『十二夜』 音月 桂 インタビュー

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絡まった片想いの糸はほどけるのか?

シェイクスピア屈指の恋愛喜劇

 

宝塚歌劇団退団から2年余り。現在は女優として活躍している音月 桂が、「初めてに近い経験」と自ら語る本格的なストレートプレイに取り組む。作品はシェイクスピアの「十二夜」。日本でも幾度となく上演されている傑作恋愛喜劇のひとつだ。

音月「実は、私が雪組トップスターになったときの大劇場お披露目公演が、ミュージカル『ロミオとジュリエット』だったんです。でも今回の『十二夜』は、同じシェイクスピアが書いたとは思えないほど対照的な恋愛喜劇(笑)。演じる私自身も楽しみながら舞台に立てるんじゃないかと今からワクワクしています!」

 

物語は双子の兄妹セバスチャンとヴァイオラの乗った船が遭難し、ヴァイオラがイリリアの海岸に打ち上げられたところから始まる。兄は死んだと絶望するヴァイオラは、護身のために男装してシザーリオと名乗り、オーシーノ公爵に小姓として仕えることに。やがて彼女はオーシーノに密かに思いを寄せるようになる。そのオーシーノは伯爵家の娘オリヴィアにご執心。だがそのオリヴィアは、なんとシザーリオ(ヴァイオラ)に心を奪われる。絡み合う片想いの糸。そんななか、兄セバスチャンが姿を現し……。

音月「それぞれの気持ちの矢印が全然違う方角に向かっているんですよね(笑)。ただ、400年以上も前に書かれた作品なのにいまだに物語に引き込まれてしまうのは、どんどんデジタル化される現代にあっても、私たち人間の恋愛の形やそこから生まれる感情は、昔とさほど変わっていないということなのでしょうね。きっと、お客様にもご自身の経験をふと思い出しながら観ていただける作品だと思います」

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音月はセバスチャンとヴァイオラの2役を演じる。言うまでもなくセバスチャンは男役、ヴァイオラも男装してシザーリオとなる。宝塚の元トップスターの強みや魅力がこの舞台でも発揮されそうだ。

音月「私のなかでは2.5役という感覚に近いのかな。男役や男装については、すでに約17年間やってきて、ようやく今、女性に戻れたと思っていたんですけどね(笑)。でも、女優として活動しはじめて2年ほど。気付かないうちに自分のなかでも何か変化が起きているはずなんです。ちょっと客観的になったうえで役に入り込めるので、宝塚時代とはまた違う面をお見せできたら。そもそも、役を“演じる”のではなく“生きる”という私のこれまでの信条も変わってくるかもしれません。シェイクスピア作品は、例えばセリフ回しなど、型を踏まえる必要もあると思いますから」

 

演出はイギリスのロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)名誉アソシエイト・ディレクターも務めるジョン・ケアード。日本で上演されたシェイクスピア作品では「夏の夜の夢」も手がけている。

音月「初めてご一緒するんですが、ユーモアがあって本当に温かい方です。スチール撮影のときから、気持ちの作り方、目の奥の力の入れ方などをアドバイスしてくださって。共演者の方々も経験豊富な方ばかり。宝塚時代は、作品も、それから組自体も『自分が引っ張らなきゃ』という勝手な気負いがあったけれど、みなさんの力をお借りしながら、真っ白な気持ちで作品と向き合っていきたいです」

 

インタビュー・文/大高由子

Photo/関口達朗

 

 

【プロフィール】

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音月 桂

■オトヅキ ケイ 宝塚歌劇団雪組トップスターとして、「ロミオとジュリエット」「ハウ・トゥー・サクシード」「JIN-仁-」などに出演。’12年退団後も、ミュージカル「ブラック メリーポピンズ」、映画「想いのこし」など幅広く活躍している。