銀河劇場に荒野の風が吹き荒れる!!
イケテツ版ウェスタン・アクション・コメディ『GO WEST』
――時は西部開拓時代。アメリカ大陸を横断する鉄道がまもなく完成を迎えようとしていた頃。新たな時代の流れに乗りきれず、旅から旅へ各地を渡り歩いていた元ウエスタンショーの芸人一座は、悪党一味から逃れてきたワケありの少女に出会い、大騒動に巻き込まれていく…。
俳優活動のみならず脚本・演出でも注目を集めている池田鉄洋が描く新作舞台は、近年では珍しい“西部劇”だ。
池田「和風テイストにアレンジした西部劇は日本にも結構あるんです。でも王道の西部劇は最近見掛けない。ということは、相当難しいジャンルなんだと思いまして。でもだからこそやりがいがあるんじゃないかなと。こんな無謀な企画には誰も集まってくれないのではないかと思っていましたが、田口浩正さんがやってみたいなと仰って下さった。挑戦していく試みを買って下さったのか色々なところからキャストが集まって、ベストメンバーが揃いました」
ウエスタン・ストーリーならではのガンアクションが豊富に盛り込まれ、個性豊かなキャスト陣が演じる登場キャラクターは「ウエスタンショーの芸人」「ならず者」「アル中のバウンティハンター」「馬(!)」といった“クセ者”揃い。
そこに池田鉄洋ならではの人間ドラマと軽快なセリフの応酬が加わるとくれば、期待値は高まるばかり。
作・演出・出演を担う池田鉄洋と、本作が初主演舞台となる渡部秀も、この冒険活劇が「とんでもなく面白くなる」ことを確信している。
池田「何回か経験がありますけど、とんでもなく面白い座組になる予感が感じられています。これを大事に持っていけば傑作になるのではないかと思っています。私も初めましての方が多いですし、渡部秀くんも初めて共演する方ばかりだと思いますが、『なんか楽しいクラスになったね』というか(笑)。このキャスティングはかなりの掛け算になる気がしています」
渡部「脚本の第一稿を読ませて頂いたのですが、笑わないページがないくらい笑いました。どう表現するんだろうって思うことばかりですが(笑)。始まる前からこんなに楽しみな作品は初めてです」
渡部が演じるのは、元ウエスタンショーの芸人「モンキー」役。銃の腕は確かだが過去にトラウマを持つヘタレで、鉄道オタク。
渡部「本格的な役作りはこれからですけど、歴史を勉強したりとか、その時代に生きている人の知識は持っておきたいなと思っています。あとは僕自身も収集好きなところがあるので、モンキーの気持ちは分かるというか。男の子ってそういうところありますよね?」
池田「鉄道に関しては、当時はやっぱり胸躍ったんじゃないかと思いますね。絶対カッコ良く見えていたと思う」
渡部「蒸気機関車、スゲー!って(笑)。僕もこだわり始めたら止まらないタイプで、ひとつ見つけるとそれに夢中になって周りが見えなくなってしまうんです」
池田「そういうのもカワイイですよね。“男子”って感じ。脚本が出来てからのキャスティングなのでアテ書きはしていないのですが、モンキー役は本当にピッタリ。もう“やった!”と思っています」
渡部「本当ですか!? 僕、猿っぽいってことですかね?」
池田「いやいや、猿っぽいわけではないかな(笑)」
渡部「コメディはセンスが問われると思っているんですけど…今考えているのは、僕は変に考えず真面目にやろうと。純粋で真面目にバカをやる人って面白かったりするのかなと思っています」
池田「笑いをやるとはもちろん思っていますが、どちらかというと若い男の子たちがバカな話をしているのを端から見ていて“あいつらしゃーないな”と思っている、あの感じを出したいんですよ。私もなかなかその輪には入っていけなくて…以前、映画で『行け!男子高校演劇部』という作品をやらせて頂いた時、若い子たちがワーッとやっているんだけど、おじさんが入っていくと急に静かになるっていう…」
渡部「(笑)」
