写真左から)こたけ正義感、村上(Aマッソ)、加納(Aマッソ)
ワタナベエンターテインメントの事務所ライブ「WEL(Watanabe Entertainment Live) supported by にしたんクリニック」。ワタナベエンターテインメントに所属する若手芸人たちが月に一度集うこのライブ、2023年5月から丸ビルホールでの開催となり、バトル形式に。変化するライブと芸人たちについて、若手芸人を率いる立場のAマッソ(加納、村上)と、いまもっとも注目を集める若手の一人、こたけ正義感に話を聞いた。
――各お笑い事務所が事務所ライブを開催していますが、その中でWELの特徴は?
加納 「NEW STAR!」、「WEL NEXT」、そしてこの「WEL」と3段階あって、一番下の「NEW STAR!」にいても、各ライブで一度勝てばWELまでたどり着けてしまう。下剋上がしやすいシステムにはなっていますよね。
こたけ 他の事務所ライブってここまで一発で勝ち上がれるところはなかなかないんですよ。
――ライブの雰囲気はどうですか?
村上 普通やねえ。
全員 (笑)。
こたけ でも、ほかの事務所ライブよりも、きゅっと近い世代で仲よくやっていますよね。
加納 たしかに。ライブシーンの人たちが出てる分、ダラダラおれるところではない。入れ替わりが激しいから、すぐに振り落とされる感じがしますね。
――これまで、表参道GROUNDで行われていた「WEL NEXT」「WEL」が5月から丸ビルホールでの開催に変わりました。実際に新しい劇場に立ってみての感触は?
加納 まだ誰もつかめてないなあ。
村上 こたけだけがつかんだよなあ。
こたけ そうなんです。僕は先月まで「NEW STAR!」にいたんですが、勝ち抜いて「WEL」で優勝させていただきました。まさにいちばんの下剋上をしていますね。
村上 この勢いのまま売れていくと、すぐライブに出なくなりますから。
加納 確かに。そういう意味では、今見ておかないといけない人たちが出ているライブだと思いますね。
こたけ 上の人たちはどんどん卒業していきますからね。
――そんななか、Aマッソさんはテレビ等でも活躍していますが、MCをされながらライブに出演を続けられていますね
加納 うちらもライブ芸人ではあるので、今のところは恩返しの気持ちもあって出ています。
こたけ いやあ、Aマッソさんにはまだもうちょっといてほしいですね。
加納 私たちがMCになる前は、ロッチさんがMCをされていたんですよ。ロッチさん、8年やられたらしくて。
村上 私らも8年やらなあかんのかな……。
加納 「NEW STAR!」に出ていてぜんぜん勝てなかった頃、よく「WEL」を見に行っていて。いつか出たい遠い場所という印象があったので、MCができているのは感慨深いですけどね。
村上 丸ビルホールになってうれしいのは、楽屋が広くなったことかな。前は超新塾さんが出てたらもういっぱいになってたから。
加納 超新塾さん、登場の10秒くらい前からあのフォーメーション組むんですよ。ちょっと早いんですよね。
こたけ (笑)。丸ビルホールに変わってから他事務所ゲストが来てくださるようになったのもポイントじゃないですか?一組いてくださるだけで緊張感が出ますよね。あと、細かいところでいうと各コンビごとに本人が決めた出囃子が流れるようになったのも僕はうれしくて。
村上 前まで、登場までの秒数が決まってたんですよ。
加納 ふつうは出囃子の長さって芸人に合わせるんですよ。でも今までのWELでは出囃子に芸人が合わせなあかんくて。
こたけ 明転して、転換のスタッフ残ってるときあった。
村上 爆発音に合わせて出なあかんかったんですよ。ボカーン!で出る。
加納 そんなんないって!
村上 そこが融通がきくようになったのはよかったなあ。
――お笑い芸人さんは事務所ごとになんとなくカラーがあるように思いますが、ワタナベエンターテインメントの芸人さんの特徴ってどんなところでしょう?
加納 変わってきましたよね。少し前は、明るくてバラエティ映えする人たち。でも、いまはネタで勝負する人たちが増えてきた。ハナコがWELでかけていたネタで「キングオブコント」優勝したり、WELでのネタで結果を出す人がどんどん出てきて、盛り上がりは感じています。
――Aマッソさんはその中で若手芸人を引っ張る存在だと思いますが
こたけ 引っ張ってもらってますよ。Aマッソさんが後輩を気にかけてくれるようになったおかげで、若手にまとまりが出はじめている気がします。
村上 金払って言わせてるんです(笑)。
――これからの「WEL」に期待することは?
加納 お笑いファンが来るライブになればいいなと思いますね。「誰見ようかな」「誰推そうかな」という感じで青田買い的に見に来てくれたら。
村上 コーナーライブも始まったので、そこもどんなもんか見てほしいですよね。
こたけ 東京駅の近くで土曜の遅くない時間にやっているので、地方の人も来やすいと思うんですよ。だからぜひ一度来てみてほしいですね。
ワタナベ芸人がしのぎを削る! WELレポート
※ライブ写真は5月公演の様子
Aマッソ&こたけ正義感インタビュー後、6月の「WEL」を見てきた。
同日、「WEL」の前に開催された「WEL NEXT」では、同じく観客投票でもっとも票を集めた1組が「WEL」出演を果たす。この日は特別に3組が出演に。『おもしろ荘2023』で優勝したちゃんぴおんず、『ワタナベお笑いNo.1決定戦2023』で優勝し一躍注目を集めた漫才師・豆鉄砲、多国籍男女トリオのらびっとビーチ。下のライブから勝ち上がってきたメンバーがすでにこれだけ強いという時点で、いまのワタナベエンターテインメントの層の厚さを感じる。
都留が阿部寛のモノマネを封印しコントで勝負したラパルフェ、音楽をふんだんに使ったネタで笑いをさらったこたけ正義感、流行語をキーワードにした漫才の四千頭身、早口がキモのネタで噛んでしまい、悔しさからエンディングで叫んでいたチュランペット。トリのAマッソは観客がみな会場にたどり着くまでに通ってきたであろう東京駅を題材にした、臨場感あふれる漫才を。漫才、コント、ピン芸と多彩なネタが披露された。誰が優勝してもおかしくない盛り上がりを見せたなか、投票の結果、3人が絶妙なバランスで登場するネタを披露したゼンモンキーが優勝。
エンディングでは他事務所ゲストである真空ジェシカのネタを熱心に見ていたというドンココが登場するなど、もうひと盛り上がりが。この日のオープニングでは観客投票によって優勝者が決まることを告げたAマッソ・加納が「みんなで楽しくやるのをやめました! 前の人がすべったら喜ぶ!」と煽る一幕も。しかし、実際には事務所の仲間同士の楽しさは残しつつ、ライブがバトル形式になったことで出演者がみな、自信のある勝負ネタをかけるようになり、ライブとしての面白さがぐっと高まり、観客の満足度も上がっている印象を受けた。次の賞レースで活躍する芸人がここから登場する予感のある「WEL」は、インタビューでAマッソ・加納が言っていたとおり「今見ておくべき」ライブのひとつに違いない。
取材・文/釣木文恵
写真(インタビュー部分)/ローチケ演劇部