イワイガワ インタビュー|イワイガワとトークライブ

左:井川 修司 右:岩井 ジョニ男

お笑いコンビ、イワイガワ。それぞれがタモリや浅田美代子、佐藤浩市、三國連太郎といった大御所の元付き人で、コントを中心に活躍する彼らが、ここ数年ライフワーク的に行っているライブステージが「イワイガワとトークライブ」だ。2カ月に1回というライフワークのようなサイクルで、意外な人気芸人を1人ゲストに招いて行われるこのトークライブ。彼らはどんな想いでステージに臨んでいるのだろうか。

 

――2カ月に1回のペースでトークライブを行っていらっしゃいますが、どういう経緯でスタートしたんでしょうか?

井川「やっぱり僕らはコント芸人なので、おしゃべりのイメージがないんですね。漫才師さんとも違って、役柄やシチュエーションで演じたりすることが多いですから。だからこそ、トークライブはずっと昔からやろうという話をしていたんです。それで、最初は五反田で毎週、無料のトークライブをやりはじめました。会社帰りにフラッと寄れるような場を作ろう、と継続してやっていました」

岩井「2年ぐらいやったよね」

井川「そうそう。でも無償で場所を提供してくれていたからこそ続けられたものだったんですが、会場の都合で借りれなくなって、自然消滅的に終わってしまいました。今後は有償になってしまうけれど続けたい、と計画していた時に、ジョニ男さんがいろいろな方と飲みに行ったりして人脈をどんどん広げて行っていたんです。せっかくなら、そういうビックネームの人と一緒にやって、我々に無いものを探していこうじゃないか、ということで、今の形で始まりました。だから、イワイガワ“と”トークライブ、なんですよ」


――なるほど。イワイガワさん“と”ゲストの方によるトークライブになるわけですね。

井川「第一回目のゲストは、コンビでお世話になっているバッファロー吾郎Aさんでした。裏テーマで、ジョニ男さんの人脈からゲストを選ぼう、というところがありまして。ケイタイのメモリーをスクロールして、ご法度なんですけど、直接本人に連絡するという(笑)」

岩井「それをやっているときに思ったのは、事務所のありがたさですね(笑)。本当にギリギリまで決まらないんですよ。ギャラも安いですからなかなか来てもらえないですし、特に売れっ子の方たちにお願いしていますから。3日前、2日前までなかなか決まらないということも、けっこう多かった。仮が入っていてとりあえずキープみたいな感じですね」

井川「それをジョニ男さんが第二候補、第三候補と連絡していって…」

岩井「あの頃は、お酒の量が増えましたね。ゲストが決まったら、その安堵感で当日のトークに集中できなかったりしましたよ(笑)。もう、ホッとしちゃってゲストの横顔を見ているだけでニヤニヤしちゃう」――(笑)。苦労を重ねて続けてこられたんですね

井川「本当に、ゲストは来ないかも知れないですよ、って、エンディングで毎回告知していました。その時は、イワイガワ“の”トークライブになりますってね。本当に毎回ギリギリでした。基本的にはジョニ男さんの仲いい人になるんですけど」

岩井「やっぱり、どうしても難しい人はいるんです。ライブなので、レギュラー多い人は日程が重なっていたりするので。なので、もう会った日に「すいません、LINEをちょっと教えていただいて…」って聞くんです(笑)。オアシズの大久保佳代子さんは、まさにそれでした。あった瞬間に連絡先を教えてくれって言って、すぐにトークライブあるから来てくれ、って」

井川「でも、ホンマに来てくれたもんね。トークの始まりは説教からだったけど。「いい加減にしてよね、今日オフだったのに」って(笑)」

岩井「直談判なんで、なかなか大変だなぁ、と」

井川「でもそこが功を奏して、普段トークライブとかに出ないような人にたくさん来ていただきました。ジョニ男さんのライブなら、ってね。で、僕はトークライブの場で初対面という…」


――それ、かなり緊張感ありますね…。

井川「そうですね~。基本的に人見知りの性格なので、楽屋とかでは黙ってたりするんですけど、始まってしまえば絡まなきゃしょうがないですしね(笑)。そこで初めて殻を破るじゃないですけど、舞台上なら言えるっていうこともありますし関係性を作れたりするので、非常にありがたいです。リハビリみたいなことをしてもらってる感じで(笑)」

