演劇集団キャラメルボックス『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』作・演出の成井豊、原田樹里、畑中智行 インタビュー

 

劇団結成30周年 演劇集団キャラメルボックスのアニバーサリー公演第2弾『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』が遂に開幕!作・演出の成井豊、主人公ほしみを演じる原田樹里、その叔父・鉄平を演じる畑中智行に話を聞いた。

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-今回『カレッジ・オブ・ザ ・ウィンド』を再演する理由とは?

成井:「30周年だから」ですね。こんなに苦しんだ作品はない。自分の中では大事というか忘れられない作品です。

 

-前回の公演から8年空きましたが。

成井:キャスティングですよね。前回のキャスティングに勝てなければやる意味がない。今、このキャストでやれば前回までの『カレッジ〜』に勝てると思いました。

 

-出演することになったお気持ちは?

原田:私は昔からこの役をやりたかったんです。劇団のオーディションを受けた時も「いつか絶対この役をやりたい」という思いで受けたので。

畑中:僕は2000年に入団したんですけど、その時に初めて関わった作品がこの『カレッジ〜』の再演でした。その後の再々演も出演しています。今回の鉄平役もとても楽しみです。

 

-この作品の魅力とは

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原田:私は、ほしみにとても共感していて、それと同時にあこがれもあります。ほしみのように強くやさしく生きられないけど、こんな風に生きたいと思います。そんなほしみの魅力に惹かれていますね。

専門学校の1年の時にはじめてキャラメルボックスの『トリツカレ男』という作品を見て、その時にキャラメルボックスに入りたいと思ったんです。その時キャラメルボックス好きの友達がいて「これ見たほうがいいよ」って2000年版『カレッジ〜』のDVDを貸してくれたんです。それを見て、一人で夜中に号泣しましたね。うちの家族も6人家族で仲は良いんですけど、なんかみんな不器用でうまく人間関係を築けないんです。すごく共通する部分があって、うちの家族とそっくりで。運命みたいなものを感じて「この役をやらなくては」と思ってしまいました。18才の時ですね。

 

−それが叶うってすごいですね。

原田:毎年成井さんと面談があるんですけど「なんかやりたい役あるの?」って成井さんに聞かれて、まだ入団一年目なのに「ほしみがやりたいです」って言ったんですよ(笑)。

成井:よく言ったよね(笑)。

原田:ですよね。今考えたら絶対に言えないです。でもその時は「自分の思いは伝えなきゃ」と思って。でも成井さん、それ忘れてたんですよね。

成井:そう忘れてた。そんなもんだよ、意外と(笑)。

 

-畑中さんはどういうところに魅力を感じていますか?

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畑中:僕はキャラメルボックスの作品で家族ものがすごく好きなんですよ。『カレッジ〜』は劇団の名刺代わりになる代表的な作品ですね。前から好きな方も、初めて見る方にも受け入れられる、万人に喜んでいただける作品だと思ってます。どなたにでも薦められますね。

 

-成井さんは今回ベストキャスティングだとおっしゃいましたが、二人に期待するところは?

成井:原田は普段馬鹿みたいなんですけど(笑)。意外とこう見えて達者な役者で、どんな役でも対応できる幅があるんです。それだけに彼女の苦戦している姿を見たことがない。もちろん本人の内側は分からないんだけど、稽古場ではのびのびして見えるんですよ。でもさすがにほしみをやるのは大変なので、特に初日が開けてからが大変なんじゃないかなと思ってます。20ステージ以上ありますから、これをやり続けるのは大変です。主役を何ステージもやる大変さは、畑中の方が知っていると思うけど。

畑中:(主役を演じていると)やりたいことがどんどんできなくなっていくんですよ。体力も心もどんどん疲れていくので。そのなかでクオリティを保っていくのは大変ですね。稽古場の方が元気ですよ(笑)。

成井:ほしみは本当に大変な役なんです。それを原田がやり遂げてくれたら一皮剥けるんじゃないかと思っています。

原田:(笑)

成井:(畑中に対しては)稽古していくうちに「(鉄平は)こう演じて欲しい」という事があまりにもはっきりしてきていて。それを畑中がやるのはすごく大変だと思います。でもそれは畑中の本質とそう遠くないと感じています。普段の畑中と舞台上の(演じている)畑中がいますよね。この役は、舞台上の畑中では決して出来ない、もっと普段の畑中に近いと思っています。どう?

