コロッケ インタビュー|コロッケ40周年記念コンサート「勝手にやってすみません ~40th Anniversary~」

2020年に芸能生活40周年を迎えるものまねスター、コロッケ。そんな彼がコロッケ40周年記念コンサート「勝手にやってすみません ~40th Anniversary~」を開催する。常にものまねの第一線で活躍してきたコロッケにとって集大成ともいえるステージを前に、果たしてどのような胸中でいるのか。話を聞いた。


――今年40周年を迎えられ、40周年を冠したものまねコンサートが開催されます。芸能生活40年を振り返ってどのような思いでいらっしゃいますか?

まだ40年か、という感覚の方が強いんです。というのも、芸能界の諸先輩方は50年とかやってらっしゃる方がたくさんいるんですよ。まだ40年じゃ若造じゃないか、という感覚があるんですね。でも一つだけ気を付けているのは、年代関係なく「まだコロッケは走ってるな」という感じで見て貰えるようにしています。そのために、ネタも例えば淡谷のり子先生のような懐かしい方から、歴史上の人物の聖徳太子、最近の方のキンプリの平野紫耀くんまで、どの世代にも大丈夫なようなネタをやるようにしているんです。それは、もしかしたら40年やってきたからこそできること。絶対に楽しんでいただけるコンサートができると思っています。40周年の集大成、のようなこれまでのコロッケというよりも、これからのコロッケはどうなるんだろう?とか、まだこんなことをやるんじゃないか?と、可能性を見ていただけるコンサートだと思っています。


――懐かしい方から最近流行の方まで、本当にたくさんのレパートリーをお持ちですが、どのようにアンテナを立てていらっしゃるんですか?

もう普通にミーハーなんです(笑)。食べ物でタピオカが流行ったと聞けば食べに行くんですけど、そういう感覚のまま、新しい方が出てきて自分が興味を持ったらやってみるんです。芸能界に関してだけじゃなくて、なんでもそう。洋服もオリジナルが欲しくなると、自分でアレンジするんですよ。今日の服も自分でスタッズを付けたんです。スタッズも東急ハンズで買ったんですけど、浅草橋にも行ったりしてね。そういう感じで、持っているものから自分でああしよう、こうしてみよう、って作るのも好きなんですよ。僕のものまねって特にそうなんですけど、普通にやるものが無い。ひどいんです(笑)。でも、そのやり方を変えるつもりもありませんけどね。


――そんなコロッケさんが今、興味を持っているネタは?

そうですね…コンサートにはご家族連れ、お子様連れでいらっしゃる方も多いんですね。なので、アニメ「鬼滅の刃」のネタをちょっとやろうかと思っています。どんな形でやるかはこれからなんですけど、配役をどんな形でやるかとか、いろいろ考えてますね。流行っているよ、とかの情報が入ると、すぐに観るんですよ。もう、すぐです。「鬼滅の刃」も今の時点でアニメが20数話あると思うんですが、3日くらいで一気に観ました。面白くて、これはハマるわ、と思いましたね。鬼退治の物語なんだけど、鬼も元は人間だったというところで、愛があったはずなのにそうなってしまうという切なさとか…久しぶりにアニメにドはまりしている感覚ですね。


――そんなハマっている感覚もステージでお届けするような感じ?

まともにはやらないというだけでね。ファンの方からすると「ん?」って思うようなことにはなると思うんですけど(笑)。でも、興味がわいたということは、自分がやりたいと思っているということだと思うので、どう言われようがやっちゃいます。そういう意味では昔より自由になったかもしれないですね。でも流行っているから、今これをやればウケるだろう、という感覚は無いです。自分が興味を持ったからやっているだけ。そういう意味では、今一番のマイブームはえなりかずきくん。こんなに素晴らしい…僕の言い方だと“ソフト”なんですけど、ほかに居ないですよ。例えば「日本昔ばなし」の常田富士夫さんの語り「むか~しむかし」って、柔らかい感じじゃないですか。それをえなりくんがやったら、いやいやちょっと違うんじゃない?っていう感じって、みんな共感できると思うんですよ。そんな感じで、えなりくんだけで、10個20個のネタができちゃう。ちょっと言葉が強い人で、でも顔が優しい。それが凄いなって思うんですよね。――確かに、えなりさんがもし言ったらちょっと違和感があって面白い、っていう感じはわかります! 微妙なニュアンスの違いが面白いというか。

微妙な違いで言うと、武田鉄矢さんの物まねを昔からよくやっているんですけど、昔の金八先生と、最後の方の金八先生、そして金八先生が終わってやっと悪い役ができるようになった武田さんっていうのがあるんですよ。よく、ほかのものまね芸人もやっているのが、昔の金八先生で僕の感覚からすると“古い金八先生だけやってるんだ”っていう感じなんですよね。ウケているから、それで全然いいとも思うんですけどね。でも、僕は武田さんが好きだから、なんで今の武田さんもやらないの?ってなっちゃう。初期の金八先生は、上から振り下ろすようなしゃべり方で、後期は同じセリフでも語り掛けるような感じ。そして、金八先生が終わってあるドラマで刑事役をやられていたんですけど、それはとても厭らしい感じなんですね。金八先生のイメージがあるから、やってこなかった厭らしさなんです。じゃあ、武田さんが女性を口説くときはどうなるんだろう…?とか、考え出すと楽しくなっちゃうんですよ(笑)。武田さんの口調でお品書きを読み上げるだけで、高級店に思えてくるとかね。そういう感じのネタだと、使用上の注意を福山雅治さんが読んだら?とか、どんどん浮かんでくるんです。そういうたくさんあるネタの中から、コンサートで何をやろう?って悩んでいるところなんです。チョイスするのが逆に大変。人数で言えば130人くらいかな?


