『CLUB SEVEN another place』│玉野和紀、北翔海莉、留依まきせ 合同取材会レポート

怒涛のジェットコースター大娯楽エンターテインメント『CLUB SEVEN』、21年目の最新作『CLUB SEVEN another place』が9月22日(日)に東京・シアター1010にて開幕、その後9月28日(土)から10月13日(日)まで 東京・有楽町よみうりホールにて上演される。

本作は、ソング&ダンス・芝居・タップ・ミュージカル・スケッチ、あらゆる要素を取り入れたニュー・エンターテインメント・ショー。2003年5月の初演以来、脚本・構成・演出・振付を務める玉野和紀を筆頭に、吉野圭吾、東山義久、西村直人と初演から作品を支える“レジェンド”メンバーをはじめ、ミュージカル界をけん引する才能あふれるキャストたちが出演してきたシリーズで、今作にはそのレジェンドメンバーに加え、シリーズでお馴染みの大山真志、北翔海莉、そして初出演となる林翔太、鈴木凌平、留依まきせが顔を揃える。

稽古場で、玉野和紀、北翔海莉、留依まきせの合同取材会が行われた。

衣裳数も五十音メドレーの楽曲数も過去最高

――21年目に突入した『CLUB SEVEN』ですが、今回は“another place”ということで、いろいろ変化がありますね

玉野 20周年の節目を経て、ここからまたいろんなところでやれたらいいなと思っています。今回は新しい作品も入れつつ、出演者も「7人」から「9人」にして、ちょっと新しくという気持ちです。

――20周年の公演では過去の作品のリメイクも観ることができました

玉野 なので今回は新作でという気持ちがすごくあります。だからスケッチは新作が8つかな。【Aバージョン】で4つ、【Bバージョン】で4つあって。いつも新しい脚本を書いているので新しいと言えば新しいんですけど、今回は新作で臨みました。

留依 めっちゃ盛り沢山やなと思います。

玉野 初参加のあーちゃん(留依のニックネーム)から見た感じはどう?俺はもうみんなのことを知ってしまってるから。

――ネタバレにならない程度にお願いします!

留依 難しいこと言いますねえ!(笑)

玉野 今回はスケッチで洋も和もありますよね。

留依 和は初めてなんですよね?

玉野 うん。和は初めてだと思う。

留依 衣裳がとんでもなく豪華だなって思います。

玉野 衣裳はきっとお客さんも「おお!」ってなると思う。ミニミュージカルでも豪華だし。ただそのぶん衣裳合わせがね、とても9人の数じゃなかった(笑)。

留依 (在籍していた)宝塚歌劇団でも、こんな着点数はトップさんでもなかなかないです。

玉野 過去最高だって言ってました。全部が過去最高です。五十音順ヒットメドレーの曲数も95曲ですから。20周年で90曲だったんですけど、5曲増えた。次、100になったらどうしよう(笑)。

北翔 出演する度に曲数が増えていくので、もうだんだん驚かなくなってきました(笑)。

玉野 (笑)。小道具も多いしね。スタッフさんには本当に申し訳ない。いつも僕のわがままで、「これ作れる?」って作ってもらって。

留依 キャストのみなさんもそれぞれ「これをこういうふうにしたいです」とかおっしゃってますよね。それを聞いて、そんな感じなんだ!と思いました。

玉野 そこは普通の稽古場とはちょっと違うよね。みんなでつくってる。劇団みたいな感じ。

――北翔さんはこれまで本編に2度出演されていますが、今作はどうですか?

北翔 今回は9名なのでそのぶん心強いです。でも女性は(過去公演と同様に)2人しかいない、つまり男性のエネルギーが割合的に強くなっちゃうから、今までとも違うエネルギーを出さないとと思っています。

――さらにいろいろと「過去最高」があるので…

北翔 ダンスの量、歌の量、台詞の量。覚えられないよ!っていう(笑)。でもやっぱりいざ曲がかかったり、いざ芝居を通しますってなると、みなさんスイッチが入って、「ああ、プロなんだな」と思います。自分にもっと火をつけないとって、毎回引き締まるものがあります。

玉野 誰よりもできてるよ!

北翔 いやいやいや。こういう現場ってすごくいいなと思いますし、こういう現場に常にいなきゃ向上できないんだなってことが本当によくわかります。『CLUB SEVEN』のなにがいいって、自分が挑戦する気持ちとか新しい引き出しをつくってやるぞみたいな意気込みが、他の現場とはまた違うものを生み出すんですよ。自らもそうですし、先生(玉野)が「こういう役をやってみて」と提示するものをなんとか表現しようと思うぶん、新しい北翔海莉の引き出しをつくってくださるので。すごくいい現場だなと思って、毎回挑戦させていただいています。

――北翔さんは公演の動画コメントでも「『CLUB SEVEN』のない年は輝けない」とまでおっしゃっていましたよね?

