人気サスペンスコメディがパワーアップ
ひと筋縄ではいかない奴らが帰って来る!
中井貴一がプロデュースを手がけ、古沢良太の脚本、行定 勲の演出により、2013年に初演された「趣味の部屋」。ひと筋縄ではいかない登場人物たち、先が読めない展開が大評判となった舞台が帰って来る! この作品の発案者でもある中井は、「観たことのないオリジナル・ミステリーをつくりたかった」と語る。
中井「いろいろな舞台が上演されるなか、日本発の面白いミステリーがあまりないなと思っていた矢先、古沢さんが脚本を書かれたドラマを見て。伏線の張り方の巧さに感動して、すぐに会いに行きました(笑)。今回は再演とはいえ、古沢さんが脚本に手を入れてくださるので、新たな『趣味の部屋』をつくる気持ちですね」
5人の男たちが趣味のために借りた、とある部屋。古書収集家にガンダムオタクなど、おのおのが趣味に興じるなか、仲間のひとりの失踪を機に、彼らの間に疑いといさかいが生まれていく……。中井が演じる天野は、料理好きの内科医。多趣味という役柄でもある。ちなみに、中井自身の趣味とは?
中井「実は、僕には趣味がないんですよ。『仕事が趣味?』とよく聞かれますが、仕事は仕事で趣味じゃない(笑)。だから『趣味を持ってみよう!』と思ったりもするけれど、そうやって持つものではなくて、無意識に楽しくてハマっていくものでしょう? だから、そのときが来るのを待っていようかなと」
そんな中井には、趣味に没頭する男たちを描いた作品を通して、気付いたことがあるという。
中井「天野も他の登場人物たちもそれぞれに趣味を持ちながら、“趣味の部屋”に集まってくるんですね。そう考えると、人間にとって集まることがいちばんの趣味であり、人にコレクションを見せたり、講釈したりする場があってこその趣味なのかなと。古沢さんが書かれた脚本には、趣味に対する洞察も込められている気がします」
常に温厚で周囲に気を配る天野が、やがて見せる“別の顔”にも注目だ。
中井「「天野は二面性を持っていますが、僕ら俳優の仕事自体が、人を裏切ることの繰り返しのような気がするんですよ。そして、この舞台はワンシーンのなかで観ている人を裏切るのがコンセプトでもある。観終えた後に『あれはどういうこと?』と思って、想像をめぐらせながらおしゃべりしてもらえれば、それで忘れ去られてもいいと思うんです。僕は20代後半で初めて舞台をやらせてもらったとき、舞台は“お客様と一体になってつくるもの”だと体感したんですね。それならお客様を増やすことが日本の演劇を面白くすることにつながるはずで、“舞台は楽しい”と感じてもらえるきっかけをつくろうと思いました。この作品が、そのひとつになればうれしいです」
インタビュー・文/宇田夏苗
Photo/高井正彦
構成/月刊ローソンチケット編集部
【プロフィール】
■中井貴一(ナカイ キイチ)
’61年、東京都出身。近年の主な出演作はテレビドラマ「続・最後から二番目の恋」、映画「アゲイン 28年目の甲子園」、舞台「カーディガン」など。現在OA中の「サラメシ」のナレーションなどでも活躍。