遂に日本初演の傑作!「アルカディア」 井上芳雄 インタビュー

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撮影:加藤孝
感情を揺さぶられる瞬間が、
この舞台にはたくさんつまっている

 

 舞台『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』や映画『恋におちたシェイクスピア』の脚本で知られるトム・ストッパード。彼の最高傑作と称される『アルカディア』がついに日本で初上演される。演出に栗山民也、キャストに堤真一、寺島しのぶなど豪華なカンパニーで構成されたこの作品。なかでも、キーマンとなるセプティマス役を演じる井上芳雄は「これは日本最高峰の舞台と言っても過言じゃない」と強い手応えを見せる。

 舞台となっているのはイギリスの豪壮な屋敷。物語は、そのひと部屋で“ある謎の追求”をめぐり、19世紀と現代が交錯する二重構造となっている。

井上「セットは同じで、登場する人物だけが違うというのが、どのようにお客さんに見えるのか、興味がありますね。しかも、ときには200年の時代を超えて、それぞれの人物が同じ空間に現れる。お互い直接会話を交わすわけではないけれど、同じノートを見ながら、同じテーマの話をするんです。ノートに限らず、その部屋で200年もの間、多くの人がいろんな会話をしてきたんだなと思うと、ロマンを感じますよね」

 

 井上が演じるセプティマスは19世紀に生きる人物で、屋敷に住み込み、お嬢様の家庭教師をしている青年。博識で礼節を重んじる一方で、ときおり早熟なお嬢様に翻弄される役どころでもある。

井上「彼は実直な性格ではあるので、規律を守る姿をしっかりと見せていかないといけない。ただ、たまにたがが外れる時があるんです。僕も普段は感情の波が少ないほうなんですが、そうじゃない別の一面を僕自身が感じたくてお芝居の仕事をしているところがあるので、そうした二面性は少し似ているかもしれませんね」

 

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 とはいえ、戯曲が難解で、“この感情は一体どこから来ているのか?”と悩むこともあるそうだ。

井上「最初は本当に分からないところが多かったですね(苦笑)。でも今は、共演者の皆さんと意見を交わしながら稽古をしていく作業が、なんだか謎解きみたいでとても面白いです。それに、きっと正解はないんですよね。そもそもストッパードも、あえて明確な答えを提示せず、“自分たちで何を感じ、どう表現するかが大切”と考えている方。演出の栗山さんもそれを理解した上で舵を取ってくださっているので、僕は不安を感じることなく、自由に感情を爆発させてもらっています」

 

 取材時はまさに稽古の真っ最中。作品の性質上、主に19世紀組と現代組に分かれて稽古をしているそうだが、ここでもそれぞれのカラーが出ているようだ。

井上「19世紀組はストイックですね。当時は階級社会なので、その階級の中での登場人物の立ち位置や発言がとても重要になってくる。そのため、セリフの一つひとつに気を遣って繊細に表現しています。一方、現代組はライトな雰囲気。しかも、堤さんも、寺島さんも、演出家が求めるその先の表現を求めてお芝居をされているので、どんどんいろんなアイデアが生まれてくるんです。たまにやり過ぎて芝居が崩壊することもありますが(笑)、それも含めて楽しい稽古場になってます」

 

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 また、今回の舞台では、ともにユニット「StarS」で活動を行っている浦井健治とも共演。実は、ストレートプレイで2人が同じ舞台に立つのは、これが初めてのことになる。

井上「もう、お互いのことを知り尽くしたと思っていたんですけど、ストレートプレイでの役作りのアプローチの仕方を見ていると、意外な一面があって刺激を受けますね。浦井君は天然なところもあるけど(笑)、すごく勉強熱心で、自分の出番がない日でも時間があれば稽古場に来て、共演者の演技を見ているんです。もう、僕とは正反対。僕は稽古場にいると緊張しちゃうので、ギリギリに来て、終わったらすぐに帰っちゃいますから(笑)」

 

 井上がここまで緊張する理由。それは豪華なベテラン俳優陣との共演のプレッシャーだけでなく、いまだストレートプレイの舞台に、慣れない難しさを感じるからだそうだ。

井上「苦手意識がずっとあったんですよね。経験が少ないぶん、怖さも感じていて。でも、矛盾するようですが、今はお芝居が楽しくて仕方がないんです。経験とかキャリアとか関係なく、自分も思いもよらないような演技が出来た時に、役者もお客さんも大きく感情が揺さぶられる瞬間が訪れることがある。そんな時、生きてるなって感じます。今回の『アルカディア』は、その興奮がぞんぶんに味わえる作品だと思うので、ぜひ多くの方に観に来ていただきたいですね。」

 

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 最後に、彼が感じるこの戯曲の魅力を教えてもらった。

井上「まず、物語自体がものすごく面白いですね。冒頭でもう作品のテーマを伝えるようなセリフが出てくるんですが、そうした種明かしをした上でも、観客を惹きつける力がこの戯曲にはある。いろんな伏線が散りばめられていますが、そのすべてが見事に回収されていきますし。また、この舞台のテーマは “熱”なんです。そこで生きている人たちの情熱や愛情、それに愛欲などが描かれている。それって、どの時代でも誰しもが持っているものだと思うので、僕も、時代を超えてもあふれだす人間の壮大なエネルギーを舞台上で表現したいです」

 

【公演情報】

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シス・カンパニー公演「アルカディア」

日程・会場:
2016/4/6[水]~30[土] 東京・Bunkamuraシアターコクーン
2016/5/4[水・祝]~8[日] 大阪・森ノ宮ピロティホール

★チケット情報は下記ボタンにて!