「“守り”に入るより“攻め”に向かう」
全力で作品に挑み続ける名優・市村正親
40年以上にわたって日本演劇界の第一線に立ち、ミュージカルとストレートプレイの双方で多くの観客を魅了してきた市村正親。今年も、毛色の異なる4本の舞台に出演。そのエネルギーは衰えるどころか、ますますみなぎっている。
そんな市村が、今年3本目の舞台として、この秋、17年ぶりに復活を遂げる「NINAGAWA・マクベス」で主演を務める。蜷川幸雄とはこれまでに、「ハムレット」「ペリクリーズ」「リチャード三世」で現場を共にしている市村。だが、今回のオファーはとりわけうれしかったと語る。
市村「次はマクベスをという気持ちはあったものの、僕にやれるわけがないとも思っていたんです。だからお話をいただいたときは、『神様は分かっていらっしゃる!』と(笑)。『NINAGAWA・マクベス』であることに、『マクベス』以上の喜びを感じます。だって伝説の舞台ですよ! 稽古場での蜷川さんは、いわば〝大きな花〞。そんな蜷川さんの瞳を輝かせるように、でも、あくまで気負わず、役に取り組んでいきたいです」
1980年に初演された同作は、時代を安土桃山に移し替え、仏壇を模したセットや桜を印象的に用いるなど、蜷川が日本的な要素を盛り込んだ初めての作品だとも言われている。そのアプローチは、海外公演でも高い評価を受けた。
市村「まず美しさ。そしてシェイクスピアの世界を、日本人である我々に近付け、人間の話として理解させようとする蜷川さんの発想のすごさ。この舞台をシェイクスピアにも観せたいくらいです(笑)。劇中で描かれる戦争、殺人、裏切り……。観客の方には、それらがいかにダメなことか、今の日本の危ない状況にも思いを馳せながら、ご覧いただけたらうれしいですね。人間は同じ過ちを繰り返す動物だということを肝に銘じて」
役づくりのポイントは、「意外性より、人間らしさ」なのだという。
市村「普通、マクベスというと〝悪〞のイメージが強いけれど、蜷川版のマクベスはすべての感情を持っていて、僕はそこから彼のいじらしさや切なさを感じるんです。『王になる』という魔女の予言を機に、自己矛盾や葛藤を抱きながら、許されない行動を繰り返し、悲劇へと突き進んでいく。そんな人間らしいマクベスを演じられたら、蜷川さんもじっと見守っていてくれそうです」
ハードな舞台。それでも、「〝守り〞に入るよりは 〝攻め〞に向かいたい。なぜなら、お客さまは激しい人生を観るために劇場にいらしているのだから」という言葉が胸に響く。「NINAGAWA~」の後には、すぐに「スクルージ」の再演が待っている。
市村「客席にはお子さまも多いんですよ。僕が演じるスクルージという、ちょっと意地になって生きているおじいちゃん、つまり人生の大先輩が、クリスマス・イブのある出来事から人生を見つめ直していく姿が描かれるんですが、それをじっと見つめてくれているような空気を感じます。ここは裏切りたくない。だから、人間の善悪すべてを表現しなければという気概で舞台に立っています」「身体に無理なく、ギリギリのところで頑張るよ」と笑いつつ、名優は今日も全力で作品と向き合う。
インタビュー・文/大高由子
構成/月刊ローソンチケット編集部 8月15日号より転載
【プロフィール】
市村正親
■イチムラ マサチカ 劇団四季退団後もミュージカル、ストレートプレイに多数出演する一方で、映像作品、ナレーションなどでも活躍。最近の舞台に「それからのブンとフン」「ラブ・ネバー・ダイ」「ミス・サイゴン」「モーツァルト!」「ラ・カージュ・オ・フォール」「ART」などがある。
【公演情報】
NINAGAWA・マクベス
公演日程・会場: 9/7[月]~10/3[土] Bunkamuraシアターコクーン
料金: S席¥13,500 A席¥9,500
Lコード:37080
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ミュージカル『スクルージ』~クリスマス・キャロル~
公演日程・会場:12/4[金]~15[火] 赤坂ACTシアター
料金:SS席¥12,800 S席おとな¥9,800 S席こども(3~18歳)¥6,800 A席¥3,200
★ただいま先着先行受付中♪ 受付期間:8/14[[金]]12:00~9/10[木]23:59
≫ミュージカル『スクルージ』~クリスマス・キャロル~ 特設ページはこちら