忠犬立ハチ高 第4回単独ライブ 『2744』|ノムラフッソ・王坂 インタビュー

写真左から)ノムラフッソ、王坂

芸歴わずか4年で2024年の『女芸人No.1決定戦 THE W』で決勝に進出し、一躍注目を集めたコンビ、忠犬立ハチ高(ノムラフッソ、王坂)。芸歴1年目から毎年単独ライブに力を入れてきた彼女たち。4回目となる単独ライブ『2744』が11月24日(月・祝)に渋谷ユーロライブで上演される。賞レース決勝を経験したことで感じた変化や、単独ライブへの思いを語ってもらった。

私たちももう優勝できるんだ、と思えた

──昨年の『女芸人No.1決定戦 THE W』で決勝に進出、最終決戦まで勝ち進んだことで仕事の幅も大きく広がったと思います。お二人の出身地である岩手での仕事も増えましたね。

王坂 そうですね。幸い、コンビ揃って岩手出身という芸人があまりいなかったんです。岩手の有名人といえば大谷翔平さんなので、お笑い部門から大谷さんに追いつこうと今頑張ってます(笑)。

ノムラ 地元の皆さんがすごく歓迎してくださってありがたいです。

王坂 事務所の先輩であるサンドウィッチマンさんのように、何十年後かに天下をとってようやく地元の人に認めてもらえるのかと思っていたら、こんな若手のうちから皆さんがすごく暖かくて。

──芸歴4年目で全国的な賞レースの決勝まで進出するのは、芸人さんのキャリアとしてかなり早いイメージがありますが……。

ノムラ でも、私たちの世代はみんな早い人が多いんです。ダウ90000の蓮見(翔)はまさに同学年ですし、吉原(怜那)はサークルの後輩です。事務所で同期のツンツクツン万博も『ツギクル芸人グランプリ』決勝に進出していますし……。昨年のTHE Wで優勝を逃した時、「まだ若いし、次への期待も込めて優勝とはならなかったのかな」と自分たちを納得させていたんですよ。でも、その3ヶ月後にR-1グランプリで自分たちより芸歴の浅い友田オレが優勝した。びっくりしました。芸歴が浅くても優勝する人はするんだ、と。もちろん面白かったし。ということは、自分たちももう優勝できるんだ、と思いました。

王坂 そうだね。

ノムラ もっと頑張ろうと思いました。決勝に一度行ったことで、周りも「次こそは優勝」というムードになるので、道は険しいですけど。でも、ちゃんと去年より面白くなっていると思います。

王坂 私も優勝こそできなかったけど、私たちが一番面白いと思っているので。THE Wでも優勝したいし、いずれは男女関係ない賞レースで優勝……というか、「すごく面白い」と思ってもらえるようになりたいです。

──お二人は大学時代からコンビで活動されていますが、いわゆる「学生芸人」のイメージがあまり強くないですね。

王坂 学生時代からノムラがネタを作ってくれて二人でやるというスタイルは変わっていないんですけど、プロになってからは、呼吸のしやすさが全然違います。大学時代は「女の子なのに頑張ってやってる」という視線があった気がして。……自分が勝手に思っていた部分もありますけど。それがプロになったら、変なネタをしても面白ければまっすぐ面白いと言ってもらえる。

ノムラ そう、面白かったら笑ってもらえる。

王坂 プロはすごいなと思います。今、すごく楽しいです。

──プロになって、さらには昨年THE Wの決勝に行ったことで、それまで交流のなかった芸人さんとの交流は生まれましたか?

