WAHAHA本舗PRESENTS WAHAHA本舗2020年公演プレイベント「ベスト オブ 全体公演~ショー・マスト・ゴー・オン~」久本雅美&喰始 インタビュー

最後の全体公演と銘打った「ラスト3~最終伝説~」で、惜しまれつつも幕を下ろしたワハハ本舗の全体公演。その後のファンの声を受け、2020年に新たな全体公演として幕を上げることが決定! それに先駆け、これまでの全体公演の“いいとこ取り”ともいえる「ベスト オブ 全体公演~ショー・マスト・ゴー・オン~」を、2020年公演のプレイベントとして上演する。いったいどのような公演になるのか、ワハハ本舗の久本雅美と演出の喰始に話を聞いた。

 

――今回は“ベスト オブ 全体公演”と、これまでの公演のベスト版的演目になるそうですね。

喰「基本的に僕は、リメイクとか同じことをやるのは好きじゃない。一度だけ、ザッツ・エンタテインメントみたいに名シーンだけ集めてやったことはあって、それをきっかけに新しい全体公演が始まったんです。それも2017年にラスト3で終わらせて、全体公演はもうやりませんよ!って言っていたんですが、2~3年経つうちにまたやろうっていう話が起こったんですね。やるのであれば、完全に新作でやりたい。その前に、決起会じゃないけど、過去の名作を観たいっていうお客さんの声もめちゃくちゃ多いので、それに応えるつもりで今回の企画になったんです」

久本「若い時のワハハを知らない人も多いしね。もうやる気まんまんですよ(笑)。やっぱり私たち劇団員は、もうワハハの世界をやれないのか、と寂しい気持ちやもどかしさもあったので。またやるよ、って聞いたときは、みんな移動のバスで大号泣でしたよ(笑)。お客さんの中には親子3代で観てくれている人もいるので、若い頃を知ってくださっている人もいっぱいいるんだけど、昔を知らない人もたくさんいるので。いい演目いっぱいあるんですよ」

「それを2時間で収めるにも、本当にネタはいっぱいあるんです。だから、収まりきらない(笑)。それで、<久本雅美が「観たい」「見せたい」演目たち><柴田理恵が「観たい」「見せたい」演目たち>という名目で2本にしたんです。それでも、こぼれちゃうのはいっぱいあるだろうけどね」

 

――今回は、公演期間の前半が久本さんが「観たい」「見せたい」演目、後半を柴田理恵さんが「観たい」「見せたい」演目でセレクトされるそうですが、現時点で久本さんバージョンはどのような感じになりそうか、見えてますか?

久本「いや、ちょっとまだ私の中でもぜんぜんわかんない(笑)。リストアップはしたけど、まだどうなるのか…」

「実は、久本が見たい、ってやつはさ、楽屋で衣装替えやメークしていたりして、見れてない奴もあるんだよ。もちろん、もう一度、見たいっていうのもあるだろうけど」

久本「まぁ、稽古では見てますけどね」

喰「お客さんの反応を含めてね。昔はどうしても見たいやつは袖に来て覗いてたからね。裸影絵とか」

久本「裸影絵ね(笑)。あれは袖で見てましたよ。あれは鉄板ですよ。男性がね、裸でもって影絵でいろいろ遊ぶっていうやつなんですけど。キャッキャ言いながら見に行きました(笑)」

喰「後期の作品だと、バカ花魁ね(笑)。あれも必ず袖にきてた」

久本「あと、レディー・ガガで花魁を歌うの、最高にキレイですよね。あれ、大好き。好きなのはいっぱいあるんですよ。ゾンビのショー・マスト・ゴー・オンとか」

喰「それは久本も出てるやつだね。今回やる場所はキャパが小さいのでよく見える。いつもは1000人以上でやっていたりするから、大きい会場であまり小さいネタをやっても後ろの方の席からわからない。だから、初期のワハハでやってた久本のオカルト二人羽織なんかは、今度の場所には合うかもね。大きい小屋ではやりにくいものを逆に入れていきたいな、とかは考えてるね」

