近代能楽集より「葵上・卒塔婆小町」 美輪明宏 インタビュー

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今に通じる人生、恋と愛が描かれた名作に再び挑む

 

 現在、秋のコンサートと春の舞台を軸に活動している美輪明宏。この春は当たり役のひとつであり、自ら演出、美術を手がける名舞台『葵上・卒塔婆小町』を7年ぶりに上演する。三島由紀夫が能を現代風に翻案した2作は、いずれも恋と愛の物語だ。

美輪 「『葵上』はかつて恋人だった光を忘れられない六条康子が生霊になるというお話で、いわば不倫ものです。近頃は世の中、不倫ブームみたいに言われていますけれど、私が50年やっている人生相談でもそうした悩みは尽きませんし、『源氏物語』もギリシャ悲劇にしても、不倫の物語だらけなわけです。だから何を今さらって思うんです。康子は重くて嫌な女として演じられることが多いですが、本来は道を外れた仕打ちをされたために生霊になり、自らそのことに気づいて泣き崩れる女性。そうした悲しさも残しながら演じています」

 

 『卒塔婆小町』の舞台は夜の公園だ。そこに一人の老婆が現れる。彼女に興味を抱き、語りかける詩人の青年に老婆は言う。かつて私は“小町”と呼ばれ、「美しい」と言った男たちは皆死んでしまったのだ、と。

美輪 「美しく生まれついた者は、それゆえに過酷な運命が課せられているという“正負の法則”を描いた作品です。若いときは美しいとちやほやされても、ある程度の年齢になるとみんな横並びになるでしょう。なのに昔の気持ちのまま同窓会に行ってがっかりされて惨めな気持ちになったりするわけです。もともと美しくなければ落差がないので、美も何事も、腹六分がいいんです。それも含めて、この2作のセリフには人生のあらゆる問題が詰まっています。」

 

 『卒塔婆小町』では老婆が青年に悲しい過去を語るうちに、いつしか100年前の鹿鳴館へと変わる。美輪が瞬時に小町に早変わりするシーンは見どころの一つだ。

美輪 「小町のドレスの上に100歳のおばあさんの衣裳とかつらをつけて、早変わりしてからワルツも踊るので体力的に大変です。私も5月に82歳になるので、この作品を演じるのはこれが最後になるかもしれません。でも幸いまだ手にシミもないし、顔にあまりシワもできないし、小町になっても“老婆のままじゃないか”とは言われないだろうとうぬぼれているんです(笑)。」

 

 作者の三島が美輪の超絶技巧のセリフ力に惚れ込み、さらに美輪の演出ブランを聞いて感嘆し、上演を切望していたという本作。生前、三島がその舞台を観ることは叶わなかったが、今回の上演を前にして不思議な出来事があったという。

美輪 「まるでこの舞台に合わせたかのように、三島さんが命を絶たれる9カ月前の肉声テープが新たに発見されたんです。きっとまた、何か私に伝えようとしているんでしょう。16歳のときに出会ってから、18年間交流がありましたけれど、三島さんにしても、私のために「毛皮のマリー」を書いてくださった寺山修司さんにしても、天才たちに望まれたアーティストであったのはとても幸せなことです。だからこそ、舞台を作る上では天才たちの思いをちゃんとお伝えしたいと思うんです。」

 

 テレビのバラエティの印象が強いが、美輪のすごさを目の当たりにできるのはやはり舞台だ。「初めて私の舞台を観た方は皆さん驚かれます」という通り、衣裳、音楽すべてが美しく華麗でスリリングで、スペクタクルな世界は美輪にしか創り出せないもの。ぜひ体感してほしい。

 

インタビュー・文/宇田夏苗
撮影/御堂義乗
構成/月刊ローチケHMV編集部 2月15日号より転載

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掲載誌面:月刊ローチケHMVは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布

 

【プロフィール】

美輪明宏
■ミワ アキヒロ ’35年、長崎県出身。16歳でプロ歌手となり、シンガーソングライターの元祖として「ヨイトマケの唄」など数々のヒット曲を生む。主な演劇作品に「黒蜥蜴」「毛皮のマリー」など。「紫の履歴書」「人生ノート」をはじめ著書多数。

 

【公演情報】

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美輪明宏主演 近代能楽集より「葵上・卒塔婆小町」

日程・会場:
2017/3/26(日)~4/16(日) 東京・新国立劇場 中劇場
2017/4/23(日) 宮城・イズミティ21 大ホール

2017/4/26(水) 静岡・アクトシティ浜松 大ホール
2017/4/28(金) 愛知県芸術劇場 大ホール
2017/5/4(木・祝) 長野・まつもと市民芸術館 主ホール
2017/5/18(木)~21(日) 大阪・シアター・ドラマシティ
2017/5/29(月)・30(火) 神奈川県民ホール 大ホール

詳しいチケット情報は下記ボタンにて!