ノムラ 今年の初め頃、「誰でも好きなゲストを呼んでいいよ」というライブがあって、オダウエダさんと日本エレキテル連合さんをお呼びしました。エレキテルさんは、お笑いを始めようとした頃にちょうど「朱美ちゃん」のネタをされていて衝撃を受けたので、ご一緒できて嬉しかったです。

王坂 ライブでも、本当にお笑いを愛しているのがすごく伝わってきました。

ノムラ エレキテルさんは独自のお笑いを突き詰めている姿がカッコよかったし、オダウエダさんもあんなにすごいのに、私たちのことをライバルと言ってくれてすごく嬉しくて。オダウエダさん、キングオブコントの優勝を目指しているんです。一番近い憧れの存在です。

ディズニーのような総合エンターテインメントを目指して

──お二人は単独ライブをすごく大事にされていますね。

ノムラ 二人ともネタが好きだし、目立ちたがりだから。テレビのようにいっぱい芸人がいる中ではなくて、二人だけを見てもらえる単独が好きなんです。

王坂 演劇部出身だから、公演というもの自体が好きなのもあって。 舞台に凝りたいし、演出も無限に考えることがある、そういうものが好きなんですよ。

──今回のタイトル「2744」にはどういう意味が?

ノムラ 「つなよし」って読むんですけど、特に意味はなくて。ユーロライブは元映画館だからSFっぽい感じにしたいな、「つなよし」は数字で書いたら未来っぽいなということで。

王坂 「犬に関係あるね」と気づいたのは後からなんです。

──コンビでは、ノムラさんがネタづくりを担当しているそうですね。

ノムラ ここ2年ほどは毎月新ネタライブをやっていて、月4本はネタを作っています。ゲストに信頼している芸人さんを呼んで、ネタにダメ出しをもらいます。お客さんにもアンケートで気になるところを書いてもらって、それを元にネタをブラッシュアップしています。

──毎月新ネタ4本はかなりハードですね。

ノムラ 月に1本だとアイディアを温存することもできるけど、4本ともなると毎回絞り出してようやくなんです。だから毎回0からスタートすることになる。それによって、より新しいもの、深いものができている感覚はあります。

 王坂 4本あると毎回それぞれのテイストが違うので、毎回挑戦だと思って、いろんな表現や演技に取り組んでいますね。その中で「意外とこのネタは自分たちに合ってるな」という発見もありますし。

──王坂さんはいつも100%受け取って、そのまま演じる?

王坂 二人だからこそのネタをちゃんと持ってきてくださるので……。

ノムラ すごい敬語(笑)。

王坂 いつも、やっていて面白いネタばかりです。

──それは芸歴を重ねてネタがフィットしてきた感じですか? それとも昔から?

王坂 けっこう昔からだと思います。もともと、好きなお笑いが似ているので。

ノムラ 高校の同級生なので、もう10年くらいの付き合いで。当時から演劇部で一緒に演技する機会もありましたし、わかっているというか。

王坂 ノムラは「これだったらやってくれるだろう」と思っていると思うし、私も信頼して待っている。そういう関係ができあがっている気がします。

──今回の単独ライブでは、その新ネタライブで磨かれたネタが披露される?

ノムラ とは限らないです。磨いたものも入るかもしれないですが、単独ではここでしかできないような、派手な演出や映像、音楽を使ったネタをやるので、今回のための新ネタが多くなると思います。

──単独ならではの。

ノムラ 私たち、単独ライブを「総合エンターテインメント」と呼んでいて。最終的にディズニーのようになりたいと思ってます。ディズニーの公演だとしたらすごく安いじゃないですか(笑)。

王坂 私たち、演劇も好きで、ユーロライブという場所にフィットするようなコンビだと思うので、ぜひ今回総合的に楽しめるエンターテインメントを観るつもりで来てほしいです。

──今は単独ライブに向けて、どんな段階ですか?

ノムラ 今は、「こういうのやろうかな」という雰囲気をお互いで探っている段階(笑)。グッズを二人で相談したり。

王坂 この「雰囲気」がけっこう大事だったりするんだよね。

──まずは「2744」ですが、その先の単独ライブの展望を教えてください。

王坂 いつか、東京芸術劇場で上演したいです。セット組み放題の広いステージで。そのために売れたい。KAAT神奈川芸術劇場もすごく好きな劇場なので、そこでもやってみたいです。

ノムラ KAATには王坂と一緒に小林賢太郎さんの舞台を観に行ったことがあるんです。思い出の劇場なので、そこでやれたら嬉しい。そのためにもまずは今回、頑張ります!

インタビュー・文/釣木文恵
写真/ローチケ演劇部