東啓介 オフィシャルインタビュー│10年の軌跡を詰め込んだコンサート『Connecting Puzzles v ol.2』開催!

歌う喜びにあふれる東啓介――
「その楽しさを伝播して、皆さんが帰り道、カラオケに直行しちゃうようなコンサートに!」

現在、ミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』に出演中の俳優・東啓介が、10月29日(火)にデビュー10周年の集大成となるソロコンサートを開催。来春上演のブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』チャーリー・プライス役をオーディションで射止め、ミュージカル界新世代のプリンスとしてスターダムを駆けあがる東に、コンサートに懸ける素直な思いを聞いた。

2020年に初めて開催されたソロコンサート「東啓介1st Musical Concert『A NEW ME』」から4年目、4度目のソロコンサートになりますが、どんな変化を感じていますか?

『A NEW ME』の時は、コンサートのやり方から何から、右も左もわからない状態から「コンサートってこういうものだよね」と思うものをやらせていただいた感覚なのですが、そこからいろいろなコンサートを経験し、特に今年の2月に事務所(ワタナベエンターテインメント)の仲間たちとMusical shoW『WE ARE MUSIC』vol.1を開催した際に、「東啓介のコンサートってなんだろうな」ということをより考え始めました。それで、今までやってきたコンサートとは考え方や作り方を変えて、改めて自分の10周年の締めくくりになり、11年目の新たなスタートになるようなコンサートにしようと思いました。
選曲に関しても、ついてきてくださっているファンの皆さんに「この曲を歌ってほしい」と言っていただいたり、インスタライブで歌ったときにこういう曲が楽しんでいただけるんだな、ということを日々感じていることもあり、今までは自分の歌いたい曲を中心に選曲していましたが、挑戦と感謝ということに重きを置いたコンサートになると思っています。
新たな見どころとしては、ダンサーやコーラスの方にも入っていただきます。

『WE ARE MUSIC』でそのように思われたきっかけは具体的にあるのですか?

これまでは一人で戦ってきたみたいな部分がありましたが、『WE ARE MUSIC』で、事務所のミュージカルチームを盛り上げる楽しさはもちろん、何より皆で音楽を盛りあげるというのがすごく良いなと思ったんです。『WE ARE MUSIC』は、3日間のコンサートで、1日目は女性シンガーたち、2日目が僕、3日目は加藤大悟くんが中心となるコンサートでした。その2日目の僕のコンサートを『Connecting Puzzles』と題して開催したのですが、3日間でバラエティに富んだものを作るその流れの中で、自分の色をどのように見せていこうかということを意識的に考えたというのが大きいですね。

「WE ARE MUSIC」”Connecting Puzzles”舞台写真より

『WE ARE MUSIC』のほかにも、『JBBコンサート』(ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』で出会った中川晃教、藤岡正明、東啓介、大山真志によるコンサートシリーズ)等、最近はコンサートへの参加も多かったかと思いますが、そこで得たものがソロコンサートに活かされているようなこともありますか?

そうですね。『JBBコンサート』では、ほとんどミュージカルの楽曲をやっていなくて、邦楽、洋楽の名曲を多く歌っているのですが、それでも、元の作品が好きで来てくださる皆さんにも喜んでいただけるんだという気づきがありました。それで、今まではミュージカル楽曲を中心に歌っていたものを、今回はミュージカル半分、ポップス半分くらいにしてみようかなとか。一方、9月に参加させていただいた『岩谷時子メモリアルコンサート~Forever~vol.5』では、ミュージカル楽曲の素晴らしさも改めて感じて。フルオーケストラだからこそ響く、映える楽曲も多くある中で、僕のコンサートのバンド編成だからこそ、世界が拡げられる楽曲はどの曲なんだろうとか、そういう考え方をするようになりました。

そんな選曲についてお聞きします。今回、過去にご自身が出演したミュージカル『VIOLET』より「Let It Sing」、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』より「Cry for Me」を歌唱予定とのことですが、この2曲を選曲された理由や楽曲への想いを教えていただけますか?

