城田優プロデュース『TOKYO〜the city of music and love〜』|城田優インタビュー

撮影:木下 雄介

城田優が、実力派クリエイター、キャストと共に創り出す歌とダンスのオリジナル・エンターテインメントショー『TOKYO〜the city of music and love〜』が、2024年5月14日(火)〜5月19日(日)、東京・東急シアターオーブにて行われる。また、本公演は日本を飛び出し、6月にシンガポールでの開催も決定。新たな才能との出会いに期待が高まるショーが誕生する。
演出、プロデューサーを務める城田に、本公演やエンターテインメントにかける思いを聞いた。

――本公演を城田さんが手掛けられる経緯や、『TOKYO〜the city of music and love〜』というタイトルに込められたコンセプトをお聞かせください

2021年に米倉涼子さんと一緒に共同プロデュースさせていただいたエンターテインメントショー『SHOWTIME(ショータイム)』がありがたくも好評で、東急シアターオーブさんと主催のキョードー東京さんが再びショーを創られることになり、今回、依頼のお話をいただきました。

コンセプトとしては、世界に通用する、日本を代表するようなショーをたくさん創っていきたいという思いがまず軸としてあります。シアターオーブさん、キョードー東京さんも海外作品をたくさん手掛けてこられていますし、僕自身も「クオリティの高いものを創っていきたい」という気持ちでエンターテインメントに取り組んできました。タイトルに“TOKYO”とありますが、僕らが住んでいる日本という国をテーマに、海外で通用するクオリティのショーを創ったら面白いんじゃないかな、という考えに最終的に辿り着いて、あえて分かりやすいワードとして“TOKYO”を入れました。また、さまざまなスケジュールの都合で今回海外公演はシンガポールのみになりましたが、そもそもは世界中で上演することを前提にこのタイトルを付けました。

――シンガポールでの公演について、現段階ではどのような感触をお持ちですか?

シンガポールはプライベートでも仕事でも何度も訪れているので、僕にとってはとても親しみのある国ですね。公演を実施するEsplanade -Theatres on the Bayは、このような劇場を日本でも作ってほしいなと思うくらい、素晴らしい劇場です。外観の美しさや座席が観やすいのも魅力ですし、裏方の目線で見ると、広くて使いやすそうな印象もあります。どこまであるんだろうというくらい奥行きがあって、場面転換など、芝居やミュージカルをやる上で利便性があり、アイデアが生まれやすい作りになっていて、上質な劇場だなと感じました。

――海外公演にあたり期待することを教えてください

正直に言うと、今は期待よりも不安の方が少し大きいかもしれません。まず、現地の方々にこの公演の存在を知ってもらうことが何より難しいと感じています。シンガポールという国において我々の認知度はほぼ皆無でしょうし、劇場は2000席を超えるビックシアター。ショーでは世界中のいろんなミュージカル曲やディズニーの楽曲なども披露しますが、後半では日本のポップスをたくさん歌わせていただく予定で、どれくらい日本の音楽を楽しんでもらえるかというのも気になるところです。とはいえ色々と不安はありつつも、ワクワクはしていますね。

城田優自身が声をかけて集めた、珠玉のメンバーが集結

――城田さんが直接出演者にオファーしたそうですが、どういったところに魅力を感じられたのか、お一人ずつお聞かせください。まず、音楽監督と出演もされるSWEEPさんについてはいかがですか?

SWEEPくんは、前回の『SHOWTIME(ショータイム)』で共演した森崎ウィンくんに紹介してもらったのがきっかけでした。「マジでヤバい人がいるんで紹介したいです!絶対、優君好きだと思います」と教えてくれて。彼はとにかく歌がべらぼうに上手くて、音楽的なスキルやセンスも含めて尊敬している方ですね。

――RIOSKE(ペルピンズ)さんはいかがですか

RIOSUKEくんは今では有名になっちゃって、ずいぶん前から彼に注目していた身としてはちょと悲しいのですが(笑)、以前彼はCOLOR CREATIONというグループで活動していて、その中で群を抜いて上手い子がいるなと注目していたんです。いつかご一緒したいなと思っていたので、このタイミングだと思ってお声がけしました。

