「母と惑星について、および自転する女たちの記録」 主演・志田未来&作・蓬莱竜太 対談

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 「母と惑星について、および自転する女たちの記録」という壮大なタイトルがついた本作は、8月に建て替えのため閉館するパルコ劇場での最後の新作舞台。志田未来、鈴木杏、田畑智子、斉藤由貴という実力派女優たちが集う4人芝居だ。奔放に生きた母(斉藤由貴)の急死からひと月後、遺された三姉妹(田畑智子、鈴木杏、志田未来)は遺骨を持ったまま、あてもなく異国への旅に出る……。三女役の志田未来と、演出・栗山民也からの信頼も絶大な若手劇作家・蓬莱竜太の、初対面直後に行われた対談をお届け。

 

――まず、どんなところから生まれてきた物語なのでしょう?

蓬莱 演出の栗山(民也)さんとの話し合いの中で、女性の芝居がいいんじゃないかということになり、“母と娘たち”はどうかと。そしてグローバルなスケールでやりたいという話になって、日本じゃないどこかをさまよっている三人姉妹のイメージが出てきました。

 

――志田さんは途中までの脚本を読んでいるそうですが、現段階での感想は?

志田 率直な感想でいうと、すごく会話をしてるなと(笑)。初舞台の「オレアナ」(2015年)は二人芝居だったんですけど、会話になっていない会話というか、お互いに一人でしゃべっているような作品だったので、やっとちゃんとした会話ができるんだなと思いました(笑)。

蓬莱 僕も「オレアナ」を拝見しましたけど、志田さんは素晴らしかったですよね。二人芝居という逃げ場のない究極的な形で、しかもああいう社会的なテーマの翻訳劇で初舞台。でも初舞台とは思えない感覚があって、これはすごいなと思いました。触発されるだろうと思ったので、うちの劇団(モダンスイマーズ)にいる志田さんと1歳違いの女優に「観ておいで」と勧めたくらいです(笑)。

志田 私の中では、どの舞台が難しくてどの舞台が難しくないとかそういうことすらわかっていない状態で……。どの舞台も自分の中では同じで、舞台イコール、体力的にも精神的にもものすごく消耗するものだという認識があります(苦笑)。

蓬莱 緊張とかしました?

志田 すごいしました。緊張しかなかったです。公演中は毎日が必死すぎて、楽しいとか思う余裕はなかったですね。「あと何回」って毎日数えたりとか(笑)。でも全部終わったら、毎日がすごく濃くて充実してたなって。あんなに毎日いろんなことを考えて、同じお芝居をしに同じ場所に行くという経験が今までなかったし、それってすごく刺激的なことだったなって、終わってから気づきました。

 

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――「オレアナ」で観た志田さんの印象が、今回志田さんが演じる三女の役に生かされていたりしますか?

蓬莱 「オレアナ」のときの役は強いメッセージ性を持つ女性だったので、それとどう変化させようかなというのはあります。せっかくなので、違うことをやってもらいたいなと思って。主体性があるのかないのか、自分の気持ちをあまり表出できない役にして、でもその居ずまいから気持ちがどんどん漏れてくるというようなことになると面白いのかなと思っています。

 

――志田さんは舞台で2本続けて栗山演出を受けることになるわけですが、前回受けてみての印象は?

志田 すごく細かく丁寧にお芝居をつけてくださいました。台本を読んでいて「なんでこういう台詞を言うんだろう?」とちょっと疑問に感じたことも、尋ねる前に教えてくださったり。私は「じゃあ好きに動いてみて」と言われたとしてもどう動いたらいいか全くわからない状況だったので、栗山さんが助けてくださったから、あの舞台ができたと思っています。

 

――栗山さんとコンビを組むことが多い蓬莱さんは、栗山さんの特にどんな部分に信頼を置いていますか?

