作品を愛するカンパニーで駆け抜ける!
さらに進化を続ける人気シリーズ第6弾
自転車ロードレースに青春を燃やす高校生たちの織り成すドラマを描いた「弱虫ペダル」。コミックは累計1200万部を突破し、2013年からアニメもオンエアと破竹の勢いを見せる同作だが、人気に火をつけるきっかけとなったのは、2012年にスタートした舞台版だ。
役者がハンドルのみを持ち、姿勢や動きだけで疾走感を表現する手法〝パズルライドシステム〞や俳優陣の熱演が話題を呼び、一躍ヒットシリーズに。5作目となった「〜箱根学園篇〜野獣覚醒〜」(2014年10月上演)では国内36館+台湾の映画館でライブビューイングも行われ、約2万人という驚異的な動員を記録した。
「(2.5次元的作品では)アニメより舞台が先に上演されるというのは非常に珍しいケース。この〝ペダステ〞が作品人気の起爆剤になったという自負はあります」と語るのは、作品のエグゼクティブプロデューサーである株式会社マーベラスの中山会長。
「ミュージカル『テニスの王子様』」(通称「テニミュ」)などの制作に携わり、2.5次元作品ブームやイケメン俳優ブームを生み出した仕掛け人の一人だ。
中山「舞台化の企画が出たときには、『テニミュ』以上にバーチャルに表現するのが難しいだろうな、という意識はありましたよ。ただ『弱虫ペダル』は主人公のチームだけではなく、敵校チームにも人気があるライバルがいたりと魅力的なキャラクターが多い作品。お客さんの心をつかむ舞台にできるんじゃないかという予感はありました。あとは役者たちが予想外に作品の世界にハマったんです。小野田坂道役の村井良大くんとは『テニミュ』からの付き合いですが〝オタクなのにタフ〞という主人公のキャラにどんぴしゃな演技を見せてくれた。御堂筋 翔役の村田 充くんも強烈な存在感の持ち主で、彼が加わったことで一段と作品のクオリティが上がったと思います」
そして、期待が高まる次回公演の「〜インターハイ篇 The WINNER」は、インターハイ最終日の熱戦が描かれる、これまでの作品をさらに上回るものになるという。
中山「今までも、各登場人物が〝なぜ走っているのか〞が伝わるようにエピソードを掘り下げて描いてきているんですよ。そして、どこかで必ず過去公演とも連続性があるような構成にもなっています。もちろん、原作を読んだことがないお客さんでも必ず楽しめる作品でなくてはならない、というのがうちの考え方。初めて観に来た人にとっても面白くて、これまで観て来た方々は絶対に笑って泣かせる。そんな作品にしたいと考えてます」
過去公演のチケットは発売直後に完売と注目度の高いこの〝ペダステ〞。
「役者たちの汗が見える距離感」にこだわっているため、今回は会場のキャパシティではなく、公演数を過去最大規模に増やしての上演となる。
中山「体力的には実際のロードレースを走るのと同じくらい過酷な舞台なんですが、役者たちがみんなこの作品を愛してるんですよ。それはスタッフも同じで、役者全員で踊る『恋のヒメヒメ☆ぺったんこ』をスタッフさんまで一緒に袖で踊っているくらい(笑)。カンパニーとしてすごくいい状態のまま突っ走ってますので、一人でも多くの方に観ていただきたいです」
インタビュー・文/松田純子
Photo/山本友来
■~インタビューこぼれ話~
実際の自転車を使わずに前傾姿勢や走ったりという動きで疾走感を演出する“ペダステ”は、まさに過酷な体力勝負の世界。楽屋には酸素ボンベや酸素カプセルまで用意されているのだとか。
中山「公演の打ち上げが一次会ですんなり終わるくらい、毎回役者たちがみんなヘトヘトになっちゃうんですよ。でも、誰も手を抜かないんです。これまで登場してもらった役者たちは、原作のキャラクターが再現できるビジュアルや演技力の持ち主であることはもちろんですが、過去の出演作品などで『“ペダステ”を演じきるスタミナがあるかどうか』も考慮してキャスティングしてきました。金城真護役の郷本直也くんや福富寿一役の滝川英治くんとは付き合いは長いんですが、年齢を考えると正直心配でしたよ(笑)。でも滝川くんなんて、むしろ今のキャストの中でもいちばん燃えているかもしれない。あとは次回作の主人公の坂道(村井)はもちろん、彼と一騎打ちをすることになる真波山岳役の植田圭輔くんも、相当に気合いを入れて臨んでくると思います。楽しみにしていてください」
【プロフィール】
中山晴喜
■ナカヤマ ハルキ ゲームや音楽・映像事業など多彩なコンテンツを展開する株式会社マーベラス代表取締役会長CEO。「ミュージカル『テニスの王子様』」などのエグゼクティブプロデューサーであり、「一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会」の理事も務めている。