新作公演『西のメリーゴーランド』が絶賛上演中の
万能グローブガラパゴスダイナモスに直撃!
2005年に旗揚げをし、今年で10周年を迎えた福岡を拠点に活動する劇団『万能グローブガラパゴスダイナモス』。脚本・演出の川口大樹によるシチュエーションコメディは、ある一定の状況下でもがく登場人物の葛藤などをポップに描き笑いへと導く作風で、九州戯曲賞やCorich舞台芸術まつり!をはじめ、演劇界から高い評価を得ている。近年では、動員1,500名を突破し、その人気は福岡に止まらない。
そんな彼らの新作舞台『西のメリーゴーランド』が12月2日より福岡・ぽんプラザホールで幕を開けた。今回、キャストを代表して、旗揚げ当初から在籍する椎木樹人と、今回の公演で初めてヒロインに抜擢された田崎小春に本公演やお互いの話を語ってもらった。
まずは気になる、今回のストーリーと役柄 ―
椎木「これまたネタばれがあって説明が難しいんですが・・・。普段は家だったりお店といったものを舞台にシチュエーションコメディをやっているんですけど、今回は“SF”の世界、フィクションを取り入れた設定でやろう!ということで、輪廻転生という“生まれ変わり”をテーマに、生と死の間の世界観と家族の話を混ぜ合わせたような、ちょっと不思議なお話になっています。これまでは、同級生や同じサークル内を設定にした話が多かったんですが、今回は今までにやったことのない“家族の話”に挑戦しています。ある家族のお葬式後から始まる物語なんですが、物語を何も知らずに観に来たお客さんが『あぁ、こんな厳かな話・・・、家族の話なのかぁ』と思って観ていたら、どんどん『あれ?どういうこと?』ってなるような展開が待っていると思います。その中で、僕の役どころはですねぇ…、(脚本の)川口さんがいないから言っていいのかな~?・・・鬼の役です」
田崎「え~?鬼?」
椎木「そうだよ?鬼だよ。死後の世界なんで。あ、そこまで言っていいのかな?いや、いいんです。死後の世界です。タイトルの『西のメリーゴーランド』の“西”は仏教的に“西を目指す”みたいな意味があるのかな。“メリーゴーランド”は、グルグル回る=“輪廻転生”から着想しているので、全体的には死後の話なんです。そこに家族の話をくっつけた…みたいな。あっ、そんな風に言えば『あ、どんな作品やろ?』って気になってくれるかな?(笑)。家族のコメディとSFコメディが合体したみたいな感じです。SFのコメディ…例えば、地獄に行って鬼と戦うみたいなコメディですよ(笑)。“あの世とこの世の間で巻き起こる、生まれ変わり系ホームコメディ”ですね。ピンと来ますかね?(笑)」
田崎「私はその家族の中の次女を演じています。久しぶりに実家に帰って来た次女が、いろんなことに巻き込まれていくんです。前作の『ひとんちでさよなら』の時も久しぶりに帰ってきて巻き込まれるっていう話でしたが、そことは全然違う巻き込まれ方であり、私がなぜ帰って来なかったのかとか、その家族関係がSFというフィクションによってどうなるのか?などが描かれているんですが、川口さんらしい笑えるポイントが多いお話に仕上がっています」
椎木「今回は本当に世界観が違うコメディになっているよね」
新作舞台とあって、再演などとは気持ちの面でも違いはあるのか?―
椎木「全然違いますね」
田崎「うん、違いますねぇ。(脚本の)川口さんって、人にあてて脚本を書かれるんです。だから、私の場合は当時劇団にいた人にあてて書かれたものをこれまで演じていたんですが、新作だと自分にあてて書いてもらえるので、そっちの方が私はおもしろいなって思うんです。演じる人の日頃のおもしろさを見て、こういうことを言わせたらおもしろそうだなとか考えて書いてもらえるから、その人の良さを生かされそうで」
椎木「新作・・・。ある意味、スリリングですよねぇ。最後まで脚本書けるのかなぁ?どうなるのかな?ってダブルでね(笑)。演劇って台本を俳優が立ち上げて形になっていくんですよね。俳優によって少し変わっていくものですから、台詞なんかも変わっていくし」
田崎「公演期間が長いと、公演期間中も稽古して微調整するから、福岡公演と東京公演では結構印象が違っていたりする・・・かも?」
椎木「どちらがいいかは分からないけどね。初日がよかったりもするし、それぞれですね」
10周年記念公演のラストを飾る本作品。12月25日から大阪、来年1月6日から東京公演も行われる。特に、東京公演では、“演劇の街”とも呼ばれている下北沢にある「下北沢 駅前劇場」での初公演。「下北で公演する」ということは、演劇人にとってはどれほどのものなのか?
