はじめまして、ゴジゲンの目次立樹です。メツギリッキと読みます。
この度ゴジゲンの主宰・松居大悟演出の舞台「イヌの日」の上演に伴いまして、コラムを書かせていただくことになりました。
わたくし目次独自の目線で「イヌの日」の魅力を余すことなくお伝えしていきますので、よろしくお願いいたします。
とは言ってみたものの…
自分つい最近まで田舎で米作りしてたんですよね。
いや、田舎って言っても山陰地方では大都市に数えられる島根県の松江というところでして。
…シジミとか有名ですね。かなり。
え~、そんな泥臭い田舎臭い私がこのコラムを任されたことに内心ビビッてる部分はあるのですが、
夏場のオクラの如くメキメキ成長していくんで温かく見守ってやってください。
さてさてこの「イヌの日」という作品、
「小学校の頃、好きになった初恋の女の子を15年間にわたって防空壕に監禁する男の物語」です。
これまたすごいのをブッこんできましたね。
16年前に新潟で起こった少女監禁事件に着想を得て書かれた作品らしいですよ。
監禁期間はなんと9年2か月!
当時9歳だった少女は18歳になってたわけですよね。
ひー。
女性からしてみればそんな犯行に及んでしまう男の心理は理解不能ですよね。
逆に女性が男性を監禁するスティーブン・キングの「ミザリー」なんて作品もありますが、やはり動機は男と女では違うように思います。
私の好きな映画に「悪い男」(監督:キム・ギドク)という
「街で見かけて好きになった女性を、罠にはめて売春婦にしてしまう男」の作品があります。(これまたひどい話だ(笑)。)
この作品のインタビューに監督は、
「男性ならだれでも一度は考えることで、女性を暴力的にでも自分のものにしてから優しくしたい」
という風に答えているのですが、このコメントに深くとは言わないまでも男である自分は頷けてしまうんですよね。
男性はどこまでも男子的な妄想を抱えて生きているように思います。
そういえば、私の初恋も小学生でした。
マイちゃんです。
可愛かったな~。
色が白くて人形みたいに整った顔立ちで、しかも勉強もできる。
島根県はイモの煮っ転がしみたいな女子がほとんどですが、
その子だけビシソワーズでしたね。
同じイモ料理だけど、気品漂う都会的な雰囲気。
とかく田舎者はそういったものに弱い。
クラスの男子はみんなマイちゃんが好きだったと思います。
ほんと大好きだから、ことあるごとにイジワルをしちゃう。
泣き出すまでやっちゃう。
それがもう楽しくて仕方ない。
帰り道も同じ方向だったから、四六時中その子と一緒。
下校途中、その子の母親が車で追いかけてきて「どうして毎日毎日うちの子を泣かすんかねっ!!」って凄い剣幕で叱られた覚えがあります。
夜眠る前なんか学校が楽しみで楽しみで眠れないんですね。
あ~明日もマイちゃんに会えるんだ~♪って。
でも、学年が上がって違うクラスになっちゃったんです。
ただでさえ悲しいのにクラス発表の張り紙の前で「あ~目次と一緒じゃなくてよかった」なんて本人に言われちゃって。
あ、おれのこと嫌いだったんだってそのとき初めて気づいて。
家に帰って親兄弟にばれないようにおいおい泣いて。
初恋はあっけなく失恋に終わったんです。
しかしこの話には続きがございまして。
その10年後、私は高校2年生。
たまたま中学で同じテニス部だった奴らと会ったんです。
町にひとつしかないデパートでです。
もちろんサティ。
そしたらその中の一人がなんと「オレ今マイちゃんと付き合ってるんだ」と自慢をし始めまして。
んんんんんっ!?
いやまぁまぁまぁまぁ、そこまではまだよかったんです。
いや、よくはないけど。
いつまでも記憶にこびりついて離れない女性ですから。
正直全然素直に喜んであげられそうにもなかったんですが、それでも「へ~よかったじゃん」とか適当なことを言って。
でも、そっからがよくなかったぁぁぁ。
当時高校生です。
大抵の話すことは徐々に徐々にずり下がって下半身まできてしまうんです。
聞きたくないあんなことやこんなことまで耳に入ってきちゃって。
しまいには「夜はトイザらスだ」みたいな話まで飛び出してきたんです。
さすがにこれはこたえました。
この世であんなに綺麗で純粋な生き物はいないという状態のまま時間が止まってますから。
その瞬間からマイちゃんは僕の知っているマイちゃんではなくなりましたね。
きっと私がどんなイジワルをしたところでもはや微塵も泣いてはくれないでしょう。
むしろ手慣れたものです。
「も~ヤダ~やめてよ目次く~ん」なんて軽くいなされるでしょう。
そんなん、もはやビシソワーズでもありませんよ。
たんなる冷えた芋汁です。
私はその場をなんとか踏みこたえ、そそくさとサティを抜け出し帰路を急ぎました。
しかし10年前と同じように家に帰って人知れずおいおい泣いたりなんかはしません。
猥雑な方法でしか自らを慰めることができないお年頃の悲しい性でありました。
こうして私の少年時代の美しい思い出は、ベタベタとケバケバしい色で塗り替えられてしまったという悲しい思い出です。
この「イヌの日」の主人公のように、小学生のマイちゃんを大人になるまでずっと監禁し続けていたら…
正直まるで想像つかないです。
今の今までそんな発想すら持ち合わせていなかったです。
ただ、ひどい話かもしれませんが、当時高校生の私も「彼女が不幸になっていて欲しかった」とは思ったはずなんです。
クラスでいじめられていて友達もいない。
家庭環境も最悪、どこにも居場所がない。
そんな初恋の相手を救ってあげられるのは自分だけだ。
みたいなですね、
さっきのキム・ギドク監督のコメントまではいかないものの、
男はそんなシチュエーションをひとり妄想して悦に浸っていたい生き物ではあるなぁと、
それは30になった今でも思うことがあります。
厄介なことに(笑)。
さすがに40になっているころにはそんな男子生徒は頭の中から卒業していて欲しいと思うのですが。
次回:今週末に行われる顔合せと本読みをレポートしますっ!!
Profile
目次立樹 メツギ・リッキ
1985年10月29日生まれ、島根県出身。
劇団ゴジゲン所属。舞台上では圧倒的な存在感を放つ、松居大悟作品には欠かせない存在。ここ数年は地元・島根県にて俳優、農家、ワークショップデザイナー、児童クラブの先生としても活動の場を広げている。
―今後の活動―
「イヌの日」 出演
作:長塚圭史 演出:松居大悟
2016年8月10日(水)~21日(日)
ザ・スズナリ(下北沢)