舞台『ヴィンランド・サガ』~海の果ての果て 篇~/~英雄復活 篇~|北村諒&西田大輔 インタビュー

1000年の時を経ても変わらない熱を届けたい

西田大輔率いるDisGOONieが、初めて2.5次元作品に挑戦する。それが、舞台『ヴィンランド・サガ』だ。西田自身、連載当初から愛読してきた思い入れのある同名コミックを自らの手で舞台にする。

西田 海賊モノと呼ばれる作品は多数ありますが、この『ヴィンランド・サガ』は昨今の海賊のポジティブなイメージの真逆をいく作品。奴隷制度など、あまり光を当てたがらない歴史的事実にも正面から向き合うリアル感が魅力です。他の人に渡したくないと思った原作はこれが初めて。僕にとって大きな一歩となる作品です。

デンマークの第二王子・クヌートを演じるのは、北村諒だ。

北村 臆病だったクヌートがいろいろな出来事に直面し、大きな成長を遂げていく。そこが、クヌートの一番の魅力ですね。僕自身、お芝居を始めたばかりの頃は右も左もわからず、自分の意見がなかなか言えなかった。当時の自分の姿とクヌートが重なって、読んでいてより気持ちが入るようなところがありました。

今回は、最強と謳われた戦士の息子・トルフィンを中心に描いた~海の果ての果て 篇~と、クヌートを中心に描いた~英雄復活 篇~の2本立て。俳優にとっては実質2作品の分量を演じることになるが、異例の公演形態には西田のこだわりがあった。

西田 原作物の舞台は数多くありますが、原作の最後までやれる作品はほとんどない。はたして本当にそれでいいのだろうかという葛藤がずっとありました。だからこそ、DisGOONieで2.5次元をやるなら責任を持ってやりたかった。特に『ヴィンランド・サガ』は、みんなが心掴まれる山場まで描くには結構な尺が必要です。でも、そこまで辿り着くために原作を端折るようなことはしたくなかった。僕たちが描きたいものを全部やるための2本立てなんです。

魅力溢れる登場人物が勢揃いの本作。中でも二人の心に刺さったのは…?

西田 アシェラッドですね。悪党だからこそ語れる真実を持っているところが好きです。それを萩野崇が演じる。トルフィン役の橋本祥平と北村諒、萩野崇のトライアングルが今作の柱。この3人でなければやらなかったくらいの気持ちがあります。

北村 僕もアシェラッドです。『オレもオレの主を選ぶ』という台詞が好きで、その姿勢は僕たち役者も同じだなと思ったんです。僕たちも、ついていきたい演出家を自分で選ぶことができる。さらにアシェラッドは自分についてくる人たちにもついてきたいならついてこいというスタンス。その筋の通った生き様がカッコいいし、学ぶものは多いです。

『ヴィンランド・サガ』が多くの人を魅了するのは、激動の時代を生き抜いた男たちの泥臭くも誇り高い美学がつまっているからだ。

北村 登場人物は自分の欲望に素直な人たちばかり。時代は変われど、僕もまた演じたい、届けたいという動物的本能に従って生きている自覚があるし、そういう血は1000年の月日を経ても変わらずに流れているものなんだなと原作を読んで実感したんです。そういう熱を伝えられる舞台にしたいし、もし自分のやりたいことを我慢してる人が観たら、その楔を解き放てるような作品にしたいです。

インタビュー&文/横川良明
Photo/植田真紗美

※構成/月刊ローチケ編集部 3月15日号より転載
※写真は誌面と異なります

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【プロフィール】

北村諒
■キタムラ リョウ
舞台を中心に活躍。近作にミュージカル「東京リベンジャーズ」、舞台「桃源暗鬼」
など

西田大輔
■ニシダ ダイスケ
DisGOONie代表。近作に舞台「ETERNAL GHOST FISH」(作・演出・出演)など。