椎木「憧れとまではいかないけど、“下北沢”は演劇の街・サブカルがたくさんある街で、そこに本多劇場グループというのがあるんですが、小さな劇場から大きな劇場へあがっていく…という、演劇人としてのサクセスストーリーがある場所が下北沢なんです。そして今は、下北駅前劇場がそのサクセスストーリーの入り口なんです。そこに行けずに終わる劇団も多いし、別の地から出て売れていく劇団もあるんですが、自分が憧れてきた劇団の方たちは下北沢の劇場からのぼっていったというのもあって、夢への一歩みたいな、そういう思い入れが強いという感じです。あと、今までなら若手だからとか、福岡から来たからとか若手だからというフィルターがあったけど、演劇の街と言われるだけあって下北のお客さんは目が肥えた人が多いから、おもしろいかおもしろくないかだけで即判断されるので、勝負の場所だな!という気がしています」
地元・福岡での公演と東京や大阪での公演はどんな違いがあるのだろうか?
田崎「私はガラパに入って3年目なんですが、東京公演の経験はありますけど大阪公演は初めてです。福岡のお客さんはガラパのことが好きでいてくれる方が多いので、安心感はありますね。でも、その土地ごとで違う刺激もありますから、ガラパをたくさん見ている福岡の方が逆に難しいというか。何度も見ている人をもっと楽しませるということに緊張感が伴うこともありますね。劇場の使い勝手からすればやはり福岡だと落ち着くところはありますけどね(笑)」
椎木「福岡のお客さんは、もちろんホームだから自分としてもやりやすいんですけど、僕は東京も好きですねぇ。東京はいい芝居をすれば、翌日ビックリするくらいに当日券が増えたりとか、ものすごく評価してくれるので、千穐楽までに毎公演お客さんが増えていくなんて普通ですよね。そんなおもしろさもありますね」
旗揚げから10年となった万能グローブガラパゴスダイナモスだが、続いては、そんな劇団に入って3年目となる田崎小春から意外な話が飛び出した!―
田崎「実は私、入団する前までガラパの公演を見たことがなかったんです(笑)」
椎木「そうなんですよ!ガラパのファンとかでもないんですよ。オーディションも受けていないですからね」
田崎「自分が演劇をしている中で、福岡の中で一番勢いがある劇団だと思ったのが一番の理由です。4年くらい前に役者が日替わりで脚本を書くというイベント“ガラ博”があって、その時にガラパではなくゲストの方が書いた作品に私は出ていたんですが、そこで初めてガラパの皆さんと触れ合って、椎木さんに劇団に入らないかとお誘いを頂いたんです。でも、その時はガラパを見たことがなかったから、『入らないです』ってお断りしまして(笑)」
椎木「最初、小春をガラパに入れたくて、『うちに入りなよ』って言ったんですけど、『私は東京に行きます』というから諦めたんです。でも、その1カ月後くらいに『ちょっと・・・、やっぱり入りたいです!』って電話がかかってきて(笑)」
田崎「当時、まだ大学2年生で、芝居をやるなら東京に出ないといけないなって、ぼんやりと思っていたんです。でも、その中であと2年間は学生として福岡に残るから、残って演劇をするならこの福岡の中で一番刺激的なところにいたいな~と思っていたんですよね。その時にちょうど(劇中の楽曲提供をしているバンド)andymoriの曲を聴いていて、あ!なんかガラパに入ろうかな~って」
椎木「それ、andymoriのおかげやん!(笑)」
田崎「その時に、ガラパに入っても間違いないかもな~と思って(笑)。で、『やっぱり入ります!』って唐突に椎木さんに言ったから、『それ、テンションで言ってるやつじゃないだろうねぇ?』と椎木さんに言われたんですよねぇ(笑)」
椎木「いやっ、その時期にガラパとしては初めてオーディションをやって新人を入れた後で、その後“ガラ博”のイベントをやったんですが、『ガラパに入りたいです!!』と熱心だった子がすぐに辞めてしまったんですよ。それで、あぁ…あんなに情熱がある感じでも辞めていくんやぁ…と思ったから、こちらとしてはそんなノリで来られてすぐ辞められても困るな…と思うところがあったんじゃないかな(笑)」
