「誰もやっていない」単独ライブを。│単独ライブ『Q』:キュウ インタビュー

画像左より)ぴろ、清水誠

他で見たことのないテーマと独特のテンポ、思いがけない展開。『M-1グランプリ2022』でお茶の間に強い印象を残した漫才師、キュウ。彼らの9回目の単独ライブ『Q』が8月から全国4か所で開催される。シンプルでありながら、さまざまな意味を含んでいそうなタイトルだ。彼らが大切にしている単独ライブについて、話を聞いた。

ライブ全体で「Q」に繋がる構成を

──キュウの9回目の単独ライブで、タイトルが『Q』。やはりタイトルを最初に決めたのでしょうか?

清水 僕らの単独はいつもタイトルと内容とが深く関わっているので、今回9回目の単独はせっかくなら『Q』というタイトルでうまくまとめられたら、とは思っていて。

ぴろ Mr.Childrenさんの9枚目のアルバムが『Q』なんですよ。実際コンビ名もそこからとっているので、そのオマージュもあって『Q』にできたらと。ただ無理やりそこに合わせるのは本末転倒なので、うまくタイトルと繋がるような構成が思い浮かべば、と思っていたら、『Q』の意味があるものにできそうな内容を考えつくことができたんです。

──キュウのお二人の単独ライブはいつも、タイトルに関連した仕掛けが随所に張り巡らされていて、漫才を楽しんでいると最後にその仕掛けに気付かされる、というものになっていますよね

ぴろ いろんな芸人の単独ライブや演劇を見ていて、「もっとこんな意味があれば」「ここが用意されていたら」と思ったことを、自分たちで始めた感じです。だから準備にはかなり時間がかかっています。なぜ他の芸人たちがこういうライブをやらないかって、お笑いをやる上では無駄だからですよ(笑)。

清水 全体の構成について考える時間って、お笑いとは全く関係ないですから。

ぴろ みんな芸人なんで、普通は面白いことだけしたいんですよね。

──単独ライブ全体でひとつの世界を作っていくとなると、個々のネタに制約が生まれると思いますが、賞レースに向けたネタについてはどのように考えていますか?

ぴろ 個々のネタについては、一応賞レースに使えるネタができたらと思って作る面もあります。

清水 初期の頃よりここ数年の方が、賞レースに使えそうなネタが増えてきているかも。構成とテーマさえクリアできればあとは自由なので。

ぴろ そこは両立できるくらいの、ある程度自由度の高い構成であることも意識していますね。

「キュウ=単独ライブ」の認識を広げたい

──2022年に『M-1グランプリ』決勝に進出してからは、より知名度も上がり、幅広い方が単独ライブを観に来るようになったかと思います。昨年からは東京だけでなく大阪、名古屋にも公演が広がりました。それによって構成やネタの変化はありますか?

ぴろ 初めての方が何も考えずに観ても、何が起きたかわかって、楽しんでもらえるものになればというのはいつも思っています。一方で常連の方が仕掛けの予想をしながら観てくれたとしても、予想が当たった/外れたという面でも楽しんでもらえるのかなと思っていて。

清水 少し前のほうが、仕掛けも複雑だったよね。

ぴろ やっぱり、なるべくシンプルで強い構成の方がいいなと、最近はそこを重視していますね。ただ観ていてくれたらいい。仕掛けはこっちで勝手にやりますので(笑)。

清水 一つひとつのネタの演出についても、昔はネタをもらったとき「これはどういう言い方?」と聞くことも多かったけど、回数を重ねたので最近はとくに聞かなくてもできるようになっていますね。

──『Q』のフライヤーのメインビジュアルは、いろんな要素が詰まったイラストですね

清水 フライヤーはいつもぴろがノートに書いて「こういう感じ」と。

ぴろ 時代が入り混じったものが広がっているといいな、写真だとチープに見えてしまいそうだから80年代に描かれた未来予想図のようなテイストの絵がいいな、と下書きを描いて、フライヤーを作ってくれる子にお願いしました。

──あらかじめ全体の構成を作ったうえで、それに基づいて一つひとつの漫才を作っていかれますし、フライヤーひとつとってもその構成に基づいて構想を練られている。一般的なお笑いの単独ライブで芸人さんがやる範囲のことを超えているというか……

ぴろ そう、超えていくしかない。そうしないと、他と差が生まれないでしょう。みんながめんどくさいと思ってやらないことをどんどんやっていかないと。

──そんな単独ライブを重ねているお二人の、今後の展望を聞かせてください

ぴろ 苦手なことや向いていないことではなく、誰もやっていないことで自分たちがやりたいことをとことんやってみようと始めたことですが、今後は「単独ライブの人」という認識をもっと広げたい。一方でより多くの人に認められるために、M-1も頑張ります。

清水 単独で全国を回ってみたいですね。

ぴろ そうだね。凝った単独ライブをやると「コントをやってみたら?」と言われることもありますけど、やっぱり漫才師なので。小道具なし、センターマイクと喋りだけという形が美しいと思う。その枠の中でどこまではみ出せるかに挑戦し続けたい。

清水 今年も大阪や名古屋に行きますけど、同じ漫才でも言い方をちょっと変えることでウケが変わったりする。僕はそこを楽しんでいます。

ぴろ 最終的にはもっと単独を進化させていきたいし、単独以外の映像作品なりYouTubeチャンネル(キュウ お笑いオフィシャルチャンネル) なり、キュウとしてできる“ものづくり“だけをやっていけばいいというところまでたどり着けたら、と思いますね。

インタビュー・文/釣木文恵
撮影/篠塚ようこ