蓬莱 栗山さんに対しては“演劇少年”というようなイメージが僕にはありまして。当たり前なんですけど、とにかく芝居がすごい好きな人で、芝居をやっていないとダメ、みたいな。その1点でまずすごく好きだし、信用できます。いつも、「もうこれ以上書きようがないってホンを見せてくれ」って言われるんですよ。つまり自分が本当に納得したものを見せろと。そこは信頼プラス、シビアでもあるってことなので、ちょっとヒリヒリできる仕事場です。でも栗山さんご本人はチャーミングなところがあって気さくに話せるし、すごく仕事しやすいですね。僕は本読みのとき以外は、自分が書いた作品の稽古場にあまり行かないんですけど、栗山さんの演出は面白いので、ちょこちょこ行きます。女性を演出するのがほんとに上手なんですよ。栗山さん本人が演じてみせたりするよね?

志田 はい(笑)。

蓬莱 「まほろば」(2008年初演)のときもそうだったんですけど、あの栗山さんがやってみせる女性が面白くてニヤニヤしちゃうんですよ(笑)。今回の稽古場もすごく見てみたいですね。

 

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――今話題に出た「まほろば」というのは蓬莱さんの岸田戯曲賞受賞作で、栗山さんの演出で上演されました。こちらは女性のみの6人芝居でした。

蓬莱 栗山さんの中にも今回、「まほろば」のイメージはちょっとあったみたいで。そこに僕が「まほろば」をイメージして書くとほんとに「まほろば」になっちゃうので(笑)、あの作品とは違う角度でどう書けるか、どう離れるかみたいな部分も、自分の中の挑戦としてありました。

 

――その「まほろば」もそうですが、男性の蓬莱さんが母と娘、姉妹といった女性同士の関係性を描く難しさはやはりありますか?

蓬莱 女性たちの世界を男の作家が書いて男が演出するということは、男性から見たものということに結局なってしまうと思うんですよね。それゆえの誤解とかも含めて作品になるのかな、なんて思っていて。だから女性というものを書き切れるとは思っていなくて、不安感とか恐怖みたいなものはやっぱり少しあります。でもあまり意識はしないようにして、“人間”としてとらえて書いていこうというようなイメージですね。

 

――志田さんは、男性が書いた女性ということについて、現段階の脚本を読んで何か感じたことはありますか?

志田 台本に書かれている人はもうそこに登場している人というか、そこに生きている人だと思っているので、男性が書いたとか女性が書いたとかっていう意識はなくて、こういう人物なんだという捉え方しかしていないです。

 

――死んでいる“母”が、姉妹の中で強い存在感を放っている物語です。志田さんご自身はお母様とどんな関係ですか?

志田 友達みたいな感じで、なんでも話せますし、名前で呼んだりするので、ほんとに友達みたいな関係です。

蓬莱 ちゃん付けで?

志田 そうですね。父のことも名前で呼んでますし、そういう家庭なんです(笑)。

蓬莱 すごいっすね!(笑) 母と子っていうのは、ほんとにいろんなパターンがありますね。その中で、この芝居の母娘はちょっと特殊で、娘からしたら母がむしろ敵であるような。そんな母相手に娘たちは一生懸命生きてきたんですけど、突然いなくなるとなんかぽっかりしてしまって、敵を失くした感覚というか。そうすると糸が切れた凧のようになり、さまよっている三人姉妹というようなイメージですね。まだ脚本完成までの道のりは遠いんですが(笑)、楽しんで書けたらいいなと思っています。あまりテーマテーマっていきすぎず、結果的にテーマみたいなものが浮かび上がってくるといいなと。ヘビーだったり笑えたり抽象的だったり、いろんなものを行き来していろんなものが観られる、ジャンルがよくわからない感じの芝居になればいいなと思います。ヘンなコントがずっと続いていくみたいな、そんな重ね方。そうすることで逆に、この女性たちがたくましく豊かに見えていくといいなという気がしてます。

志田 もっとカタい感じの舞台なのかなと想像していたんですけど、すごく楽しくなりそうです。“ヘンなコント”っていうのが気になります(笑)。

 

取材・文/武田吏都

 

【公演情報】

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「母と惑星について、および自転する女たちの記録」

日程:2017/7/7[木]~31[日]
会場:東京・PARCO劇場

★プレリクエスト先着先行 5/12(木)まで受付中!
 詳しくは下記のボタンにて!