学ラン姿の男たちが大真面目に必死に、そして美しく踊る姿でお馴染みのコンテンポラリーダンス集団、コンドルズ。日本各地のみならず世界でも30カ国以上で公演を行い、絶賛されている彼らが年末恒例行事として行っている大阪限定の特別公演を、今年も決行する。主宰・近藤良平にこの大阪公演への想い、そして今回の“大阪限定クリスマス会×忘年会公演”『2019年ネオユニバース』のことについて、語ってもらった。
近藤「実は京都でもアートコンプレックスという場所で2000年くらいからやっていて、大阪はそのあと2002年から定期的にやるようになったんですけどね。だけど大阪で公演を打つことには、次もできるかどうか、という意味で毎回ちょっと緊張感があって。それと東京ではまずないんですが、たとえばテレビでちゃんと宣伝してくれたりするので、それが僕たちにとってはとても新鮮な出来事だったりもして、そういう意味でも大阪でやるということにはちょっと特別な感慨があるんです。そんな思いや紆余曲折を経ての、17年目の今回というわけです」その今回の大阪公演のタイトルは『2019年ネオユニバース』。なんだかとても壮大なイメージのタイトルで、加えて“さらば平成!”とのキャッチコピーもつけられている。
近藤「“ネオユニバース”というのは造語です。ちなみに、ちょっと調べればわかりますけどL’Arc~en~Ciel(ラルク アン シエル)の曲のタイトルでもあったりします。なんとなく今年の暮れを想像すると、よくテレビでも“平成最後の~”とか言っていますけど、それもちょっと意識してみました。ネオユニバースは、つまり新しいユニバース、次の世界、ユートピアみたいなところに行こう、みたいな意味合いも含めています。だから、意外とそんなにふざけたタイトルではなく、あくまでも真面目な想いの詰まったタイトルなんですよ、これは(笑)」披露される演目に関しては、まだ10月末の取材時点では「検討中です」と笑っていた近藤。
近藤「会場のナレッジシアターはそれほど大きなスペースではないのですが、僕らの場合は昔から、大きかろうが小さかろうが、その場所に合わせて変幻自在にやってきましたからね。きっと、今年釣りあげた面白いもの、夏公演を経て見えてきたもの、引っかかったものは拾い上げて“ネオユニバースバージョン”としてやることになるんじゃないかとは思います。僕として考えているのは今回の『ネオユニバース』はコンドルズの未来に残しておくためのいろんなオモチャがいっぱい入っている玉手箱というか。ベスト盤とか総集編というよりは、後世のためにこれまで僕たちが築き上げたものをピックアップしておく感じ。こういう見え方、伝わり方の、こういうピースがあるということをここで指し示しておく。それを今年やり、来年もやり、と続けていくことでどんどんコレクションが増えていくというようなイメージですね」また最近は若手メンバーの成長、活躍も顕著なコンドルズ。その年齢差も相まって、新たなバランス関係が生まれている模様だ。
近藤「僕がちょうど50歳になったことで、改めて“50代を見直そう”という動きもあり。この年代がどういう風に輝くか、これは決して老人問題というわけじゃないんですけど(笑)、でもまだまだ輝けるであろうということを探したかったんです。それで50代のメンバーによるシーンを作って、今まで見せていた方向性とはちょっと違う扱い方をしてみたらとても面白かったんです。それを今回の『ネオユニバース』で、どう生かすかというのは別問題ではありますけど。僕らも本格的に活動を始めてから今年で22年目になるんですが、少し前の20周年の時に100人くらいのお客さん限定で若手公演をやってみたんです。その時、コンドルズとして最初にやった作品を若手だけでやったんですが、半分冗談のような軽いノリだったはずが、やってみたら意外とみんな真面目にやってくれてね。観ていた我々のほうがものすごく感動して、みんなボロボロ泣いちゃったんですよ。ただ模倣するのではなく、若者は若者で考えがあるというか、自分たちも何かを築き上げたいとか、ちゃんと見せたいとか、そういういろんな思いがあるんだということを改めて知ることができた。だから、僕らのコマとしてではなく、若いメンバーもきちんと見せるべきだということです。その点がここのところ、変わってきたように思います。実際、古い人たちだけでやるのではなく、若い人たちもどんどん前に出していっている。新旧交代、ではないですけど、若手の活躍する場所を認める感じでやっているので、その若者と古株メンバーとのマッチングは今年の公演から非常にいいなと感じていますね。そのおかげで、先ほども話した50歳以上の面々が輝ける雰囲気もより見えるようになった気もしますし。50歳が20歳のふりをする必要はないわけですから。そういった総合的なチーム感が今は出ているなという気がしています。あまりダンスカンパニーで、ここまで幅広い年代のメンバーたちが所属しているというのも、あまり他に見ないスタイルだと思いますから、それ自体は今後もずっと大事にしていきたいなと思っています」そして、まさに“平成最後の”大阪公演になるわけで、そのあたりも意識しながら構成するつもりなんだとか。
近藤「振り返ると、我々はずっと平成という時代の中で活動してきたカンパニーということになるんですよ。となると、この“30年”も今回のキーワードになりそうな気がします。30年前ということになると僕は20歳、ちょうどそのころにダンスや舞台というもの、そしてコンドルズのコアなメンバーにも出会っていたりもするので。この“平成を拾う”というのも面白そうだなと思っています。大阪、近郊の方だけでなく全国から、初めてのお客さんも怖れずに(笑)、ぜひ足を運んでいただきたいですね」
コンドルズファン、そしてコンテンポラリーダンスに興味のある方、アート好き、音楽好きが楽しめるのは当然ながら、さまざまな方向性に捻ったアイデアに驚きたい方、単に面白いものを観て大笑いして年末をスッキリ気分で過ごしたい方にもおススメの公演になりそうだ。
取材・文/田中里津子