田崎「そうそう。その話の後にバーで劇団員のみなさんに会ったんですが、『え?なんでガラパに入りたいの?』って不安そうな感じがあって、本当にここでいいの?みたいな空気が漂っていたから(笑)、後で考えたら新人が抜けていくことがあったから、そんな空気が漂っていなのかぁ…と(笑)」
椎木「だから、タイミング的には小春は不思議な入り方してますよね」
田崎「ガラパを見て、ガラパが好きで入ってくる子は多いですが、私はそうじゃないところから入っているからこその強みがあるなと思っています。もちろんガラパは好きなんですが、憧れだけじゃなく広い視野でガラパに関われているなと感じています」
椎木「最近(田崎は)すごくいろんな劇団の公演にも出ているんですよ。それはとてもいいことだなと思っています。僕の時代は、先輩の劇団の公演に出させてもらっていたんですが、小春は同年代からすれば先輩劇団の劇団員という立場にいるけども、同世代の劇団の公演にもたくさん出ていたりもするから、それはいいことだなと」
田崎「そう!私、今年だけで『西のメリーゴーランド』も含めて15本の作品に出ているんです!もちろん10分くらいのものも含めてですが、自分でもビックリしました。九州には同世代におもしろい劇団の人たちがたくさんいるんです。そんな出会いもガラパに入ってから増えました。それはすごく幸せだなって思いますね」
椎木「今、福岡・北九州ではおもしろい劇団が増えていますよ。(田崎と)同世代間での活動が生まれつつあるのがいいな~と思います。うちの劇団も新人が入って20代前半の劇団員が多くなってきて、僕らと世代交代をしていきつつある感じですから、彼らにはいろんな場所に出て欲しいなと思っていますし、僕らは僕らでやるべきことがあるなとも思っています。10周年を迎えた今のガラパは、劇団としての幅というか間口が広がってきているんじゃないかなと。広いかたちで皆が演劇活動をして、それが劇団(ガラパ)に活かされていくことになればいいなと思っています」
田崎「ガラパに入って3年になりますが、新人とは言っていられない立場になってきて、自分が引っ張っていかないといけないとなった時に、役者がだいぶん入れ替わってきているから、役者が変わったことでガラパの作品の色みたいなものも変わってきているんじゃないかなと思っています」
椎木「うん、10周年を迎え、『西のメリーゴーランド』が集大成ではなく、リスタートの最初の作品になっているかなと思います。おもしろいのは、1つのノリ、大濠高校演劇部出身のノリでこの10年間ガラパを作ってきたところがあったんですが、今や大濠高校出身は僕だけですから、そのノリでは作れない。世代交代をしたことで今までのガラパに違うエッセンスが入り、ガラパが持ってきたノリ的なものは1本筋を通しつつ、全然違うエッセンスやいろんな関係性やバラエティにとんだ個性が今までのガラパに乗っかり始めている気がしてますね。だから、今回の新作も一筋縄ではいかないコメディになりました」
今回の物語は、ネタばれになりそうな部分が多いゆえ説明が難しそうな印象だったが、10周年という節目の最後を飾る公演に、今までのガラパらしさと新しいガラパが融合したコメディを見ることが出来そうで期待度は高まるばかり。
九州でいま最も勢いのある劇団、万能グローブガラパゴスダイナモスの新作公演。福岡公演は千穐楽まで残りわずかとなったが、12月25日~の大阪、1月6日~の東京公演と、彼らの“冬休み返上ツアー”はまだまだ続く!まだ彼らの世界に触れたことのない人も、ガラパマニアの人たちも、この機会に是非観劇してみては?各地の公演のチケットは、ローソンチケットで好評発売中!
取材/ローチケ演劇部(延)
取材・文/ローチケ演劇部(シ)
※今回の取材時にもらったコメントを動画でも配信中!
★コメント映像
【公演情報】
万能グローブガラパゴスダイナモス
第21回公演「西のメリーゴーランド」
【福岡公演】
期間:12/2[水]~13[日]
会場:福岡・ぽんプラザホール Lコード:88921
【大阪公演】
期間:12/25[金]~27[日]
会場:大阪・in→dependent theatre 2nd Lコード:58791
【東京公演】
期間:1/6[水]~10[日]
会場:東京・下北駅前劇場 Lコード:39720
※各公演の公演日時・料金などの詳細は下記URLよりご確認ください