北翔 ここを経験した方は「怖いものがない」とおっしゃるんですよ。そのくらい、ここで経験したものって本当に自分の引き出しになるし、もっと磨かれた自分で外に飛び出していける。「ここで修行させてもらう」くらいの気持ちです。だからちゃんと身を引き締めて……修行僧になります!

玉野 ははは!

――修行僧に…

北翔 ただ自分が楽しんでるんじゃだめだっていう。修行させてもらいます!

留依 私も修行します!

――留依さんは同じ宝塚歌劇団の後輩でもありますね

北翔 あーちゃんとは一回り違うので、私が宙組にいた時に入ってきて、当時の下級生の頃の留依まきせさんしか知らないんですよ。立派になられて。

留依 今回はみちこさん(北翔のニックネーム)と対で踊らせていただいたり、一緒に歌わせていただいたりするので、あの頃の私に言ってあげたいです。「あなた12年後には北翔さんと一緒に歌えるんだよ」って。

あのライブ感はどうやってつくられているのか

――『CLUB SEVEN』は独特のライブ感が魅力ですが、稽古場ではどこまでどんなふうにつくっているのですか?

玉野 僕の脚本はそのライブ感を基盤に書いているので、本当にその場で起きることももちろんあるんですけど、けっこう計算はして書いています。アクシデントもあるんですけどね(笑)。

――出演者としてはどういうふうに考えてこられましたか?

北翔 稽古場からちゃんとセットが組まれているので、現場がどういう感じになるかみんなが把握できるんです。そのうえで、いきすぎたことも一回やってみる。お客さんの前でここまでしすぎちゃだめだっていうところもありますし、逆にお客さんが入ったらもっと大きいパフォーマンスをしないとダメだっていうのもあるので、そこをみなさん計算しながらやられているなと感じます。

留依 みなさん本当にふざけているように見えて、めちゃくちゃ考えていらっしゃることがわかるんですよ。計算されてるんだっていうのがすぐわかる。それがすごいです。やっぱり実力がある方々だからやっておもしろいですし。みなさんを見ていると、自分ももっと突っ走りたいなと思います。

――全公演観に行く方々もしっかり楽しませる力がすごいですよね

留依 毎回、絶対変わりますもんね。

玉野 無茶ぶりも違うし、同じことはまったくないね。

北翔 だからお客さんも「え、そこ見てなかった!」とかあったりもして。生の良さですよね。

留依 こんなに変化のある舞台、あまりないです。コメディで少し変わることはあってもここまでじゃないし。

玉野 やっぱそこは、「変わっても絶対にここに戻す」という約束をしてるからできるんですよね。“玉子とニャンコ”なんてお客さんから返ってくる言葉が毎回違いますし、“監督シリーズ”も毎回お題が違いましたし、どう戻すかはその時々なんですけど。ただそういう意味では今回は新作でまたちょっと違うので、どうなるかわかりません(笑)。初の試みだから、大失敗するか、大成功するか……大成功させなきゃいけない。

――大成功させるために重要なのはどんなことですか?

玉野 やっぱり稽古で何回もやることですね。何回もやって、「この方向で」っていうひとつの芯みたいなものを持つ。そこをブラさないようにさえしてくれれば、あとは変わったって全然いいっていう。

――芯を稽古の中で太くしていくような?

玉野 インナーマッスルを鍛える感じですよね(笑)。インナーマッスルの周りは柔らかいっていう。

稽古場でずっと笑っている

――留依さんは初めて参加していかがですか?

玉野 稽古が始まって「やめておけばよかった」と思ったでしょう?(笑)。

留依 思ってないです、全然!稽古に参加していて「これをやれたら他の現場で怖いものがあまりなくなるかもな」と思いました。

玉野 無茶ぶりコーナーの苦しみとかを味わうとね(笑)。

留依 もちろん怖いものがなくなりはしないですけど、恐怖心が少なくなるんだろうなって。すごく出てよかったと思っています。ただみなさんがすごすぎるので、“添えもの感”が出ないようにがんばらないと。

玉野 出てない、出てない。

留依 がんばります。稽古はほんとにずっと笑っててしんどいです。脳も使うし、体力も使うけど、一番の疲れの理由って笑いじゃない?って思う(笑)。じゃるくん(鈴木凌平)とも「こんなに笑って死にそうになることなくない?」って言ってました。

玉野 そうね。笑わない日はない。

留依 笑い泣きしてるんですよ、大体(笑)。

――玉野さんから見た、留依さんの魅力をお聞かせください

玉野 実力があるからなんの心配もないです。歌えるし踊れるし。みっちゃん(北翔)ともめちゃくちゃ相性がいい。

留依 わーい!

北翔 (笑)。

玉野 キャラも合ってるしね。すごく戦力になるなという印象です。今回、初めてのメンバーがあたふたしてないので、大したもんだなって。(林)翔太もそうだし、じゃるもそうだし。

北翔 翔太くんは淡々と黙々ときっちりと、踊りも場所も間違いないですね。

留依 昨日も「翔太くんしかできてないよ!」って言ってましたよね(笑)。

玉野 なんでもできる。じゃるも本来のダンスの方向性がすごく力になってる。そこにふたり(宝塚歌劇団では男役だった北翔と留依)もいるから、敢えて男っぽいダンスも入れてみてる。ふたりがソフト帽をかぶって出てくると、お客さんも喜ぶんじゃないかなと思うし。……と言っても色っぽくね!