――すごいボリュームですね!

つい、楽しくなっちゃって(笑)。お客さんにウケたりすると、じゃあアレもやっちゃおう、とか思ってしまうんですよね。しゃべっているうちに思い浮かんだりすることもありますしね。コンサートを見終わった後に「あの人はどこへ行くんだろう?」って思ってもらったら最高です。「あの人、いまだにワケわかんないんだけど」ってね。


――最近は、新しいものまね芸人さんも台頭してきました。今のものまね業界をどのように見ていらっしゃいますか?

今の、っていう言い方はあまり良くないんだけど、若手の芸人を見ていると、バカバカしい上にそれを真剣にやっている子という意味では、僕の中ではヒットしている子が少なくて。例えば、ダンスが踊れないのに、三代目J Soul Brothersをやろうとするのは、僕の中ではナンセンス。ちゃんとストリートダンスを踊れたうえで、ふざけないと。僕は美空ひばりさんのものまねをするために、日本舞踊を勉強したんですよ。ひばりさんのものまねをする方はたくさんいますが、日本舞踊からやったという人は聞いたことが無いです。声は皆さん、よくものまねされるんですけどね。でも、ひばりさんのすごいところは、所作にもある。スッと襟を抜くのも、日本舞踊からくる所作なんですよ。ひばりさんを心から好きな方には、この所作も好きという方も多いんです。役者のものまねをするなら、その役者の呼吸や間合いを取り入れないといけないし、殺陣をやるなら、ちゃんと殺陣ができないと立ち姿から違う。若手から聞かれたら、こういうことも言いますけど、自分で気づくしかないですよね。


――ちゃんと本格的にできたうえで崩す、というのはずっと続けてこられたことでしょうか

そうですね。野口五郎さんの「私鉄沿線」も、誰にも負けないくらいちゃんと歌える自信があるんですよ。でも、それは僕には求められていない。そうしてきた自分がいるからなんですけどね。そこじゃないな、って思うんですよ。何回も観ていると、他にないの?ってなる世の中ですから。緩急をつけるために、ここまではちゃんと歌って、ここからおかしくなりました、っていうのを野口五郎さんだけでも10項目くらいに分けられるんですね。歩き方ひとつ、出て来方でひとつ、ピンスポットが当たってなくて引っ込む、とかね。そういうのいっぱいあるんです。そういうのを自分で楽しんでいるのが49、楽しんでいただきたいというのが51。ほんのちょっとでも自分が楽しいが上回ったら芸人としてアウトだと思っているんですけど、でも自分も楽しみたいんです。でも、最近では「ふざけないで、ちゃんとやってください!」って言われることも多くなりました。今、その方の声を聴くことはできないから、ちゃんと聴きたいって。石原裕次郎さんとか、フランク永井さんとか。40年ふざけてきたのに、ふざけないでってどういうことだ?って(笑)。それも、昔と比べると求められることが変わってきたのかもしれないですね。


――最近では、笑いを封印し本名の滝川広志として映画主演をされたり、YouTubeチャンネルを開設したりと、さらに活動の幅を広げていらっしゃいますね。

YouTubeでは、こんな人いるよね?っていう感じの延長線上でやりはじめています。もともとやりたかったことを、コロパパというキャラクターを作ってやっている感じですね。大きくワ~!ってやる感じじゃなくて、小声で言っているような感じがYouTubeの画面の感じと合うんじゃないかな、って。そういうネタはテレビやステージ向きではないので、やる機会がなかったんですよ。でもYouTubeならできるんじゃないかな、と。ちょっとニヤニヤするような、シュールな笑いですね。そういう笑いって、世の中にいっぱい転がっているんです。横断歩道で青になるぞ、っと思って勝手に自分で時間を計って失敗する人とか、会議室のコロコロがついた椅子に座って意外と大きく椅子が動いちゃう人とかね。


――そちらの更新も楽しみです! 最後に、公演を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

今、ファミリーで楽しめるものが減ってきましたが、ファミリーで楽しめるステージなると思います。それこそ、コンビニのローソンみたいにね。探す楽しみ、選ぶ楽しみ。コンビニってエンターテインメントだと思っていますよ。お水1本買うにしても、いろいろ種類があって、立ち止まる、考える、選ぶ。いろんな要素があるんです。芸人ってそうじゃなきゃいけないんですよね。バリエーションを豊かに…どれにしますか?って言われたときに、出したものがいい感じにフィットすると、本当にすごい盛り上がりになるんです。あと、本当のエンターテインメントって会話が増えることだと思うんですね。おばあちゃんがDA PUMPのものまねを見て「(本物も)ああいう髪型の方なの?」とか、子どもが野口五郎さんのものまねを観て初めて野口さんを知って、本物を見てみて「全然違うじゃん!」とかね(笑)。僕をきっかけに、どんどん会話が増えてくれたら。僕はいつも、ショーが終わった後が勝負だ、と言っています。帰り道で、1週間後、1か月後…10年後、20年後、会話してくれる。あんなに笑っているおばあちゃん、初めて観たんだよね、っていう会話のきっかけになれればと思っています。

 

取材・文/宮崎新之