお会いしてきた中で、晴ちゃんさんみたいな人はいなかったので。きっとお客様も想像できないだろうし、いい化学反応が生まれたらなと。とりあえず晴ちゃんさんは陽すぎる陽なので、僕も晴ちゃんさんの陽に精一杯引っ張られていけたら。
――赤澤さんの素もちょっと明るくなっているかもしれませんね
X(旧Twitter)の文面とか、もしかしたら晴ちゃんさん仕様になっていくかもしれない(笑)。そのあたりも楽しみにしていてほしいですね。
僕のバディはファンのみなさんです
――改めてですが、フィンとクリスの関係性のどんなところが素敵だなと思いますか?
いろんな因果が絡まり合わないと、決して交わらなかった世界線の人たち。だからこそ、最初は反発こそすれども、かけがえのない存在になっていく。その過程がわかりやすいし、感情移入しやすいですよね。話の展開的にも、一度裏切るのか?というようなハラハラもあってアツいですし。全体を通して関係性の変化が見られるところがいいですね。
――それこそフィンが沈んだときに、立ち上がる力を与えてくれたのがクリスでした
粋ですよね。きっとフィンもうれしかったんだと思う。リンジーという育ての親のような存在はいますけど、ああいうことを言ってくれる相手というのは、今まできっといなかっただろうし。どこか家族に近いものをクリスに感じたんじゃないかな。クリスとの出会いがあって、ピノクルに来たから、孤児院とはまた別の帰るべき場所が見つかった。孤独を抱えている子だからこそ、フィンに居場所ができてよかったなと思いました。
――赤澤さんにとって、孤独を感じたときに奮い立たせてくれるバディといえば誰ですか?
マジで好感度とか一切気にしないで言うと、ファンの方ですね。
――めっちゃ好感度しかない(笑)
いや、これマジでみんなそうじゃないかなと思っていて。僕はよくエゴサもするし、ファンクラブ宛にいただいたDMも読むんですけど、その時間がめっちゃ楽しくて。自分がお芝居に込めた想いが届いていたらうれしいし、「今日で×回目ですが、何回観ても本当に感動します」という感想をいただけたら頑張ろうと思う。逆に「この回しか観られないんですけど、ずっと楽しみにしてました」と言われたら、1回1回の公演に気持ちを込めて臨もうと思える。そこはわりと共存関係ができてるんじゃないかなと思いますね。
――ファンの方も赤澤さんを必要とし、赤澤さんもファンのみなさんを必要としている
俳優さんのタイプにもよるかもしれないですけど、僕はちゃんと感想を知りたい人だし、褒めてもらいたい人だから、そこはマジでバディだなと思いますね。
ファンクラブのDMの既読とかつけるのめっちゃ早いんですよ!送ったら「送信1分前」とか「今」とかつくんですけど、普通に「今」のときに見たりするので、もしかしたらファンの方の中には「早すぎ!」と思っている人もいるかもしれない(笑)。最初はちょっと間をあけた方がいいのかなと思っていたんですけどね。でも、見ちゃう。僕のバディはファンのみなさんだって胸を張って言えます。
「お芝居が下手」という言葉に救われた気持ちになった
――フィンはリンジーから言われたとある言葉を胸に置いて生きてきました。赤澤さんは誰かからもらった言葉が自分の励みや学びになった経験はありますか?
マネージャーさんからもらった言葉は大きかったですね。フリーを経験して、今の事務所に入って。そのときに言われたんですよ、「赤澤くんはお芝居が下手だから」って。自分でもできていると思っていなかったし、フリーの期間中はこのままじゃダメなんだろうなという思いを抱えて日々過ごしていたので、事務所に入った直後にそう言ってもらえたことで救われたような気持ちになりました。
――ダメなところを言ってくれる存在は貴重ですよね
そこからそのマネージャーさんとずっと一緒にやってきて。そのあと、新しいマネージャーさんが入ってきたんですけど、その方も素晴らしい人で。前のマネージャーさんと血が繋がってるんじゃないかなって思うくらい、着眼点とか話し方とか感性が一緒なんです。さてはクローンを送り込んできたんじゃないかなと(笑)。
――芝居が下手だと言われたところから出発して、成長を認めてもらえた瞬間もありましたか?
ありました。25歳記念公演で朗読をやったときに、「すごいポテンシャルがあるから、出るところに出れば絶対うまくいく」と褒めてくださって、その言葉が今でも残っています。
僕は自分の芝居を上手いとは思っていなくて。もちろんお客様に胸を張ってご覧いただけるものをお届けしているつもりですけど、自分で映像を見るとダメだなって感じることばかりで。まだまだ足りないなって悔しくなることの方が多いです。
でも、きっと満足したらいけないとも思うので。僕は80歳になっても90歳になっても芝居をやり続けたい。きっとそのときも自分の芝居を下手だと言ってると思うし、そう言える自分でありたいです。
――では、最後にちょっとライトな質問を。フィンは船の上が苦手ですが、赤澤さんが苦手なものは?
トマトが苦手です。圧倒的に食えないっすね…。加工されてたら大丈夫なんですけど、生は食べられない。食感、生臭さ、味、オールアウトです。マジでトマト農家さんに申し訳ない。努力はしてるんですよ!見かけたら食べようかなと思うんですけど、食べたらやっぱりまずいとしか思えない…。
――もったいない、トマトは栄養も豊富なのに
そうなんです、僕もめちゃめちゃリコピンを摂りたいんですけど、体が拒絶しちゃって。あ、だから、もし異能力が使えるならトマトが食べられる能力がほしいですね。あと、海産物も苦手なんです。磯の香りがダメで、みんながうまそうにホタテとかサザエとかカニを食べてるのを見ると羨ましくなります。
――失礼ですが、舌がお子様なんですね
マジで子ども舌です(笑)。ハンバーグとか大好き。海産系はサーモンがギリ。でも、サーモンも生臭いのは食べられないので、もっといろんなものが食べられるようになりたいんですけど…。
――いや、むしろ80歳90歳になってもトマトが食べられない赤澤さんでいてください(笑)
はい、ずっと子ども舌のままでいます(笑)。
ライター/横川良明
撮影/篠塚ようこ
ヘアメイク/GLEAM
スタイリング/西川志都(Tatanca)