畑中:そのとおりですね。

成井:だから普段舞台上では出してこないものを出さないと、この役のリアリティはつかめないんじゃないかな。

 

−それは役者としては難しいですか?

畑中:舞台では饒舌で普段は暗い人ってよくいるじゃないですか。僕も結構そうなんです。人の輪に入っていけなかったり。一人でいるのが好きだったり。家に早く帰りたかったり。

成井:これでも良くなったんですよ。

畑中:病気みたいに言わないでください(笑)。でも舞台に上がると成井さんが明るい役を振ってくれることが多いんです。だから、よく「明るくてさわやかで、アウトドアがきっと好きなんですよね」って言われるんですけど、そんなこと全然ないんですよ、普段の僕は(笑)。舞台に上がるとスイッチを入れるんですけど。そこでどう自分らしさを出していくかを試行錯誤しているところですね。

成井:端的に言うと他人と上手に生きられない不器用さなんですよね。僕もそうなんだけど、それをそのまま見せてもお客さんには楽しんでもらえないだろうと思っているんです。だからエンターテイナーになろうとスイッチを入れるんだけど、やっぱり役者って長く続けていくと、自分丸ごと見せていかないといけないと思うんです。

 

-演出的に8年ぶりなので変わったことは

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成井:まずダンスを復活させました。それが当初よりパフォーマンスに近いというかただ単に踊るというよりも1分半のコミカルなホラー。この話は幽霊ものですから。でもコミカル。これは過去やってなかったことですね。あとは、客演に非常に実力があるお二人(福本伸一、西牟田恵)をお招きしてます。やっぱり実力が素晴らしいので、我々が過去三回やってきて気づかないことをいろいろと指摘してくれるんです。それで昨日も台詞が増えたんですけど、「過去20年なんで気づかなかったんだろう」って思いますよね。この作品では、家族のリアリティって本当に大事なんです。初演の頃は、僕でさえ三十代前半だったから、キャストは全員二十代だったんですよ。でも今はほぼ実年齢でできるようになって。だからこそお父さんお母さんも実年齢に近い、実力のある人に来てもらって本当の家族のリアリティを出したいと思いました。さらに、僕たちの「『カレッジ〜』とはこうあるべきだ」という概念を壊してくれる。非常にありがたいです。

 

≪公演概要≫

■キャラメルボックス30th vol.2『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』
≪ストーリー≫
8月、大学生の高梨ほしみは、家族6人でキャンプに出かける。それは、年に一度の家族の行事。
ところが、キャンプ場に向かう途中で、事故が起こり、家族全員を失ってしまう。
ほしみだけは軽傷で済んだが、直ちに病院へ運ばれる。
すると、亡くなったはずの家族もついてくる。その姿は、ほしみにしか見えない。
なぜなら、彼らは幽霊だから。バラバラだった家族が、ほしみを見守ることで一つになる。
しかし、いつかは別れなければならない。
ほしみが家族と過ごす、最後の夏……。

脚本・演出:成井 豊
メインテーマ:小田和正「風のように」

出演:
原田樹里、畑中智行、渡邊安理、多田直人、真柴あずき、大森美紀子
筒井俊作、林 貴子、森めぐみ、小林春世、木村玲衣、関根翔太

福本伸一(ラッパ屋)、西牟田恵

■東京公演

公演期間:2015/5/30(土) ~ 2015/6/14(日)
会場:サンシャイン劇場