岩井「今まで、そこまで仲良くなかった人も、ライブをきっかけに連絡先を聞けたりするので、そういう意味ではいいことばっかりですね」――自分のモチベーションを保つきっかけになっている感じですね。

井川「とはいえ、各事務所のマネージャーさんにはご迷惑をかけたと思います…。最近は、事務所にオファーをお任せする形にしたので、もう大丈夫だと思うんですけど」

岩井「僕もわからないでやっていたんでね…。だから、出演してもらった後から、いろいろな方から「よく行けたね~! あのマネージャーさんメチャクチャ怖いのに!」と言われることもあって。そういうときは後から謝っています(笑)。でも僕も一応は、なるべくマネージャーさんの前でお話するようにもしてたんですよ。『本当はやりたくないんですよ、やらされてるんですよ…』っていう雰囲気で(笑)」


――お察しください、と(笑)

岩井「それも楽しかったですけどね。マネージャーさんとも仲良くなれますから。」

井川「本当にたくさんのビックゲストに来ていただけました」


――これまでのゲストにはどのような方がいらしたんですか?

井川「本当にどの方も“えっ、こんな人まで…!”っていう方ばかりだったんですが…。小藪千豊さんは、僕は関西出身で学生の頃から見ていた方なのでウワ~ッってなりましたね。出川哲朗さんも、本当にMAXで忙しい時期に来てくださいました。嬉しかったですね。あとは、中山秀征さんは、僕らが数年前に少しだけレギュラー番組でご一緒させていただいて。そこからジョニ男さんがLINEのやりとりなんかをしていたそうなんです」

岩井「打ち上げの時もそんなにおしゃべりする機会もなかったんですけど、これで最後だから一応電話番号を聞いておこうと(笑)。大好きだったんで、秀さんのことも。若いころからずっと見てるし、仕事のことだけじゃなくて、個人的に聞きたいこともたくさんあったんです。で、トークライブの場なら、聞けるぞ、と」

井川「いや、メチャクチャ面白かったですね。ずーっとしゃべりっぱなしで、会場もドッカンドッカン笑わせるし。バブリーな時代のこととか、若いころのアイドル時代のことまで、本当にいろいろなことを話してくれて。打ち上げにまで参加してくださいました。最後の最後まで、本当に楽しかったですね」

岩井「じゃあ、ちょっとだけ、乾杯だけね、なんて言いながら、長く居てくださって。こちらがお時間、大丈夫ですか?と気にしてしまいました」

井川「本当に、来てくれないんじゃないの?と思ってしまうような方が来てくれるんですよね。森三中の黒沢かずこさんなんかはまさにそう」

岩井「黒沢さんは、当日来てくれないんじゃないかと思いましたね。相当珍しいと思いますよ」

井川「ライブが終わったら速攻で帰られてましたけどね(笑)。「打ち上げは、私はいいです…」って。いや、本当にゲストに来てくださっただけで感謝ですからね」――ライブには5つのトークテーマがあるそうですね。

井川「トークテーマは第一回からずっと変わっていなくて、統一。皆さんに同じテーマでお話いただくんです。芸人って今、自分語りをするような番組もあんまりないじゃないですか。なので、テレビとかでは聞けないような話になるんですよね。例え仕上がってなくても、興味あることや、まじめな時間が流れらとしても、聞いてみたい!というテーマを5つ選びました。恋愛の話とか、恩人の話とか。特に恩人は意外ないい話が聞けることが多いですね。あとは、生まれ変わったら誰になりたいか、とか。「こんな人に憧れがあるんだ!」という驚きがあったり。もちろん、ボケてくる人もいますし、真剣に語ってくれる人もいますし。藤井隆さんは、まじめなお話で語ってくださいました」


――藤井さんは本当にまじめな方ですよね。

井川「藤井さんの場合、ジョニ男さんとの関係性もちょっと特殊ですからね。ジョニ男さんのこと、けっこう叱るんですよ、藤井さんが」

岩井「なんか、僕を見ているとムカつくらしいんです」

――マジですか(笑)。

井川「珍しいらしいんですよ、藤井さんがほかの事務所の人とかにそういう扱いをするっていうのは。それは藤井さんのファンの方に言われました。「あんな隆、見たことない!」って」

