梅棒18th “RE”SHOW『シャッター・ガイ』|稽古場レポート

撮影:角田大樹

J-POPに乗せて演劇的な世界観をダンスで表現するダンスエンターテインメント集団・梅棒。アーティストのライブや映画、舞台などの振付、演出なども手掛ける彼らの主催公演、梅棒 18th “RE”SHOW『シャッター・ガイ』が6月から7月にかけ、東京・大阪・愛知の3都市で上演される。

今回は、2018年に上演した梅棒 8th SHOW『Shuttered Guy』を、6年ぶりに再演。ゲストキャストを一新した『シャッター・ガイZ』と、配役の半分がシャッフルされるという『シャッター・ガイ改』の2バージョンで上演されるという。

物語の舞台は、ちょっとさびれてしまったとある商店街。そこに豪華デパートを経営する姉妹が現れ、人々は古き良き商店街と煌びやかなデパートとの間で揺さぶられてしまう…というストーリー。

キャストには、梅澤裕介、鶴野輝一、遠山晶司、塩野拓矢、櫻井竜彦、楢木和也、天野一輝、野田裕貴の梅棒メンバーに加え、谷内伸也(Lead)、茜屋日海夏(i☆Ris)、鐘ヶ江洸、OH-SE(電撃チョモランマ隊)、SHUHO、だーよし(TRIQSTAR)、YOU、ザンヨウコ、福島海太、山咲和也、吉原怜那(ダウ90000)がゲスト出演。総勢19名の多彩なメンバーでお届けする。

日々、熱い稽古が進められている都内某所の稽古場の様子をレポートする。

取材時に稽古していたのは、物語の中盤シーン。2人のヤクザに商品の果物を乱雑に扱われた果物屋の娘・あおいが激高し、大暴れするという場面だ。それを必死で止めようとする果物屋の親父をはじめとする街の人々…激しい音楽に合わせ繰り広げられるダンスや大がかりなセットを存分に使った演出など、舞台全体を駆けまわるような力強く細やかなダンスが繰り広げられる。あおいが放つ技の衝撃を、群舞の大きな動きで見せつけ、息をのむような圧巻のパフォーマンスだ。

しかし、高い熱量のまま勢いだけで稽古が進んでいるわけではない。芝居の演出に関しては実に緻密だ。驚きや気付き、心の動きなどを曲のカウントのどのタイミングで入れ込んでいくか。いわゆるダンスの振付を超えた、芝居としてのアプローチで何度も細かく確認していた。伊藤はキャストの動きを見ながら、手元のPCに気付いた点をどんどんと打ち込んでいる。この冷静な分析の積み重ねが、セリフが無くてもダンスだけの表現で物語がスッと入ってくる、梅棒ならではの一体感に繋がっているのだと思い知らされた。

そして、その指示に食らいついていくキャストの姿勢も素晴らしいもの。J-POPのメロディとリズムの中にお芝居を落とし込んでいくのは、かなり難しい作業になるはず。キャストらは驚くべき吸収力でさまざまな変更をモノにしていき、その場その場でしっかりと対応していく。その柔軟性の高さにも驚かされる。

総合演出の伊藤今人からは「このシーンの気持ち、どう作っていく?」などの声かけがあり、役を演じるメンバーの意見もどんどん取り入れられた。一緒に踊るメンバーともお互いに声を掛け合って、アイデアを出し合いながら進められており、そこに梅棒メンバーとゲストの垣根はない。活発なディスカッションが、常にどこかで繰り広げられていた。

そして、今回はキャストを入れ替えたバージョンでの公演もある。最初は『~Z』の配役で進められたため、変更点などを共有すべく、すぐに『~改』のキャストに入れ替えて通していく。ストーリー展開は同じなのだが、キャストが変わるだけで役のちょっとしたニュアンスや表情が変わり、また新鮮な印象になるから驚きだ。

もう1曲は終盤シーン。

楽曲のスピード感から、かなりスピーディな場面となるが、舞台上に散らかったお札を決められたカウントの中で拾い集められるかなど、ややシビアな動きが求められる。散るお札の動きはランダムなため、巻く位置などを何度も繰り返し確認されていた。セットは高低差もあり、高い位置からだと「座席位置によっては見えない」というスタッフからの指摘も入る。実際のところは劇場入りしてからの確認になるが、どの客席からでもなるべく同じように楽しめるよう、ギリギリの立ち位置、角度など、時間をかけて探っているのが印象的だった。

繰り返し同じ場面を見ていても、まったく飽きることなく見続けることができるのは、同じ場面でも視点を変えると新たな面白さや発見が次々と出てくるからだろう。そして、繰り返すたびにアップデートされているため、次はどうなるんだろう?という期待も毎回感じられた。あれからさらに稽古を重ね、またパワーアップしているに違いない。

伊藤は「見学してもらうなら、もっとカッコいい曲もあったはずなんだけどなぁ(笑)」とボヤいていたが、コミカルとシリアスが入り混じる、”芝居”を込めた圧巻のダンスパフォーマンスはまさに梅棒ならではのもの。それを十二分に感じさせてくれる3時間だった。見学できなかった”もっとカッコいい曲”にも、大いに期待したい。

取材・文:宮崎新之

撮影:角田大樹