寺山修司の戯曲を「維新派」の松本雄吉が演出した舞台「レミング 〜世界の涯まで連れてって〜」。2年前に大好評を博した話題の舞台が、東京芸術劇場に場所を移して年末に帰ってくる! 都市を舞台に、個性的な人々のちょっと奇妙な事件の断片が錯綜するこの作品で、初演では八嶋智人、片桐 仁が演じたコック役に、溝端淳平、柄本時生が挑戦する。
松本「今回は“青春像”を描きたいなと思っているんです。初演時には、稽古場で俳優陣と芝居を作っていくなかで、気がついたことがたくさんあった。それだけ奥深い作品やし、舞台美術を重視する点でもっと広い劇場でやってみたいという希望もあったから、今回の再演は僕もうれしいです。チャレンジするつもりで、また作品の新しい一面を見せたいと思っている。ぜひ若い人に観に来てほしい」
こう意気込みを語る松本の隣で、目を輝かせていた溝端と柄本。演劇人にとって、寺山作品に参加することは特別な意味を持つようだ。
溝端「寺山さんの作品は、俳優にとって大きな壁でもあり、憧れでもあるんです。僕にとっても寺山作品に出ることはずっと夢でした。寺山さんの脚本を松本さんが演出する作品に参加できるだなんて、僕にとってこれ以上なく高い壁になる予感がしています。自分を追い込みつつ、他のどこでも経験できないことを楽しんでやろうと思っています」
柄本「寺山さんの作品は、この仕事をしている者にとっては夢みたいなもので。ずっとチャンスがあればぜひやってみたいと思っていたからすごくうれしい。戯曲を読んでみてもよくわからないし、わかったことはないんですけど、でもそこがすごく好きで。役者の想像力をかきたてられるんです。寺山さんが生きていたら、僕の芝居を見て「違う! 俺はもっと戦っていたんだ!」なんて怒られるかも(笑)」
寺山作品というと、“難解”というイメージを持つ人も多いかもしれない。が、3人は口を揃えて「わからないところが面白い」と言う。
柄本「寺山さんの作品って、すごく新しいと僕は思うんですよ。現代よりももっとずっと先に行ってる」
溝端「ひとつひとつのセリフがとても美しいんですよ。胸に刺さって、ものすごく考えさせられることもあるし。ある意味役者を苦しめるけれど、自分でそれを消化していく過程を楽しめると思う」
松本「頭でわからなくても、身体的にひき付けられる部分があるのが演劇。舞台美術や音楽、照明、役者の息づかい、すべてを感じてほしい。寺山はもともと短歌の作家だから、セリフの言葉がとにかく丁寧で美しいのは間違いない。でも、言葉の意味だけを追うんじゃなくて、その言葉を聞いた観客ひとり一人が自由に自分だけの絵画を思い浮かべてくれたらと思っているんです。受け取り方はそれぞれに違うはずやから。そういう寺山のセリフの名調子をできるだけ生かした舞台にしたい。キザすぎるセリフも多いけど(笑)、かっこええんよね、やっぱり」
インタビュー・文/まつざきみわこ
Photo/慎 芝賢
構成/月刊ローソンチケット編集部 9月15日号より転載
★寺山修司生誕80年 音楽劇「レミング」PV到着!
【プロフィール】
松本雄吉
■劇団「維新派」の主宰として、脚本・演出を手がける。圧倒的な美術と、個性的なセリフまわしが作品の特徴。
溝端淳平
■映画やドラマで活躍するほか、「ヴェローナの二紳士」など舞台作品にも積極的に出演している。
柄本時生
■毎年兄の佑と2人芝居を企画するほか、舞台作品に多数出演。確かな演技力で、映像作品でも引っ張りだこ。
【公演情報】
寺山修司生誕80年 音楽劇
レミング
―世界の涯まで連れてって―
日程・会場:
2015/12/6[日]~20[日] 東京芸術劇場 プレイハウス
2015/12/26[土]、27[日] 北九州芸術劇場 大ホール
2016/1/8[金] 愛知県芸術劇場 大ホール
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