池田「俺はもう入っていけねーんだな、と思って(笑)。若い頃は自分もやっていたんでしょうけどね。そのある種の貴重な楽しさというか、そのぐらいのテンポを考えています。だから、笑いをやるんだと気負わなくて全然いいですよ」
渡部の舞台出演は『里見八犬伝』(2012年)、『真田十勇士』(2013年、2015年)に続き3作目。舞台初主演として“座長”のイメージを聞いた。
渡部「有り難いことにこれまで大きな舞台に出させて頂いて、そこに立つ座長とはどういうものなのかというのは先輩方を見て来ているんですけど、実際に自分は出来るのかなという不安はあります。イメージとしてはカーテンコールの時の“三方礼(右・左・中央の客に順に礼をすること)”のイメージがすごくあって。右手上げて左手上げて、ん? 順番どっちだ? となりそうだなとか、始まる前の掛け声どうしようとか、今から考えてしまっています(笑)。楽しい悩みではありますけど」
池田「確かに銀河劇場は三方礼をしたくなる舞台だよね。面白いなあ、まさか三方礼から入ってくるとは(笑)。お会いするのは本日2度目なんですけど、ますます秀くんの魅力というか、まだまだ吸収出来るまっさらなスポンジ感を感じて、この作品の可能性が広がったと思いましたね。秀くんから貴重な蔵書もお貸し頂いたんですよ。手塚治虫先生の作品がすごくお好きだそうで、西部劇のお話があるんですよって言って」
渡部「おこがましいですけど(苦笑)。僕なりの考え方なのですが、舞台に関わらず作品を作る上で“会話すること”がすごく大事だなと思っていて。今まで主役としてやらせて頂いた作品でも、一瞬だけ来て下さったゲストの方とも必ず会話をするようにしていたんです。そこから何か生まれる場合もありますし、お芝居では見せないその方の表情を知ると安心出来る。人によるかもしれないですけど、今回もしっかり色んな人と話をしていきたいです」
池田「この年齢で、人と会話をして作っていきたいという気持ちを持っているのはとても貴重だと思います。思っていても出来ない人が多いですし。座長としての素質はバッチリ! このカンパニーは大丈夫ですよ。勝ち戦になりそうだなという予感がします。そのためには脚本・演出家として私も成長しなければいけないと思っています」
池田鉄洋が過去2回プロデュースした公演は、千秋楽には立ち見を出す程の大盛況となった。今回の公演も「貴重なチケットになる」と断言する。
池田「最近の傾向として、舞台は評判を聞くまで様子見するという方が多いと思うんですけど、今回は初日から安心して観に来て頂きたいですね。とんでもない公演にしますので、大いなる冒険を観に来て下さい!」
渡部「こうして池田さんとお話してさらに確信を持てたというか、来ないと損します! というくらい自信を持てましたし、今まで以上に役者として燃えている作品です。初主演舞台としても悔いのないように、千秋楽では燃え尽きて倒れるくらいの勢いで臨みたいと思っています。ぜひぜひ観に来て下さい!」
池田「初日の三方礼の時に、全方向にお客様がいらっしゃるといいね」
渡部「はい!!」
取材・文:片桐ユウ
【プロフィール】
池田鉄洋
■イケダ テツヒロ ’70年、東京都出身。俳優、演出家、脚本家。「表現・さわやか」主宰。『TRICK』『医龍』などのTVドラマ出演で注目を集める。映画『行け!男子高校演劇部』、ドラマ『家族八景』の脚本、舞台『バブー・オブ・ザ・ベイビー』『BACK STAGE』作・演出などクリエイターとしても活躍を広げている。
渡部秀
■ワタナベ シュウ ’91年、秋田県出身。第21回『ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト』で準グランプリ受賞。『仮面ライダーオーズ/OOO』でTVドラマ初主演。連続テレビ小説『純と愛』、ドラマ「救命病棟24時」、映画『進撃の巨人』(2015年8月1日公開)、舞台『真田十勇士』など幅広く活躍している。