岩井「似てるんじゃないですかね、僕が。表裏一体みたいな。何かムカつくっていうことは、似てるんだと思います」

井川「まぁ、似てる人って嫌やっていうもんな」

岩井「まぁ20分くらい考えた結果ですけど」

井川「短いな(笑)」


――(笑)。イワイガワとのトークライブは、ゲストの意外な一面が見えてくるんですね

井川「そうですね、意外さで言えば野性爆弾のくっきーさんも真面目な話をしてくださいました。関西でホンマに腐っている時期に、ケンドーコバヤシさんとかに「絶対おもろいから」って言ってもらった、とか。照れくさそうにしてましたけど。そういうのは聞いててワクワクしますね」――確かに、それはあんまりテレビでは見られない姿かもしれませんね。

井川「僕らのトークライブって、ガッツリ全部、2時間近くゲストの方に話を聞くんです。前半は僕らがしゃべってて、後半にゲストくらいのテンションで来てみたら、「意外と大変やないか!」って言われたり(笑)」

岩井「トークテーマは5つでいつも同じなんですが、出来栄えは本当に全く違う。構成みたいなものも自由だし、こんなに変わるんだな、と。あとは、コンビの方も1人でお呼びしているので、そこも普段と感じが違いますし。毎回、どうなっていくのかなぁ、と思いますね」

井川「めっちゃくちゃ楽しいですよ、毎回。もちろん、ああすれば良かったな、とかの反省はあるんですけど、基本的に僕らが興味本位で全部やっているんで。聞きたいことを聞くし、流れでコントみたいなことになることもあるし」

岩井「みんな違う自分の個性があって、自分が売れるための“型”をみんな持ってる。こういうふうに自分をプレゼンするんだ、というものがあって、スゴイな、と思います」


――さまざまなゲストを迎えて、二十数回になりましたが、イワイガワとして何か変化は?

岩井「うーん。ないですねぇ。」

井川(笑)」――マジですか(笑)。何かこう、気持ちの上で変わったぞ、とか、チョビ髭を細くしてみようかな、みたいなことは…?

岩井「あ、チョビ髭はね、実は細くなっているんですよ。7~8年前よりは」

井川「はい、実はシャープになってます」

岩井「それは白髪が生えてきてカットしていたら細くなっただけで、戦略的なものは何もないです(笑)」

井川「いや、なんか申し訳ない! こんなんしか出てこなくて」

岩井もうね、戦略を考えないことが、戦略です」

井川「考える頭がないんですわ、僕ら(笑)。戦略通りいくことなんて無いですから。でも僕は個人的に言えば、物怖じしなくなりましたね」

岩井「僕はね、トークライブの中で“しゃべらない”ということを学んだ。自分は自分しか見てないけど、人はいろいろなところを見ているんです。「ずーっとお前ばっかりしゃべっているな」っていうの、嫌じゃないですか。“しゃべらない”ってことに気づいたら、すごい気が楽になった。来た時だけしゃべる、なら何とかなるじゃないですか。でも昔はずーっと面白いことをしゃべらなければ、と思っていた。実はそうじゃないんです」――それはライフワーク的にこれだけライブを続けてきて、常に変化していくトークの流れの中で実感しているところかもしれないですね。今後、ゲストに呼びたい方にはどんな方がいますか?

井川「いろんな人を呼んでみたいですね。今は基本的に芸人さんなんですけど、ミュージシャンとか俳優さんとかも。その人に、ジョニ男さんがどんな質問するのかも、僕は見てみたいですしね。その筋のスペシャリストの方とかのお話も面白いですよね。もっと言うなら…明石家さんまさんとか。北野武さんとか。夢ですけどね。やっぱり一番は…タモリさんですかね。ジョニ男さんは、師匠ですから」

岩井「タモリさんに見せたいね。しゃべらないっていうことを」

井川「引き算のトークね」

岩井「実は全然、話聞いてなかったっていう場合もあるけど」

井川 (笑)。その時は僕の知らないジョニ男さんも見れるだろうし、タモリさんも照れくさいだろうし」

岩井「今まで使えていたワザは使えないですよね。お客さんはそれで喜ばせていたけど、タモリさんには出せない、みたいな。そういう、ちょっとした自分なりのいやらしい浅はかなテクニックを見せた瞬間に、「あぁ…」ってなっちゃう。それだったら黙る! そっちを選ぶ!」


――タモリさんをゲスト、なんて日が来ること、大いにに期待したいです! 今後のトークライブにどんな方が登場するか、楽しみにしています。本日はありがとうございました!

 

取材・文/宮崎新之