「Let It Sing」は、歌っている自分自身も鼓舞されるし、きっと聴いている皆さんのことも鼓舞できる、そんな楽曲だと思っています。そして何より、歌っていて楽しいし、コンサートでもすごく盛り上がるのではないかと思ったのが決め手でした。ミュージカルというと、朗々と歌い上げる曲が多い印象があるかと思いますが、リズムを感じて、楽しむことがすべてなんだ、というこの曲のテーマを、(作中演じていた)フリックではない“東啓介”としてもお届けできるのではないかと思いました。
「Cry for Me」は、今まで何度か歌わせていただいたことがありますが、一度、ピアノ1本でJAZZっぽくして歌ったんです。それがすごく楽しかったので、今度はコーラスの入った違ったアレンジで、また新しい「Cry for Me」をお届けしたいと思っています。そして『ジャージー・ボーイズ』の劇中、(東が演じた)ボブ・ゴーディオにとっても、この曲でチームに入れると決まった曲で、音楽をつくる楽しさを、ボブとしても感じていた曲です。僕自身も歌っていて、音楽の楽しさを感じられる曲なので今回も選びました。

東さんのレパートリーのひとつとして、深めていきたい思いもありますか?

そうですね。毎回新しい曲に挑戦する良さもあるけれど、「東啓介と言えばこの曲だよね」「この曲が聴きたいよね」と思っていただける曲も探しているところなんです。この曲が色々なアレンジで歌い続けていける、そういう楽曲になったらいいなと思っています。
そして、『VIOLET』のフリックと『ジャージー・ボーイズ』のボブ・ゴーディオは、大切にしている役ということも大きいです。

では、初めて歌われるミュージカル『ウィキッド』の「自由を求めて」はどのように選曲されたのでしょうか?

『ウィキッド』は1年前に初めて観劇したのですが、その際にこの曲にものすごく衝撃を受けたんです。かっこいいなぁと思うと同時に、この曲で1幕が終わったときのお客様のどよめきにも感動しましたが、この曲があるからこそ、『ウィキッド』を観に来てよかった!というのを感じました。それからずっと歌ってみたいと思っていて、女性の歌を自分が歌えるのかという不安もあったのですが、海宝直人さんが男性キーで歌っているのを聴いたときに、とてもかっこいいと思い、ぜひ挑戦したいと。これは単純に自分自身が挑戦したいという強い希望での選曲です。歌ってみたら、この作品が長く上演され続けている所以もより感じられるんじゃないかなと思っています。

その他、まだお楽しみの楽曲も、ミュージカルだけではなくひとえにポップスといっても、様々なジャンルで構成されているなと感じます

今まではこの曲のここが好き、この作品が好き、ということでセットリストを決めていることが多かったのですが、今回は「音楽を楽しむ」をテーマにしました。
自分自身が「挑戦」として楽しむこともありますが、来てくれたお客様に、歌声も音楽のノリも楽しめるもの、ということに重きを置いて選曲していきました。

東さんの歌は、本当に歌うことが好きなんだなという、ご自身の喜びが伝わってくるのが魅力だと感じています。お話を聞いて、それと繋がるテーマだと思いましたが、歌っている時はどんなお気持ちなんでしょうか?

楽しい~~!!って感じです。この曲が歌えるようになったという喜びや、英語の歌詞の曲をしっかり歌えた時には、おこがましいけどブロードウェイの仲間入り、みたいな(笑)。
ミュージカルコンサートというと、かっちり、静かに聴き入って歌声を浴びるといった印象もあるかと思うのですが、お客様も一緒に楽しめるものがあっていいんじゃないかなと思うので、僕の楽しい気持ちを共有し、皆さんに伝播して、帰り道で「カラオケ行きたいな」って思って歌いに行っちゃうような、そんなコンサートにしたいです。

作品の中で歌うとき、コンサートで歌うときの違いや心がけていることはありますか?

それは最近(『DEATH~』の)楽屋でも話題になりました。コンサートでミュージカルの曲を歌うのって難しいよね、って。物語の流れとして気持ちを繋げて歌っているわけではないけれど、やってきた役であれば、歌いながら自然と本番を思い出したり、感情がよみがえったりする部分はあります。ただ、この役のこういうシーンだからこう歌おう、という演技プランはしていなくて、その時のアレンジと自分の歌とのセッション感を楽しんでいますね。作中でもコンサートでも、素晴らしい音楽を届けるということは、変わらない部分だと思っています。

劇中での歌唱というと、現在出演中のミュージカル『DEATH TAKES A HOLIDAY』で歌われているビックナンバー「ロベルトの眼」が、とても印象に残っています。限られた出演シーンの中で、東さんにとっても勝負曲だったかと思いますがいかがですか?