久本「なるほどね。悪魔になったり少女になったり、と。これが少女と悪魔じゃなくて、老婆と悪魔になっちゃうんじゃないの(笑)」

喰「そこは変えなきゃね(笑)」

 

――コンパクトな会場だと、演者も緊張しちゃいそうですよね。観客と近かったりしますし。

久本「大好きです、私たちは。大きい会場も大好きだけど、お客さんの顔がちゃんと見えてできる広さはいいですね。でも、どのネタを選んでいいものか…。私や柴田さんがこれやりたい!あれやりたい!これみたい!っていうのは、一応チェックして喰さんお渡してあるんです」

喰「それで、僕がやらせたいっていうものをね。久本がやるクイーンのフレディ・マーキュリーとかね。それもやるかもしれない(笑)」

――早すぎたクイーンのネタですね(笑)

久本「早すぎた! あれは早すぎた!」

喰「当時、あれはもう絶対やらないから!って久本は言ってたからね。封印したんだよね」

久本「35年間でスベったネタのベスト3に入りますからね(笑)。いや、まあ面白かったんですけど。ちょっとコンパクトにして、フレディ・マーキュリーの復讐をやりますよ。今は、クイーンの歌も皆さん知ってるし。あの頃は1000人中何人が知っていたか…。今度は、やってやりますよ!」

 

――ちなみに柴田さん側のネタはどうなりそうですか?

久本「柴田さんとも、ネタのリストを出すときに結構、話をしました。一人ネタもいっぱいありますからね。彼女のやりたいことをいっぱいやってもらいますよ。でも、2人のところもやろう、って言って、演目もコレだよね、って決めていますから、楽しみにしてほしいですね」

喰「いくつも名作があるからね」

久本「いや、名作じゃないけどね(笑)。でも、もう一回やりたいってやつがあるんですよ」

 

――ワハハ本舗の立ち上げが1984年、全体公演も全32回となると、懐かしい思い出もたくさんあると思います。

久本「そうですね、いろいろありました。狭い劇場の中にお客さんがぎゅうぎゅう詰めの満杯で。私はマッチ売りの少女のネタで、顔だけ人間で体は人形という劇をやったんだけど、私が気持ち悪くなっちゃって、マッチ売りの少女が途中で消えちゃったこともありました(笑)。いやぁ、バカだったから、朝まで飲んで、飲みすぎて気持ち悪くなっちゃって。それで喰ちゃんが飛んできて「お前、いいかげんにしろ!」って、飲み禁止になったんですよ。若かったなぁ」

「まだ20代だったよね」

 

――“ワハハの原田知世”と呼ばれていた頃ですね(笑)

久本「今、そんなこと言ったら炎上しちゃいますけどね(笑)。いろんなことあったなぁ。ウンコのバレエっていうネタで、頭にウンコを乗っけて乳もウンコになってて。、お客さんが良く笑ってるなぁ、と思っていたら、衣装がズレて乳首が出ちゃってたり(笑)」

「コーヒー豆もあったね。乳首つまんで…(笑)」

久本「思い出した…(苦笑)。女囚漫才で、看守が出てきて毎日違うことで笑いをとるネタがあったんです。笑いをとると刑が軽くなるってね。でも毎日違うことをやるから、毎日考えなきゃいけなくて、もう枯渇していくだけ。最終的に絞り出して、囚人服をガッと上げて、振り返って乳首つまんで「コーヒー豆!」って言ったんですよ。お客さんが、誰もいなくなったか、っていうくらいシーンとしました(笑)。そこに、うちの母ちゃんと弟の嫁が見に来ていて…」

――身内が見に来ている日なのに、衝撃的なネタですね(笑)

久本「「こんなのを毎日やってるなんて言わないでください!」って、喰ちゃんに言ってるのに、喰ちゃんはニコニコ笑いながら「いつもこんな感じですよ」なんて言っちゃって。そしたら弟の嫁が「お義姉さん、体張って頑張ってはる…」って目に涙を溜めてました。何とも言えない気持ちで帰ったと思います(笑)」

 