――吉田広大さんについては

広大くんは、僕が信頼している俳優仲間に「以前、優さんも演じていた『ロミオ&ジュリエット』のティボルト役を演じている方で、絶対優さん好きだと思います。優さんと同じようなパッションとセンスを持っている方だと思うので観てほしいです」と言われて。実際に観たら、歌と芝居のバランスも含めてすごく良かったんですよ。彼にはあんな曲やこんな曲も歌ってほしいなという思いもあり、出ていただくことになりました。

――Rainy。さんとyuzu(FYURA PROJECT)さんは、カンパニーの中では特に若い世代ですね

実は、元々小学生の天才子役的な子を探していたのですが、やはりなかなか難しく、少しショーのコンセプトを変えました。今回抜擢した2人はまだ15歳、13歳ととても若いですが、10代の子たちにはやはり伸びしろや将来性があるので、これからの期待を込めて。今後も努力を続けたら確実に日本でトップになれる才能やセンス、華を持っている子たちです。特にyuzuに関しては13歳ながらにすでに強い個性を発揮している印象がありますね。若手の2人にもぜひ注目してほしいです。

――ダンサーの方々も魅力的なメンバーが揃いました

一般的なコンサートやショー、ミュージカルなどでもダンサーさんたちは“バックダンサー”として居ることが多いですよね。でもこの公演では、その定義を壊したいなと思っているんです。一人一人がまったく違った色を持った“主役”として、ステージに立っていただきます。

原田薫さんとは、ミュージカル『NINE』では俳優として共演、『カーテンズ』では共演に加え、僕が演出家で薫さんが振り付け師として、また別の作品では僕が演者として薫さんの振付を受ける立場になったりと、さまざまな形でご一緒してきました。総合的なセンスや情熱や人間性、とにかく薫さんご本人のスタンスが大好で、絶対的な信頼を寄せています。

SHUNさんも同じく振付家としてダンスを教えていただいたこともあるし、同じステージでの共演もあり信頼関係もしっかり築けています。SHUNさんも人柄も含めてすごく個性的で、とてもパワフルかつトップの実力をお持ちの方です。

碓井菜央ちゃんは、2011年の『ロミオ&ジュリエット』の初演で初めてご一緒したのですが、そこから会う度に驚くほどの成長ぶりを見せていただいています。彼女のダンスは本当にキレがすごく、魅力的で、自分もあれぐらいカッコよく踊れたらなと思いながらいつも見惚れています。

BOXERさんは今回初めてご一緒するのですが、実はInstagramで見つけました。このショーのキャスティング用に友人にも色々とリサーチをしていたのですが「面白いダンサーさんがいるよ」と聞いて、観てみたら本当にユニークというか、とにかく個性が爆発していて素敵だなと。自公演の趣旨と意図を説明したら、「面白そうですね」と乗ってくれて、出ていただけることになりました。因みに彼は元々ボクサーで、独自のダンススタイルは、必見です。

高村月くんとの出会いも面白くて、僕の友人の誕生日会でゲストとしてパフォーマンスを披露してくれた方たちの中に彼がいたのですが、「この子すごい!」と感動して。ショーが終わってからいろいろとお話させてもらって……というご縁で出演していただくことになりました。

――この個性的なキャストの皆さんに加えて、さらにスペシャルゲストとしてmiwaさん(5月14日(火)・5月15日(水))、鷲尾伶菜さん(5月16日(木)、5月17日(金)、5月19日(日))、島津亜矢さん(5月18日(土)昼・夜)がご出演されます

スペシャルゲストのお三方は、ジャンルは違えど日本を代表する活躍をされてきた方々ですので、ぜひこのショーに華を添えていただき、一緒に盛り上げていただきたいと思っています。経験も豊富で三者三様の魅惑の歌声、僕自身とても楽しみにしています。

――演出では、世界中で数々のショーを手掛ける金谷かほりさんもご一緒に担当されますね

当初は金谷さんがサポートしてくださるという形で進んでいたのですが、公演のスケールがどんどん大きくなっていく中で、自分の経験や知識だけでは手に負えない部分も見えて、そんな中、金谷さんは常に斬新かつ僕にはない角度から色んなアドバイスをくださって。僕の方から共同演出にしませんかとお願いしました。大きなバジェットを使って素晴らしいショーを創ってきた、経験豊富な金谷さんのお力をお借りしたいなと。世界レベルのものを創るのであれば、やはり世界で活躍している方と一緒にやれた方がいろんな面でスムーズにいきますし、勉強させていただきながら一緒に創っています。

