稽古まっただ中の蓬莱竜太と中村勘九郎、中村七之助はじめ キャスト勢揃いで特大絵馬を奉納し祈願、成功間違いなし!
4月6日(木)の初日まで残り1カ月を切った! 東京・TBS赤坂ACTシアターにて上演される赤坂大歌舞伎『夢幻恋双紙(ゆめまぼろしかこいぞうし) 赤目の転生』の公演成功を祈り、「赤坂氷川神社」にて成功祈願が行われた。
朝から曇天で小雨もしたたる日だったが、儀式の時間帯は雨もピタリと止んだ。幸先がいい。中村勘九郎演じる気の弱い男・太郎と、中村七之助演じる女・歌の恋物語が“転生”という摩訶不思議な設定の中で繰り広げられる本作。都内でも指折りの縁結び神社である赤坂氷川神社にて成功祈願が行われるのは、誠にふさわしいものと言えそうだ。赤坂大歌舞伎史上初という新作の稽古まっただ中、勘九郎、七之助はじめ、先日発表されたキャストの市川猿弥、中村鶴松、 中村いてう、中村亀鶴、片岡亀蔵と、作・演出の蓬莱竜太が登場。まずは本殿にて、宮司による祝詞奏上、玉串を奉納して柏手を打つ、と厳かな御祈祷の儀式を行い、続いて、演目名が記された特大の絵馬を宮司に奉納。絵馬の裏には全員のサインが記されている。「お願いいたします」と頭を下げる勘九郎から、うやうやしく絵馬を受け取った宮司はそのまま本殿へ。すぐにも神棚に報告されたようだ。
──たったいま終えられた成功祈願の感想は?
蓬莱「身の引き締まる思いです。いよいよ赤坂にやってくるんだなと思いました。稽古もがんばらなければ」
勘九郎「赤坂大歌舞伎の成功祈願を初めてさせていただいきました。蓬莱さんとおなじく身が引き締まりました」
七之助「この赤坂の地でやらせていただける喜びを感じました。こちらは縁結びの神社ということですが、恋愛ごとに限らず、こうした素晴らしい作品とのご縁、普段の歌舞伎ではあまり一緒にならない人々がピッと合ったというご縁をも大切にしたいと思います」
亀蔵「赤坂大歌舞伎で新作をやるのは初めて。とても楽しみです」
亀鶴「僕も赤坂大歌舞伎は初めてです。勘九郎さん、七之助さんとは浅草(新春浅草歌舞伎)でご一緒していますが、久しぶりの顔合わせなのですごく楽しみです」
猿弥「赤坂大歌舞伎に初めて出させていただきます。精一杯、務めさせていただきます」
鶴松「とうとう赤坂にやっとてきたなと感じました。稽古をがんばります」
いてう「このような大役をやらせていただくことになり、一生懸命がんばりたいと思います」
──絶賛稽古中ですが、手ごたえはいかがですか?
蓬莱「歌舞伎の演出は初めてですが、劇団のようにみんなが一緒になって作っているので、意外と“ホーム”にいる感じです。リラックスして充実した稽古ができていると思います。歌舞伎と現代劇は違うかなと思って稽古に入ったのですが、そういうことは意識しなくていいと、勘九郎さんも七之助さんも言ってくださる。すごく自由に歌舞伎を発想していいんだという空気なので、それを“うのみにして”やっています」
勘九郎「本人を目の前に言うのはアレですが、もう本当に本が素晴らしい。おもしろいんです。これを役者の力で、僕らの肉体を通して、いかにお客様に届けるかはメンバー次第。蓬莱さんも言ってくださったように、カンパニーは本当に仲がいいですね。空気がいい、楽しいんです。雨の降る場面があって、これがキーになるシーンなのですが、年長者の亀蔵さんが、机をパタパタパタ……と叩いて音を出してくれている。“亀蔵レイン”と呼んでいます」
亀鶴「本番もやってくれるんですか?」
亀蔵「いやいや(笑)。(稽古は)いまのところはうまく流れています。どっかでガツンと引っかかるところがこれから出てくると思いますが、それもまた楽しいかなと。スムーズに流れすぎているのがいまはおっかないですね」
七之助「最近の歌舞伎の新作や、新しい演出家さんがやるようなものにはちょっと不安もあったのですが、蓬莱さんは、なんとも言えない安心感があります。この安心感に甘んじず、産み出していかねばならないなあとは思いますが、いまのところは、なんとも言えないこの安心感が一番うれしいですね」
蓬莱「まだまだ出来は10%くらい。それくらいの危機感でやっていきたいですね」
──“恋愛あるある”も散りばめられたお話とのことですが、男性ばかりでわかるものですか?
