『ゴエツドウシュウ』米粒写経サンキュータツオ&Aマッソ加納 インタビュー

昨年、芸人としてFA宣言してワタナベエンターテインメントの所属となった米粒写経と同事務所の女性コンビ、Aマッソがゴールデンウィークに合同ライブを開催。“おっさんと女子”という異色の取り合わせで、ライブが繰り広げられるのか。米粒写経のサンキュータツオとAマッソの加納に意気込みを聞いた。

 

――今回、なぜこの2組でライブを企画することになったんでしょうか?

タツオ「小屋が取れたので、何かしよう!っていうところで始まって、せっかくなら普段ない組み合わせでやろう、となりました。誰が言い始めた企画なんだろ?」

加納「船主が誰かわかってない(笑)」

タツオ「去年、僕らがワタナベエンターテインメントにお世話になることが決まって、事務所としては立場が難しい芸人を入れたことになると思うんですよ。普通に事務所ライブに出演するとなったとしても、生え抜きで頑張ってこられた芸人さんたちの序列を崩してしまうようなことにもなりかねませんし。ただ、世間的にも業界的にも、米粒写経がワタナベエンターテインメントに所属したことをもう少しデモンストレーションしたい、という部分もあったんじゃないかな? 無理やり解釈すると、ですけど(笑)」

――予想ですね(笑)

タツオ「そうなったときに、ものすごく薄くても接点のある芸人を考えたときに、Aマッソの加納さんとウチの相方の居島一平がライブで一緒になった時期があったりで懇意にしていただいていたんで。以前、Aマッソの単独ライブにゲストでという打診を頂いたこともあったんですけど、スケジュールが合わなくてダメだったこともあったので、こういうきっかけがあるならどうですか?っていう形だと思います」

加納「米粒写経さんがワタナベに入るって聞いたとき、私の中で大激震が走って(笑)。私らも一応、他から来た芸人。言うても4~5年経つんですけど、あんまりワタナベっぽくないって言われるんですよ。良くも悪くも。で、兄さんらがワタナベに来る、って聞いて、ワタナベで良かった!ってホンマに思いました。ワタナベであることが誇りに思えましたね」

タツオ「そういう意味ではAマッソは先輩だからね」

タツオ「外からどう見えてるかはわからないですけど、ワタナベエンターテインメントってファミリー企業みたいな感じで仲がいいんですよ。今、多様性を打ち出している中で、僕らみたいな異分子が入ったっていうのはもしかしたら大きいのかもな。ワタナベにこういう芸人がいるっていうことを知ってもらえるいい機会なんじゃないかな、と思いますね」

――事務所に所属したタイミングは別として、一番最初にお互いのコンビを知った時の印象は?

タツオ「Aマッソはすごくセンスのあるネタをやるし、タレント性もあって面白い。そして、かわいくない(笑)。その、かわいくなさが、すごくかわいいんですよ。けっこう僕らと似ているところがあるんじゃないかなーと勝手に思っていて、メディアとかで使いやすいキャラだともっとかわいらしくなきゃダメなんですよ。見た目とかじゃなくて、発言とか、ネタのかわいらしさね。でも、自分のやりたいことに正直で、同業者として、かわいくないところがかわいいんですよ。すごく愛おしい。こういう人に売れてほしいな、という気持ちがありますね」

加納「いや、すごく嬉しいですね。私はホンマに、米粒写経さんの単独ライブも観に行かせていただいてましたし、この舞台を1回観る方が、養成所に何十万払って通うよりも価値がある!と思ってました。テレビで売れている先輩を観るだけじゃなくて、こういうすごくカッコいい先輩が居るんやぞ、っていうのは…いや、ウチ誰やんって感じですけど(笑)。同期のイカツイ先輩に誘われて観に行って、もう初めて観たときに心酔しました。その日に、ライブに出さしてくださいって言いに行きましたね」

