17年ぶりの待望の再演。
圧倒的な迫力と美の舞台に世界のNINAGAWAを見る
ついに開幕した「NINAGAWA・マクベス」。
蜷川幸雄の作品の中でも群を抜いて世界的な評価が高い、まさに代表作ともいえる作品が、17年の時を経てついに幕を開けた。
ウィリアム・シェイクスピアの四大悲劇の一つとしてあまりに有名な「マクベス」。そのセリフや人物設定はそのままに、時代背景を日本の安土桃山時代に置き換えて上演する。そんな突飛にすら見える解釈を持って、堂々と“日本の”マクベスを作り上げた蜷川幸雄は、本国の作品を凌駕せん勢いの評価を受け、世界のNINAGAWAとして君臨した。あれから早17年――今回、満を持しての再演となる。
荘厳な巨大仏壇の舞台装置に、女形の魔女、仏像、桜など日本の伝統美を随所に散りばめたその見事な美しさ。その仏壇の中で繰り広げられる夢のような一大絵巻は、あたかも最初から日本版が存在したのではと思えるほどに自然に、普遍的な人間の業を描き出している。
マクベスを演じた市村正親、そしてマクベス夫人を演じた田中裕子。この二人を軸に固められた役者陣の迫真の演技、そしてその演技を最大限にドラマティックに見せる蜷川幸雄の演出の技。息を呑むシーンが続き、思わずため息がもれる。演技と存在感と音楽と照明・・・そのすべてが合致した時に、美しい一枚の絵が目の前に現れ、舞台を観ているのか、画廊で美しい絵に見とれているのか・・・自分がどこにいるのかわからなくなるような錯覚に陥る。そしてさらに死人たちの繰り広げる退廃的で幻想的な世界の魅力に取り憑かれ、完全にその世界――仏壇の中に取り込まれると、今度は自分が生きているのか死んでいるのかすら覚束なくなる。
身震いなくして観続けることができない舞台、そんな圧倒的にドラマティックな世界を作り出した蜷川幸雄に驚嘆せずにはいられない。
とりわけ、田中裕子の夢遊病にかかっているシーンの「血が・・・血が落ちないの」と手をこすり合わせる狂気的な演技、ついに城に攻め込まれる、という段で市村正親が背中で見せる圧巻の演技には鳥肌が立つ。そして、芝居終盤の、市村正親演じるマクベスと吉田鋼太郎演じるマクダフの一騎打ちのシーンでは、二人が巨大仏壇の中から異空間に弾け飛んだかのような迫力に圧倒され、涙がこぼれる。
そもそも400年以上も前に書かれた人間物語が、今のこの時代で少しの違和感もなく上演されることは非常に稀有なのではないだろうか。もちろん、それが絶えず繰り返し上演される古典劇の古典劇たる所以、シェイクスピアのシェイクスピアたる所以なのかもしれない。
だが、そこに世界のNINAGAWAの手が加わると、それはもはや日本固有の物語となり、今この時代の私たちの居る社会をも投影する現代の作品となる。時空どころか国境をも超えて、現代を生きる私たちの心を震わすこの技、まさに奇跡を観たとしか言いようがない。
この世界に誇る芸術を、ぜひともその目で一度は見るべきだ。
そして、日本の伝統美を、日本が誇る蜷川幸雄の巻き起こす奇跡の世界を、心ゆくまで堪能して欲しい。
【公演情報】
NINAGAWA・マクベス
作:ウィリアム・シェイクスピア
演出:蜷川幸雄
出演:
市村正親
田中裕子
橋本さとし
柳楽優弥
瑳川哲朗
吉田鋼太郎
ほか
公演日程・会場: 9/7[月]~10/3[土] Bunkamuraシアターコクーン
料金: S席¥13,500 A席¥9,500
Lコード:37080
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