北翔 ハイ!

留依 がんばります!

玉野 帽子かぶるからって男役に戻っちゃだめですよ。

北翔・留依 ハイ!

――北翔さんは「ミスCLUB SEVEN」ですが

北翔 なんですかそれは(笑)。

玉野 みんな言ってますよ。

北翔 とんでもないです。恐れ多いです。

――玉野さんは北翔さんの魅力をどう感じていますか?

玉野 みっちゃんはなにをしても喜んでくれて、『CLUB SEVEN』を大好きって言ってくれるから、それが本当にうれしい。オリジナルで脚本を書いているので、それを信じてくれて、やってくれてるっていうのはうれしいですよね。『CLUB SEVEN』は正解のないところからみんなで正解をつくっていくっていうことをわかっている人です。女性で本編に2度出演したのはタータン(香寿たつき)と2人だけなんですよ。

留依を頼りにしている

――新メンバーはどんなふうに見えていますか?

玉野 頼りになるよね。翔太は前から一緒にやっているんですけど、一度言えば忘れないし、きちっとやるし、めちゃくちゃ優等生です。だからその優等生がどこまでまたはっちゃけるかっていうのが、今回ちょっと楽しみ(笑)。

――レジェンドメンバーの中にいらっしゃる林さんがイメージしにくいです

玉野 おとなしいよね。

留依 でもすごく楽しそうですよね。

北翔 一番うれしそうにしてる時があります。

玉野 そしたら「あ、翔太が笑った」って感じだよね(笑)。逆にじゃるは「それはやりすぎだな」ってところまでやる人です(笑)。

留依 そしたらみちこさんからNGが出ます(笑)。

玉野 下ネタ禁止だからね!

――(笑)。では北翔さんがNGを出しながらいいバランスで!

北翔 そうです(笑)。

玉野 あーちゃんは頼りになります。『CLUB SEVEN』は実力がないとできないし、実力がある人がどう“ちゃんと”“一生懸命”ふざけるかだから。命削ってじゃないけど、本当にギリギリのところまでやる、そういう良さがある公演ですからね。

北翔 私も頼りにしています。あーちゃんがいないと振りも忘れちゃうくらい(笑)。今までは一緒にやる方を「引っ張らなきゃ」と思っていたんですけど、今回は「ついて行けばいいんだ!」と思っています。

――最後に、みなさんが現時点で発見している今作の素敵なところをお聞かせください

北翔 選べないなあ!

留依 ね!

玉野 (大山)真志はズルいんだもん。

留依 それはずっと玉野さん言ってますよね(笑)。

玉野 まず五十音順の曲は真志に合うのから決めていくからね。

北翔 そして合うものがいっぱいあるんですよね。

玉野 そして(吉野)圭吾は圭吾であるでしょ?(東山)義久と(西村)直人もそれぞれが「これだな」っていうので大体選んでいって、余ったのが俺。

北翔 かわいいキャラ担当ですよね。子供とかアイドルとか。

玉野 なんかそっちのほうになっちゃう(笑)。

北翔 私、みんなでアイドルグループの格好をして本格的な振りをやるっていうのは見せ場かなって思う。

留依 たしかに!

玉野 あーちゃんもブリブリのかわいいやつをね。

留依 そうなんですよね。昨日、初めてその衣裳を着たんですけど、「え、絶対翔太くんのほうが似合ってる」って思いました。私似合ってなくない?みたいな。まあ、よしさん(東山)のほうがよっぽど似合ってなかったんですけど(笑)。

玉野 あははは!

留依 びっくりしちゃって。真志くんはかわいいじゃないですか。

玉野 ぬいぐるみ的なね(笑)。みっちゃんはさ、「これはみっちゃんの役になったな」っていうのができあがったよね。あの役、最初は涼風真世さんがやってたんだよ。かなめさん(涼風のニックネーム)がこれをやったらおもしろいだろうなと思って演じてもらった役なの。それをこうやって受け継いでいくのはおもしろいなって思った。あーちゃんはまだ未知だね。

留依 そうですね。未知ですね。

玉野 でもなんかぐしゃっとなったとこ見たい。まだスッとしてるところがあるけど。

北翔 ただよく泣いてるよね。

留依 ずっと泣くシーンなんですよ。

玉野 でもやっぱ泣くのはみっちゃんじゃないなって思うからさ。

北翔 私は泣かない女なので(笑)。

留依 じゃあ私、泣く女でいきます!音楽・歌唱指導の宗田(梁市)さんに「今回のあーちゃんの課題は儚さだね」って言われました。ミュージカルの役でもちょっと儚いところが見えてほしいって。儚さ、がんばります!

取材・文/中川實穂