タツオ「特殊芸人やん(笑)。いやぁ、記事にしやすいこと言うなぁ(笑)」

加納「その時も、10分の持ち時間で舞台の上に居たのは2分くらい。ずっと客席に降りてましたね(笑)」

タツオ「けっこう、関西の芸人の方は相方を好きだと言ってくださることが多いですね。昔気質の芸人というか。最近は、いなくなっちゃってる気もしますし。東京に出て、そういうガラパコス化したそういう人を見て“まだこういう生命体、生きてたんだ”っていう感じなんでしょうね。そういう衝撃はあるのかも?」

加納「「渋谷落語」もよく行ってたんですけど、すごいんですよ、能力とかも確実にある中で、もう“愛まみれ”で。飄々としてらっしゃって、表情とかには出さないんですけど。これ、メディアいらんのか!って思います。この才能を何でほっといてんねん、って」

 

――初めて2組でやるステージになりますが、やってみたいことなどは?

タツオ「いやぁ、加納ちゃんに居島さんをツッコんでもらいたいね。あとは、各々がそれぞれのことをやるだけじゃなくて、4人で舞台で立っているところを見てもらいたいですね」

加納「一瞬でもええから、居島さんが困った顔とか見たいですね。困ることあんのかな?って(笑)」

タツオ「いや、あるよ(笑)。意外とあるよ。出来ないことない!とか言うけど、振っても嫌な時は苦笑いして逃げるときあるから(笑)」

加納「そうなんですか? そこを掴んで「なんやそれ!」って言えたら、あたしはレベルアップできるかもしれない(笑)。ツッコミとして」

 

――今、話せる範囲でどんなステージになるか教えてもらえますか?

タツオ「いろんな人のプレゼンツがあるんですけど、それぞれの芸人としての脳みそがどうなっているのか、可視化して当てるっていう芸人クイズのコーナーがあったりします。そういうところで、ネタじゃなく平場のトークの部分も楽しんで頂きたいですね。あとは、お互いの相方のいいところをそれぞれのコンビに説明するっていうのを、ちょっとやろうかな、とか」

 

――それ、だいぶ気恥ずかしい感じですよね?(笑)

タツオ「メチャクチャ恥ずかしいですね(笑)。多分、Aマッソを知っているけど米粒写経は知らない、その逆も居ると思うんで、そういうお客さんにも楽しんでもらえるようなものにしたいと思います」

 

――その気恥ずかしい相方さんのいいところ暴露はライブで拝見するとして(笑)、タツオさんからみた加納さん、加納さんからみたタツオさんのいいところは?

加納「ゆるぎないところですね。絶対にずっとこのまま居てくれるという安心感があるんですよ。ココ見といたらええねん!っていう。後輩からしたらめちゃめちゃ頼もしいですね。あとは…イケメン。甘いマスクね」

タツオ「凄いなぁ。言うて、あんまり知らないですからね、僕のこと(笑)。そこでそれが出てくるのは、腕を感じますね。加納ちゃんは限りなくオールマイティなんですよ。大概できる。モノマネとかはできないけど(笑)、芸人としての円グラフを考えたときに限りなく円に近い。ネタも書けるし、トークもできるし。プレーヤーとしての身体能力、タレント性もある。表現力や瞬発力もね」

――今回一緒にやれることで、期待していることはありますか?

加納「ウチらはもう、これ来てくれるお客さんってめちゃめちゃ目が肥えてると思うんですよ。お笑いだけじゃなくて、教養や演芸に対する姿勢がすごくシビアやと思うんで。そのお客さんにウチらを観てもらって「意外とイケるやん」って思ってもらいたいですね」

タツオ「僕は、全員がかわいく見えてほしいな。面白い以上に、かわいく思ってほしいです」

 

――かわいい、ですか?

