北村明子と大小島真木がタッグ。今年のKAAT キッズ・プログラムは「夏休み」をテーマにしたダンス作品。


今年のKAAT キッズ・プログラムは、
振付家・北村明子と現代美術家・大小島真木がタッグを組んでお届けする、
「夏休み」をテーマにしたダンス作品。

2011年の開館時より開催している「KAAT キッズ・プログラム」、10年目となる今年は「夏休み」をテーマに、振付家・北村明子演出による新作ダンス公演となる。「夏休み」には死者を迎え入れるお盆の時期も含まれている。「精神の移動」「死生観」「自然の一部としての身体の躍動」などをキーワードに、子どもたちが言語ではなく身体を通じて、生死や自然について新たな発見・体験ができる作品づくりを目指している。

 

振付・演出の北村明子は、高い身体性と映像・照明などを駆使した力強い表現が高く評価されている。KAATでは、2018年にKAAT DANCE SERIES『土の脈』を上演。インドの作曲家や、カンボジア・インドネシアのダンサーなど文化の異なるアーティストとの作品創作を通じ、言語以前の人間の根底にある記憶を呼び起こすような表現に成功した。感受性の豊かな子どもたちに言語を超えた身体表現で訴えかける。

KAAT DANCE SERIES
Cross Transit project『土の脈』(2018)写真:大洞博靖

 

舞台美術には、自然と生き物をモチーフに身体や生命について訴えかける作品を数多く手がけてきた若手の現代美術家・大小島真木を迎える。フランスでの個展開催、VOCA奨励賞の受賞、さらに2017年にはアニエス・ベー主宰による海洋調査船タラ号のプロジェクトに参加するなど、若手の美術家として国内外で期待を集めており、こどもたちの様々なイメージを沸き起こさせる舞台美術を作り上げていく。

“L’oeil de la Baleine /鯨の目 ” パリ・アクアリウム、フランス
Aquarium of Paris Cineaqua, Paris, France Year 2019
Photo by Serge Koutchinsky

 

北村明子が構築する身体表現と世界観に、大小島真木の若手ならではのエネルギッシュな美術視点を加え、視覚と体感によって「夏休み」という広くて自由なイメージの世界へと、大人も子どもも旅立てるような作品に期待!

 

あらすじ

夏休み、子どもたちは大好きだったおばあちゃんに会いに、とある公園からボウケンに出かけると、森の精霊たちの導きによってククノチと出会う。ククノチとは、日本神話に登場する木の神様のこと。子どもたちは様々なボウケンを経て、自然や祖先などとの関わりを学び、現代に戻ってゆく・・・。

 

北村明子コメント

夏休みというテーマから湧いてきたイメージは死者を迎える儀礼である「お盆」です。
死者・自然・生命・・・日本の豊かな文化が脈々と伝えてきた死生観をめぐり、時空を超える想像力の冒険体験が身体の躍動をもって子どもたちに語りかけるような、ファンタジックな表現をお送りします。
そして、移動に制限が掛かっている今、「精神の旅」とも言える、私たちと祖先との繋がりを改めて考えていきたいと思っています。都市にいながらにして、お盆という昔ながらの儀礼に乗って、異世界に冒険に出ること、自然に触れること・死者が語りかけてくることが、子どもたちにとって新しい世界の始まりになるような、そんな体験ができる作品を目指します。自然の中にある身体ってなんだろう、自分の存在とはなんだろう・・・この問いかけを、作品を通じて子どもたちと発見していきたいと思います。

 

大小島真木コメント

日本には四季があるということを、海外を旅するとあらためて自覚させられます。
たとえばインドネシアのような常夏の国にいると、季節という概念自体を忘れてしまいそうになります。日本では夏になると怪談話が盛り上がりますが、確かに思ってみると常夏のジャングルにいると、生きとし生けるものとともに死の国の精霊たちもまた、そこに住まっているような感覚になる時があります。これは極寒の地ではなかなか感じられません(寒い地域にはまた違う神秘があります)。多分、夏がもたらす生の光の強さが、死の影をも濃くしているのではないかなと想像します。
今回の舞台美術において意識したのは、一つの舞台上で生の世界と死の世界を行き来できる空間を作るということです。実はその二つの世界はそんなにパキっとは分かれていないのかもしれません。それこそ私たちの身体の中にも実は生と死が常に裏表になって存在しているのかもしれない。そんなことを皆さんと一緒に想像してみたいと思っています。