勘九郎「それは、書かれた方(=蓬莱)の体験かと」
蓬莱「ええ(笑)!?“あるある!”ってみんな言ってるじゃないですか」
勘九郎「蓬莱さんは、女優さんが一人もいない稽古場が初めてとのことですが、女形、というのがなかなかおもしろいんじゃないですか?」
蓬莱「そうですね。女優としてダメ出ししたらいいのか、俳優としてダメ出しすればいいのか。妙な気持ちになります。七之助さんも稽古場で化粧しているわけじゃないですし、男らしいんですけど女形なので、ちょっと混乱しつつ……(笑)。七之助さんもツッこみますよね、“このセリフ……、言っちゃダメでしょ”と」
七之助「いやいや、少なからず世の男性は体験しているのではないでしょうか?という、女性に言われる言葉ですから、私のセリフは。でも、だからこそ、私たちが表面上でやったらペラッペラになってしまう。“ああ、それ、あるある”で終わってしまう危険性もあるお芝居だと思うで、各個人が一つ芯を持ってやらなければと思います。せっかくの蓬莱さんの本を台無しにしたくない。一生懸命に稽古中なんです。本当に、いままでにない新作、ジャンルからして新しいものですから」
勘九郎「恋愛あるある、人の世の普遍的なもの、日常の会話。私は転生する男を演じますが、男女の別れにあって、いろいろな言葉を浴びせかけられるわけです。まあ、疲れますね!歌舞伎にも、いきなり殺される、子を身代わりすると、そういう突拍子もない感情の揺れはありますが、蓬莱さんの今回の本は、日常にある言葉を言われ続けるんです。これが意外ときますね。日常事なので逆に堪えます」
七之助「私は女形ですが、男なので、推測でしかないのですが……。やはり、女性は、言いたくないけど言わなくちゃならないとか、男側は、言われたくないとか、そういうものなんだろうなと、いろいろ考えながらやっております」
勘九郎「七之助さんの発言は私たちにとてもためになりますね!やはり経験がね(笑)」
七之助「まあ、私もいい恋愛をしてきたのではないでしょうか(笑)」
蓬莱「読み稽古をじっくりやらせていただいたので、まだ立ち稽古に入って間もないんです。今後は、台本に書かれている以外の情報がどう肉体で出てくるか、僕が意図しなかったものがそれぞれの人物にどれだけ出てくるか。そこがすごく見たいですし、歌舞伎の皆さんにちゃんとやってほしいと思います」
──飲みに行きたいというお話もありましたが、行かれましたか?
蓬莱「勘九郎さんとはいきました。七之助さんとはまだ飲んでません。皆さんそれぞれお忙しいですからね。タイミングを見てみんなで行きたいと言っているので近々ではないかと」
勘九郎「亀蔵さん、亀鶴さんも一緒でしたよね。猿弥さんは来てくれなくて」
猿弥「なになに、みんなでいきましょうよ」
七之助「僕は猿弥さんと飲みました」
蓬莱「誘ってくださいよ(笑)」
すでにガチッと結ばれたチームワークと、和やかな中にも強い決意を感じさせる会見。新ジャンルの新作歌舞伎とはいったいどんな舞台なのか!? 歌舞伎界、いや、日本演劇界の新たな幕開けをどうか見逃さないでほしい。
取材・文/丸古玲子
【公演情報】
赤坂大歌舞伎 新作歌舞伎
『夢幻恋双紙 赤目の転生』
作・演出:蓬莱竜太
出演:中村勘九郎 中村七之助 市川猿弥 中村鶴松 中村いてう 中村亀鶴 片岡亀蔵
日程・会場:
2017/4/6(木)~25(火) TBS赤坂ACTシアター(東京)