タツオ「僕の相方はかわいいという言葉からは全く対極にあると思うんですよ。進撃の巨人に出てくる巨人のボス役みたいなやつなんで(笑)。そういう人でも、かわいらしいな、と思う瞬間が芸人としてはあるんです。そのかわいらしさがちゃんと伝わるようにしたいし、村上ちゃんのボーっとしているかわいらしさ、加納ちゃんのはねっかえり的なかわいらしさだったりを全面的に出していきたい。あと、僕がネコが好きっていうところもね(笑)」

加納「ネコ好きなんかい(笑)」

――ネコのどんなところが好きですか?(笑)

タツオ「ネコはしゃべらないところがかわいいですね。女性のように僕を傷つけたりしないので(笑)。まぁそれはさておいても、かわいらしいものって追いかけたくなると思うんですよ。ずっと追いかけるものって。直接的に意識しなくても、潜在的にかわいいな、と思っていないと追いかけない。そういうかわいらしさをちゃんとアピールしたいです」

加納「ウチらはずっと先輩らからかわいくない、かわいくない、と言われ続けてきたんで(笑)」

タツオ「いや、ほんとはかわいいんですよ、Aマッソは。生命体としてのかわいさです。“ネコ性”ですよ!」

 

――今回、一緒にやるからこその面白さはどういうところになりそう?

タツオ「映画で言えば2本立てなんですよね。どっちか観に行きたい映画があって、しょうがないから見たらそっちの方が面白かったっていうこと、結構あると思うんですよ。最近、そういう2本立ての映画とかなくなってきてるし、そういう自分の“面白い”を広げていく機会ってあまりなくなってる。むしろ、いろいろある中から好きなものを選ぶことに慣れてますよね。今回の企画で、世界が広がったな、ちょっと得したな、って思ってもらいたいですね」

タツオ「僕にしたら、居島さんの隠し子が2人居た、みたいな感じだから(笑)。お父さんと娘がコントやってる!みたいなヒヤヒヤドキドキの絵面もあるだろうし。加納ちゃんとかがおっさんを手玉にとってるようなところも面白いだろうしね。意外な組み合わせだと思うし、こういう機会じゃないとできないから」

加納「もう、全力で挑まないと。負けちゃうんで(笑)。あとは、両方のネタやトークを見てもらって、お客さんが“ここ似てるやん”とか勝手に想像して遊んでほしいですね。無理やりでもね。ウチらにはそういうつもりはなくても、そういうのってあると思うし。あとは欲を言うならば、ですけど、こういう企画って、同じランクの芸人さんや同じ界隈の芸人さんだけでやっていることが多いと思うんです。でもコレは、自分らでもどうなるやろ?って思うところもあるし、初めてで見えない部分もたくさんある。でもそっから生まれるものって必ずあると思っていて、ビビッてやるようなことをやらなアカンぞ、っていうのを他の芸人にも思わせられたらいいですね」

――やっぱりビビっちゃう気持ちはある?

加納「怖いっすよ! 刺されるかなと思ったりしますもん。居島さん竹槍持ってきたらどうしようって(笑)」

 

――タツオさん側から見て、若い世代の芸人と2組でやるっていうのはどうですか?

タツオ「2組で、っていうのはすごく久しぶりかも。前の事務所では、若手のネタの相談に乗ったりとかしながら事務所ライブに出ていたりしていたので、若い世代と一緒にやること自体はあったんですけど。対等な立場でやるっていうのはすごく久しぶりなので、全力で挑みたいですね」

 

――最後に、公演に向け意気込みをお願いします!

タツオ「今、芸人にもいろんな生き方があって、そういう中でこのライブから新たな生き方、新たな価値観が生まれてきたらいいな。で、これ埋まらないとAマッソ解散っていう…」

加納「えーーーっ! やめてや、GWに解散とか縁起悪い(笑)。でも、米粒写経さんから普段は見れない父性が見えてくると思うんで、今にもソフトクリーム買い与えそうなね(笑)。違和感、という言葉になってしまうんですけど、何が見れるんやろ?っていう感じで来てほしいですね。コレを見れますって言うよりも」

タツオ「アボカドとまぐろって意外と合うじゃないですか。そういうことです」

 

――居島さんも公演開催に寄せてそんなコメントを出されてましたね。生ハムメロンほどじゃないけど、くさやとモンブランみたいな、って…

加納「いや、ムリやろそれは!」

タツオ「くさやとモンブランは、無いです(笑)」

 

――(笑)。本日はありがとうございました!

 

インタビュー・文/宮崎新之