『ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー』キャストインタビュー

写真向かって左から、リサ・ライザネック・チャペル(トロンボーン、ユーフォニアム)、石川直(パーカッション)、米所裕夢(トランペット)

 

今夏、2年ぶりに帰ってくる「ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー」。オリジナルの「ブラスト!」の迫力あるパフォーマンスはそのままに、おなじみのディズニー楽曲を新たなアレンジで聴き、楽しめる公演が今年も各地を回る。

「ブラスト!」カンパニー初の日本人キャストとして、2000年から20年もの間活動してきた石川直(パーカッション)が、今回のツアーをもって中心メンバーを離れることを発表。ひとつの節目ともいえる今回のツアーについて、石川、米所裕夢(トランペット)、リサ・ライザネック・チャペル(トロンボーン、ユーフォニアム)に聞いた。

 

■「ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー」の特徴とは

――ディズニー楽曲のコンサートが数多く開催されているいま、「ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー」の特徴はどんなところだと思われますか。

石川「『ブラスト!』は、ミュージシャンたちが身体を使ってパフォーマンス・演技をしながらショーを組み立てていくもの。この点は他には類をみない公演だと思います。身体能力、人間の能力の可能性としてどこまでできるのか?という観点で、僕らはミュージシャンの枠を超えることを常にやろうとしています。言い方はクサいかもしれませんが、「人間の進化」といいますか。
たとえばトロンボーンを演奏する場合、ふつうのコンサートでは、椅子に座ったまま、あるいはバックバンドで立ったまま演奏しますよね。ミュージシャンが走り回ったりステップを踏んだりダンスしたり、楽器を置いてヒップホップのダンスを踊ったり…そんなのは見たことがない。『ブラスト!ディズニー』は、もともと強力なパワーをもっているディズニー楽曲を使って、僕らなりのパフォーマンスにアレンジして、新たな空間を生み出しています。

この公演は必ずしもディズニー作品オリジナルのストーリー・原曲のシーンを回想し、なぞっていく構成ではないんです。ディズニー楽曲がもつ感情を、僕らが新たなかたちで視覚的に表現し、聴覚的に刺激するものにしていきます。

さらに重要なのは、パフォーマンスをして動き回っているメンバーがひとつのチーム、ファミリーになっているのが客席でも感じられると思うんです。僕もオーケストラで演奏した経験はありますし、オーケストラ、吹奏楽、バンドなどでも“メンバー同士の見えないつながり”はあるんですけど、オーケストラがひとつになった瞬間と『ブラスト!』のそれは全然違うレベル。空間的につながっているんですね。『ブラスト!』はステージの表も裏も、裏方のスタッフさんともつながっている。最終的にステージを超えてお客さんともつながりはじめる。脳細胞が結合するみたいに、みんなを取り込んじゃうというのかな。

これは「エンターテインメントを見に行く」というより、「ひとつの出来事を体験しにいく」というのに近いですね。『ブラスト!』でしか味わえない、唯一無二の、ポジティブでエネルギッシュで幸せな空間を提供していると思います。人間同士がつながることで信じられないエネルギーが生まれる。みんながつながってパワーが充電される。「次の日の仕事、頑張っちゃおうかな!」って、みなさんの心にスイッチを入れると思います」 米所「…ほぼ完璧に言われちゃった(笑)。ディズニーが好きな人って、活きた人間、活き活きしているものごとが好きな人がたくさんいらっしゃると思うんです。さっき直さんが話してくださったように、僕らは座って演奏するだけではなく、パフォーマンスをしながらディズニー楽曲の良さを伝える。一緒に「つながる」ことをより感じられるステージじゃないかと思います。盛り上がるのが好きな方はぜひ一度来てもらいたいと思います」

リサ「私が言いたいのも彼らと一緒です!というのは冗談ですが(笑)、ふだん演奏家はオーケストラピットにいたり、ダンサーや役者の後ろにいるもの。でも『ブラスト!』では演奏家がメインになって舞台に立つことで、他のショーとは違ったステージを見せられると思いますし、みなさんにそれを体験していただきたいです。ことばや歌では表現しませんが、音と表情でたくさんの表現をしているのを見てもらいたいですね」

石川「吹奏楽をやっている人たちは特に必見ですよ。ふだんは座って演奏して、とにかく音に集中しているわけじゃないですか。でも僕らは舞台の前に出ていって、ミュージシャンの個性を存分に輝かせる。そういう場が与えられている。なかなか個々にスポットが当たることがなかった吹奏楽のミュージシャンたちが、自分がもっとも得意としているものを輝かせながら主張できる。『ブラスト!』はそういうショーなんです」――指揮者なしで、ミュージシャンのみなさんのパフォーマンスだけで作っていくショーですもんね。

石川「実は…指揮者、いるんですよ。みなさんの後ろ、客席の一番後ろに立っているんです」

――え!舞台上に集中しすぎて気づきませんでした…。これは記事に書いてもいいんですか?