――本公演でも城田さんの慧眼が光るカンパニーになっていますが、今後ご一緒してみたいと思っている、または注目されている方がいらっしゃれば教えてください

ミュージカルでいうと、何度もお声がけはしているもののなかなか実現していないのが、海宝直人くんですね。彼は実力はもちろんのこと、細かいところまで作品を視て、自分の言葉でしっかり語れるところも含めて素晴らしい方。あと、単純に僕と好みが合いますし、どんなふうに一緒にクリエイションができるのか、とても興味がありますね。今のところ振られ続けていますが(笑)。

他にも上げ始めればキリがないですが、若い世代で注目しているのが、熊本エミさん。彼女は歌もダンスも突出したものを持っていて、これからが楽しみな方ですね。是非ミュージカルにも挑戦していただきたいです。また今回キャスティングする中で、加藤礼愛さん、fyuraという10代の子達のグループの存在を知り、世の中はこんなにもたくさんの才能に溢れてるのかと驚いています。今後はニュージェネレーションの方々の才能を伸ばすようなお仕事もしていきたいです。

エンターテインメントのクオリティを上げていきたい

――近年、出演だけでなく演出家やプロデューサーとしてもご活躍されていますが、どのような思いを持って取り組んでいらっしゃいますか?

まずは高いチケット代や移動時間、労力をかけて劇場に足を運んでくださるお客さまに、いいものをお届けすること。そして、お客さまには作品の善し悪しをちゃんとご自分で判断していただきたいと思っています。そのためにはずば抜けていいものを生み出し、比較対象を作らなければいけない。僕自身、ニューヨークやウエストエンド、ラスベガスなど海外でいろんな作品、才能を観てきていますが、真の実力やクオリティで評価されるのが世界基準です。取り組むジャンルにも僕が演出やプロデュースをするときは、できる限りそこを目指していきたいと考えています。

表現者においては、どのセクションも含めて個性があり、すば抜けたものを持っている人の方がいいのは言うまでもなく。絶対にユニークな部分があった方がいいと思います。今の日本のエンターテインメントはどうなのかというと、特にミュージカル界においては、同じ人たちで別の作品をぐるぐる回しているような状態になっていると感じます。もちろん劇団などはそれで良いのですが、沢山の才能を自由にキャスティングできる商業演劇なのだから、個性豊かなキャスティングの作品が増えると嬉しいですね。シンプルに人材不足ということもあるので、やはり作り手側がどんどん新たな才能を発掘していかなければならないと思っています。日本のエンターテインメント界を、ビジネス優先ではなく、エンタメが結果的にビジネスになっているような在り方にしていきたいですね。たとえ1%の人にしか理解してもらえなかったとしても、「城田は他の人たちとはちょっと違うよね」と思ってもらえるよう、エンターテインメントのクオリティを上げていきたいと思っています。

――本公演は、これまで城田さんもミュージカルなどで何度も立たれている東急シアターオーブで開催されます。劇場への印象やエピソードはございますか?

オーブといえば、やはり海外ミュージカルの招聘を牽引し続けている劇場ですよね。僕自身も『ロミオ&ジュリエット』『ピピン』『キンキーブーツ』や、その他にもコンサートなどでもたくさんの作品でお世話になっている劇場なので、ホームのような感じになっているところがありますね。あとはやはり、渋谷という都心のど真ん中に劇場があるのがいいですよね。

――劇場へのアクセスの良さというのも重要な要素の一つですよね

渋谷は若者が来やすい街でもありますよね。例えば海外だと、家族で連れだったり、若者たちがデートで劇場に行くのが当たり前の風景として見られますが、日本ではなかなかそういった慣習が普及していない。僕自身、劇場に足を運ぶ人たちを増やしたい、新しい客層を取り入れたいという思いで舞台に携わっていますが、そういった意味でも、若者がアクセスしやすい街に劇場があるのはとても大事だと思います。とくにこれからの日本を担っていく若い世代の方たちには、ちゃんといいものに触れて目を肥やしていってほしいなと思っています。

インタビュー・文/古内かほ
ヘアメイク/Emiy(エミー)
スタイリスト/山中有希奈