モーリー・イェストンの作品は初めてだったのですが、1曲の中で回想したり、我に返ったりと、ストーリー的にもメロディ的にもいろいろな表情がある楽曲で、今までやってきたものがこの曲に詰まっていると感じています。
物語としての感情の作り方の部分では、戦争の犠牲を描いた『マタ・ハリ』でも経験したことが自分の中でリンクしたり、音楽的には『ダンス オブ ヴァンパイア』や『ザ・ビューティフル・ゲーム』などで学んだクラシックの要素があったり。さらに、『ジャージー・ボーイズ』で得た音楽の捉え方や、『VIOLET』で身に着けたリズムを意識した歌い方など、この1曲の中で、これまでの経験と繋がるいろいろな要素が散りばめられています。なかなかないことなのですが、自分の中で、思うように歌えているなという感覚がありますね。

そういった気づきや出会いを経てのコンサート、また新しい歌声が聴けそうですね。では、ご一緒する音楽監督の深澤恵梨香さんについて、印象や期待をお聞かせください

深澤さんとは、昨年『TOHO MUSICAL LAB.』でご一緒したのですが、作品のテーマも相まって、深澤さんの音楽は「日本オリジナル」という感じがしました。ポップスやアニメソングのようなノリや親しみやすさもありながら、ミュージカルらしさも感じる旋律で。深澤さんも「東くんとまた一緒に何か作りたい」と言ってくださっていて、こうして実現したのが嬉しいです。
そういった流れで、今回音楽監督をお願いし、なんと一緒に新曲も作らせていただくことになりました。僕が作詞を担当し、作曲を深澤さんにお願いしていて、まだ製作途中です。
僕が書いた歌詞は、出会いと別れは一瞬のことだけれど、その一瞬が永遠にもなりうるということ。そして僕自身、若い頃は出会ったものと繋がり続けようとしてこなかったけれど、今はそうじゃない、と思っています。この歌詞は以前から書いていたものだったのですが、それがこのタイミングで一緒に曲を作ることになった深澤さんとの繋がりにもマッチしている気がして、面白い巡りあわせを感じました。どういった曲になるのか楽しみですし、皆さんにも、僕と深澤さんの化学反応を楽しみにしていただきたいです。この新曲づくりを通して、音楽で何かをすることが、僕自身本当に好きなんだなということも実感しました。

『Connecting Puzzles』というタイトルには、自分も作品や世界のひとつのピースであるとともに、自分以外のたくさんのピースを集めて繋げ、その絵を少しずつ大きくしていきたい、という想いが込められていると伺いました。前回のvol.1は、どんな「ピース」になった公演でしたか?

前回は、ピースというよりも、大枠と言いますか、1枚のパズルがあるとして、そのフレームができたという感じでした。こういうことがやりたかったんだ、という第一歩が見えたし、つくることができた公演でしたね。

では今回のvol.2は、どんな「ピース」になるんでしょうか?

実はまだ、今回のコンサートで具体的に何が見つけられるか、想像がついていない部分が大きいんです。パズルの完成形も、いつ完成するかもわからない。まだ探している最中ですね。
ピースをはめていくというよりは、集めている段階なので、チームの皆さんやお客様との出会いで、今回どんなピースが得られるか、僕自身も楽しみにしているところです。

10周年の集大成とのこと。このコンサートを経て、次の10年に向けた夢を聞かせてください

コンサートということでいうと、この先の10年もたくさんの人と音楽の楽しさを共有していきたいので、会場もそうですが、規模やできることを増やしていきたいというのは一歩ずつかなえていくべき夢ですね。

東さんにとってコンサートとは、どういった場なのでしょうか?

MC含めてですが、今は、来てくださる皆様に感謝をお伝えする場所だと思っています。
ミュージカルなどの舞台作品では、僕自身の気持ちを共有したり、お客様との相互交流は難しい部分もあると思っていて。もちろん作品でも、よく「お客様が最後のピース」という言い方をするように、お客様が入って完成するということはあるのですが、そこではできない、東啓介としてのコミュニケーションが、コンサートだとよりできると思っています。コンサートはもちろん、日頃から舞台を観に来てくださることへの感謝や、何か活力を与えられたら幸せだなと思っています。

ここまでの10年で様々な経験をされてきて、歌が好きだということに気づき、ミュージカルという道が定まったと思います。コンサートに限らず、俳優・東啓介としての夢や目標はありますか?

必要とされる役者になりたいです。東だからこの作品をつくりたい、東がやっているなら観に行きたいと、そう思ってもらえる役者になりたいと思っています。それが観客の皆様やミュージカル界、演劇界を豊かにすることに繋がればなお幸せです。
そのためには精進あるのみ!努力とコミュニケーションを怠らないことだと思っています。先ほどお話しした新曲のコンセプトにも繋がりますが、自分ももちろん、東啓介を形成するひとつのピースであって、出会っていく人や作品も大事なピースですし、自分も誰かにとってそうありたいなと思います。これまでの10年で出会ってきたもの、これから出会うもの、すべてのピースを集めて、繋げて、しっかりコミュニケーションをとって血肉にしていきたいです。