© TMS/HIGH CARD Project © HIGH CARD the STAGE Project
特定の者に異能力を与える52枚の《エクスプレイングカード》が国中に四散。もし悪意ある人間の手に渡れば、国家転覆の危機にもなりかねない。「人々の平穏な生活を守るためにも、すみやかにカードを回収せよ」という、フォーランド国王直々の命により結成された《ハイカード》と、《エクスプレイングカード》を狙う敵対組織との争奪戦を描いた「HIGH CARD」は、これまでドラマCD、漫画、小説、アニメと多彩なメディアミックスを展開。今年1月からアニメ第2期もスタートしますます盛り上がる中、待望の舞台化。ローチケ演劇部は、1月19日(金)、初日の直前に行われたゲネプロに潜入してきました。
ゲネプロの前に行われたオフィシャル会見に、《ハイカード》メンバー、主人公フィン・オールドマン役の赤澤遼太郎さん、クリス・レッドグレイヴ役の丘山晴己さん、レオ・コンスタンティン・ピノクル役の石橋弘毅さん、ウェンディ・サトー役の七木奏音さん、ヴィジャイ・クマール・シン役の松田岳さんの5人が登壇。スタイリッシュなスーツ姿がカッコいいキャラクタービジュアルにテンションが上がり、これからはじまる舞台への期待感がより高まる。会見では、稽古期間に5人で中華料理を食べに行って交流を深めたエピソードを披露したり、お互いのコメントにツッコミを入れたりと、すごくいい雰囲気で、チームワークの良さが伝わってきた。
スタイリッシュな《トランプ×異能力バトルアクション》がどんな舞台になるのか、ワクワクする気持ちの中、ゲネプロがスタート。
幕開けは《エクスプレイングカード》の伝説を語るナレーションとともに、物語の世界観に観客を導いていく。そして主人公フィン・オールドマンが登場。フィンは巣立った孤児院を立ち退きの危機から救うために、スリで資金集めをしようとするが、質屋に盗品の買収を拒否され、一攫千金を狙ってカジノへ乗り込む。
軽快なダンスで、華やかなカジノのシーンへテンポよく場面展開。
カジノでカードの異能力を使う《プレイヤー》たちのトラブルに巻き込まれるフィン。プレイヤーが《エクスプレイングカード》の技を発動したときの金属的な効果音にドキッとする。そこで、クリス・レッドグレイヴと出会い、フィンは数奇な運命へ。
そして、キャスト全員の歌とダンスによる華やか&スタイリッシュなオープニング。
場面が変わり、実は王家直属のスパイ組織という裏の顔を持つ、老舗自動車メーカー『ピノクル』のオールドメイド支店に。フィンはクリスに持っている“カード”を渡すようにカジノで迫られ、拘束されて連れてこられたのだ。半ば強引に見習いとして《ハイカード》のメンバーに加えられ、教育係のクリスとバディを組みカード回収の任務にあたることに。観客はフィン目線でグイグイと物語の中へ。
ここで、《ハイカード》メンバーのバックボーンを、それぞれ役者の歌とダンスで観せる。原作を知らない観客も楽しく理解できるというスマートな演出。
やんちゃで明るく無鉄砲だけど真っすぐなフィンを演じる赤澤さん、世渡り上手で女性の扱いにも慣れたプレイボーイのクリスを演じる丘山さん、ピノクル社の社長の息子で王様気質な《ハイカード》リーダーのレオを演じる石橋さん、美人だが愛想を知らない堅物のウェンディを演じる七木さん、何をやらせても優秀だが天然なところもあるヴィジャイを演じる松田さん。原作ファンも納得であろう絶妙なキャスティングで、俳優陣がそれぞれのキャラクターを魅力的に表現している。
このシーンの最後は5人全員のジャジーな歌とダンスで魅せる、スタンドマイクのパフォーマンスもスタイリッシュだ。
原作でも人気のエピソードである豪華客船を舞台としたオークションのシーンで登場したのは、ピノクル社のライバル企業『フーズフー』CEO、ノーマン・キングスタット。奇抜なファッションで自身を「キング」と呼ばせるクセの強いキャラクターを演じるのは久保田秀敏さん。声色まで別人の怪演でその演技力に衝撃を受ける。客席をいじるアドリブ(?)にも大いに笑わせてもらった。
豪華客船のシーンでも効果的だったのが、2階建てのセット。上でアクションシーン、下でノーマンがオークションで挨拶する場面を同時進行で展開していくのだ。さらにセットを人力で移動させながらの演出や映像を多用し、目まぐるしく変化する舞台演出で観客を飽きさせない。俳優として数々の舞台を経験する演出の山本一慶の手腕に脱帽。
フィンに衝撃的なことが起こって、あっという間に一幕が終了した。
「HIGH CARD」の物語の魅力のひとつは、ユーモアが随所に散りばめられているところ。どこかかみ合わないフィンとクリスのやり取りも楽しいし、《ハイカード》メンバー5人の普段の姿と戦う姿のギャップもいい。
もうひとり。《ハイカード》のお目付け役バーナード・シモンズ役の荻野崇さんの低音ボイスは最高だ。ストーリーテラー的な役割を担っている彼の聞き取りやすい台詞が、ハイスピ―ドな物語をしっかりと観客に伝えていてとても印象的だった。
そして、2幕の鍵を握るのはフィンのバディであるクリス…。
ハラハラドキドキの連続で一気にエンディングに向かっていく。
「必要なのはマナーと気品、そして命を張れる覚悟です。」バーナードさんの言葉に背中を押されて、「ハイカード出動だ!」というリーダーのレオの声がステージに響く。『HIGH CARD the STAGE-CRACK A HAND』のラストはハッピーエンドかバッドエンドか…。
ラストのショーパフォーマンスでは、2.5次元舞台らしく、キャストが客席降りする演出で観客を楽しませてくれた。実は原作に詳しくなかった筆者だが、すっかり「ハイカステージ」にハマってしまった。
取材・文/井ノ口裕子
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