――笑いに対して貪欲でノータブーなところがワハハの魅力だと思っていますが、まさにそんなエピソードという気がします。

久本「好きなんですよ、そういうことがね(笑)」

「ロックをやっていたポカスカジャンの大久保は、新宿シアターアプルでやってたワハハの公演を見て「俺たち以上にロックだ」と思って、入るきっかけになったんだよ。お笑いっていうより、何ていうかロックのライブみたいな感じ。そういうつもりでやるから」

久本「ミュージシャンはワハハ本舗を好きな方が多いですね。刺激を受けてくれてて。まぁ、DJ OZMAが紅白でワハハから借りた裸スーツを着て出て、物議を醸してしまったりもしましたけどね。元々、喰さんがお笑いで客いじりダメ、下ネタダメみたいなお笑いのタブーを、面白ければなんだっていいんだから、ってやり始めたんだから。むしろ、日の目を見ないところに光を当てていこうよ、って」

「タブーは無くて。下ネタやったらウケるのか、って言っても、そりゃウケやしないですよ。お尻見せるだけで笑うわけじゃなくて、そういう見せ方っておしゃれ~と思わせるとかね(笑)」

久本「そう、ただ見せるだけじゃダメ。裸侍とか、好きですよ。裸で斬りながらも、絶対に見せないっていうね。黒子が付きながら、殺陣をやるんです、あれはカッコいいですよ」

「昔、キャストが足りないときに一般募集してやったことがあるんです。そうすると、若い連中は興奮しちゃって、ワーッと隠さないでやっちゃうワケです」

久本「それで喰ちゃん激怒してね」

「激怒ですよ。一人そういうことやっちゃうと、全部壊れるから。どう隠すかがコレの面白さなんだから、ダメだよ!ってね。だから、ワハハの下ネタは、下ネタとは言うけど違うんです。ルールがある。線引きは難しいですけどね(笑)」

久本「ただの下ネタ、下品になっちゃうとつまらない。ファンタジックだったり、おしゃれだったり、挑戦的だったり、くだらなかったり…。線引きは難しいんだけど、ただ下ネタを言うだけというのは大嫌いですね。アイデアがないと」

「たとえばね、ウンコの妖精ってアイデアがあるとするでしょ」

久本「プロットは小学生レベルだよね(笑)」

「普通はアラレちゃんみたいな、渦巻きのかわいいウンコに羽をつけると思うんです。でも、僕らはリアルな一本クソを作って、それにティンカーベルみたいな透明できれいな羽をつけるんです。それで、できれば、ちゃんと飛ばしたい、と(笑)。そういうこだわりはあるんです」

久本「だから、好き嫌いは多いですよ、ワハハ本舗は。相変わらずね。ゴソッと帰られたりすることもありました。2列目ゴッソリ居ないな、って(笑)。後半になるにつれ、人数も多くなって、喰ちゃんの演出も大きくなって、たくさんの方にとって見やすくなったっていう声もありますけどね」

「初期はストーリーがあってその中にショーがあったんだけど、そういうのは全部捨てちゃって。ストーリーのあるお芝居は、全体公演とは別枠でやったりはしているんですけどね。地方公演で回るようなものは、ショーとして徹底していますね」

 

――来年、WAHAHA本舗2020年公演として、新たな公演をスタートさせることが決定しています。そちらについても少しお伺いしつつ、今回の公演を楽しみにしている方にお言葉を頂ければと思います。

「2020年にからの構想は、実をいうと3部作で考えてあります。今までのワハハもありながら、ほほう今度はこんなふうに、へぇ新しいな、と思ってもらえるものを狙っておりますので期待していてください」

久本「もう、喰ちゃんの中にあるんですよ。だから、今回の舞台でこれまでのワハハを存分に楽しんでもらって、新生ワハハに向けて心の準備をしていただきたいと思います」

「過去のものについては、みんな結構年を取ってきているので(笑)、ハードなダンスとかはそこまでできなくなってくるかもしれない。今年見ておかないと、懐かしいあのネタとかは変わっていってしまうかもしれない。ですから、是非お見逃しなきよう!」

 

――楽しみにしています。本日はありがとうございました!

 

インタビュー・文/宮崎新之