米所「公演サイトやパンフレットに「コンダクター(指揮)」とちゃんと名前が書いてあるので大丈夫ですよ!」

石川「曲にもよりますが、「この曲は舞台上のミュージシャンだけでなく指揮をする人が必要だ」という曲は、コンダクターが指揮をします。ちなみに、今年のコンダクターは可愛いです!」

――それは大事!しっかり書かせていただきます。

石川「みんなステージを見ずに後ろばっかり見てたりして…(笑)」■ディズニー楽曲の魅力とは

――オリジナルの『ブラスト!』と、『ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー』を両方ご存知の石川さんにまずお聞きしたいのですが、ディズニー楽曲の魅力とはどういったところでしょうか。

石川「ことばにしてしまうとすごくシンプルで、チープに感じてしまうかもしれないですけど、「夢」「希望」「友情」「信じる」「絆」とか、人が生きていくうえで必要な人と人との関わり、人間の感情が生み出すエネルギーがディズニーのどの作品にも取り込まれている。音楽のフレーズやリズム、コード進行などでそれを喚起させ、音楽を聴いているだけでその世界に誘われてしまうんですよね。そういう世界をディズニー楽曲はもともと持っている。
オリジナルの『ブラスト!』も間違いなくポジティブな精神を持っていますが、そこにディズニーの要素が加わることで、優しい部分、あたたかみのある側面がぱっと開かれた感じがします。お客様の年齢層も広がった感じがしますしね。
『ブラスト!』が見つめている方向性とディズニーが見つめている方向性に共通点があり、新たな扉が開いたからこそ、こういうコラボレーションができたんだと思います」

米所「ディズニー楽曲は「この曲の、この一部分の、このフレーズだけ聞けば何の曲かわかる」というのが、最大の魅力だと思います。アレンジをするにあたって原曲からいろいろ引っ張ってきたんですけど(米所は本ツアーのプロモーションに際し、楽曲の編曲を担当した)聞けば聞くほど「なるほど、こういう流れ(構成)になっているからここだけ聞けばわかるんだ」とわかったんですね。そういう部分がディズニーのほぼすべての楽曲に含まれている。ふつう楽曲というものは、Aメロ・Bメロ・サビの構成になっていて、たとえばBメロだけ使っても何の曲かわからない、という曲も多いんですけどね」

リサ「小さいころからディズニー作品を見て育ってきた方もたくさんいるでしょう。楽曲を聞くとその当時のことを、ハッピーな時間を思い出す。それがディズニー楽曲の魅力だと思います」


■ツアー公演を前に

――2年前の日本ツアーで47都道府県を回っていらっしゃいましたね。ツアーの楽しみはなんでしょう?

石川「各地を回れるというだけでわくわくします!以前行った場所では、あそこであんな仲間と出会ったな、あんなお店があったな、あのおじさんにまた会えるかな、とかいろんな思い出がありますし。今回初めて行く場所では、新しく出会う仲間と新しい思い出を作ることも楽しみですね。公演では、お客さまのレスポンスも会場によって全然違うんですよね。各地のみなさんに会えることを心待ちにしています」

――リサさんは日本ツアーの思い出深いエピソードはありますか?

リサ「日本は何度もツアーで回っていますが、特に印象深いのは宮島、厳島神社ですね。過去回ったところでは北海道、沖縄もとても楽しかったんですが、今年のツアーでは回らないので…今年はまた新しい素敵なところをみつけたいと思います!」■お客様へのメッセージ

米所「『ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー』も今回で3回目になるんですけれども、まだまだ完成しきっていない。だからこそ公演が続いているんだと思うんですね。1回目、2回目より今年はまたさらに良い公演になると思いますので、ぜひ一度公演に来てみていただきたいです」

石川「今回のツアーのために他の公演から戻ってくるメンバーやクリエイティブスタッフたちの、今回のツアーに向けたワクワク感、早くやりたいとそわそわしている感じを今までより強く感じているんです。『ブラスト!』のメンバーは2年ぶりに戻ってくるので、この2年の間にみんな(『ブラスト!』以外のことを)いろいろやっているんですよ。決してとらえ違いではなく、みんな自信があって、早くここで2年間の成果を見せたいという思いの表れなのではないかと思います。いい波長が出ていますね。よい公演になると信じています!」

リサ「ほんとうに楽しいショーですので、ぜひみなさん来てくださいね。今年は新しいディズニー作品の楽曲も加わりますので、過去の公演に来たことがある方も新鮮な感じで見ていただけると思います。まだ公演に来たことがない方はぜひぜひ来てください!」

 

★取材こぼれ話★

――演奏もパフォーマンスもたっぷりのステージを終えたあと、ミュージシャンのみなさんはどう過ごすのでしょう。オフの時間は遊びに出かけたりするんですか?

米所「行きますね!「ブラスト!」ではないんですが、昨年、別の演目でも僕ら一緒にツアーを回ったんですけど、そのときは高尾山に登りました。行きたいところはみんなで調べて、時間があれば行っています」

――登山ですか!みなさん公演でお疲れではないですか?

石川「高尾山はまだいいほうですね。富士山に登りに行くメンバーもいますから。僕は行ってないですけど」

米所「僕も行かなかった…」

石川「リサは行った?」

リサ「行ってないです(苦笑)」

石川「1日のオフで富士山に登って下りて、次の日にはステージに立つ!という元気ありあまっているメンバーもいますね(笑)」

 

パワフルすぎるエピソード!このエネルギーがステージの熱量を生み出しているんだなと実感したお答えでした。

 

取材・文/ローソンチケット