30周年を迎える「おすましでSHOW」小堺一機インタビュー

 

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失敗さえも“アリ”、だから面白い。

30周年を迎える「おすましでSHOW」

 

 

思えば、小堺一機は長寿番組に携わることが多い人だ。『ライオンのごきげんよう』は前身となる『ライオンのいただきます』から31年を数え、いまも放映中。関根勤とともにパーソナリティを務めたラジオ『コサキン』シリーズは27年半続いた。そして、舞台では1985年からはじまったシリーズ『小堺クンのおすましでSHOW』が今年で30回を迎える−−。

 

「まあ、あんま仰々しいのも恥ずかしいので、大げさに『30回です! ありがとう!』みたいな感じではなく、いつも通りにやりたいと思います」

毎年、松尾伴内やあさりど(堀口文宏、川本成)、伽代子ら、勝手知ったる常連メンバーとともにコメディを繰り広げる。とくに松尾との即興コントは毎回爆笑の起こる人気コーナーだ。

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「もう長年やってると、『松尾くんならこうくるかな?』と想定するものなんですよ。それがだいたい5パターンくらいは思いつく。でもいざ稽古をしてみると、全然違う。6番目、7番目のパターンがかえってくるんですよ。毎回『そうくるか!』と思う瞬間があるのが面白い」

 

松尾とのシーンに限らず、毎年、毎公演違いがあるのが舞台の何よりの魅力だという。

 

「30年やってきても、本番で何がウケるかって幕が開いてみないとわからない。こっちがプレゼンしたいことよりも、やってみると違う部分で笑いが起こったりするんです。コメディというものは、最後はお客さんが仕上げてくれるものなんですね」

 

だからこそ、稽古を重ねながらも、きっちり決め込まないことを大切にしているのだとか。

 

「あんまり完成品をつくってしまわないように、というのはありますね。最初に萩本(欽一)さんにそう教わってしまったのでね(笑)。もちろん役者さんのなかにはしっかり稽古したとおりにしないと心配というかたもいらっしゃるんですが、僕はそのへんいい加減なので、『どうなってもいいよ』っていう。その日のお客さんの感じで声の出し方なんかを変えたりもするんです。年配のかたが多い日、女性が多い日……。エンジンはかけておくけれども、あんまり最初からギアは入れずにおくというかね」

 

その小堺の考えをキャストのみならずスタッフも全員が共有しているからこそ、自由で面白い舞台ができあがる。もちろんその関係性は一朝一夕にできるものではない。ハプニングも重ねてきた。

 

「もともと、『おすまし』に関わっているのはそんなにバラエティをやっているスタッフじゃなかったんですよ。まだはじまったばかりの頃、バブル景気で、映像を映すモニターと演者の動きが連動するという演出が流行ったことがあった。ダンスをしながらモニターの後ろ側に入ると、さもモニターのなかに入り込んだかのように画面に顔が映る。そんなのをやったことがあるんですよ。そしたら一度、本番でコンセントが抜けてしまっていたことがあった。僕らもわからないし、お客さんもそういう演出だと思ってる。舞台監督は大失態だから真っ青になって舞台袖でバタバタしてるんです。僕、気になっちゃって、本番中に聞きに行ったわけ。そしたらコンセントが抜けてたっていう。そのときに『他の舞台では失敗かもしれないけれど、僕はこういうこともうれしいので、何があったかだけ教えてくれればいい。そしたら僕はそれで遊びますから』って伝えたんです。バラエティの人間って、失敗はおいしいんですよ」

 

そんなスタッフもキャストも、いまや失敗さえも楽しんで乗り越えるようになった。強心臓揃いのチームだ。

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「キャスト、スタッフとの関係性は、30回やってきたことのひとつの財産だと思います。形容詞が一致するというかね。きっかけの言葉を言わずに勝手にコントをはじめても照明さんがスポットライトを当ててくれるんですもん。逆にふつうにやっていると『今年真面目ですね』なんて言われるから、『じゃあ(好き勝手やって)いいのね?』なんてこっちも奮い立つところがありますね」

 

これまでのハプニングを実に楽しそうに語る小堺。一方で大変だったことや苦労したことといったエピソードはほとんど出てこない。

 

「『いいね、楽しそうで、ラクでさあ』と言われるのがいちばんいいんですよ。大変ですね、って言われたらダメなんです、コメディアンは。だから僕、メイキングとか好きじゃないんだ。がんばってるのは当たり前なんですからね。堺(正章)さんなんかはメイキングでもボケてみせたりして、カッコイイんだよね。頼まれてやっているわけでもない公演で、真剣に辛そうにやっている人を見ると、腹がたったりします。僕らはやりたいからやってるんですから。それでお客さんに来ていただいているんだから。『バカだねー』なんて言われるのがいちばんうれしいんですよ」

 

小堺は30年という驚異的な歴史に対しても決して自慢げに語ることなく、これから迎える30周年に対する気負いも見せない。「毎回これが最後だと思ってやってますから。積立みたいなもんで、1回1回が気づけば30回になっていただけ」と飄々と語る。

 

「関根さんともよく、『辞めどきはいつなんだろうね?』なんて冗談っぽく話すんです。すると関根さんは『お客さんが来なくなったら辞めればいいんじゃないの』って……。もしかしたら、足元ばっかり見てるのかなあ? よくいうでしょ、富士山でも頂上ばかり見ていたら、見えているのになかなか着かなくてきつくなっちゃうって。でも足元を見てたら、意外と歩き続けられちゃう。毎日その日のことだけを考えているんですよ」

 

そして小堺は今年も舞台に立ち、笑いを巻き起こす。まだまだ辞めどきは見えそうにない。

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インタビュー・文 釣木文恵

 

【公演概要】

小堺クンのおすましでSHOW 30

◆ACT1~THE 30 STEPS~
30回目の“おすまし”は「30」にまつわる「ショートストーリー」のオンパレード!
「30年目の夫婦」「30回目のプロポーズ」「30年前から来た男」
「30回目のファーストキス」「ゴルゴ30」・・・ and more
メンバー大忙しでお送りする、体力勝負?のコメディタイム!

◆ACT2
「おすましTHE 30 STEPS トーク&ライブ」

公演日:2015/8/28(金)~9/6(日)
会場:東京グローブ座
席種・料金:S席-7,300円 A席-6,200円
【構成・演出】小堺一機
【脚 本】舘川範雄
【構成補】小山協子

【出演】小堺一機/松尾伴内/川本 成(あさりど )/堀口文宏 (あさりど )
伽代子 (欽ちゃん劇団 )/大澤 恵/大野朱美
【演奏】園山光博(Band master & Sax)/鎌田 清(Dr)/渡辺 茂(B)
末原康志(G) /寺田正彦(Key) /栗山豊二 (Per)