やなぎみわステージトレーラーが京都へ凱旋!
台湾で出会った移動舞台車(ステージトレーラー)に魅せられ、舞台車での演劇公演を企てたやなぎは、まず2014年の横浜トリエンナーレで、自らがデザインし輸入したステージトレーラーを発表、続いてPARASOPHIA:京都現代芸術祭2015のオープニングでは二条城をバックにポールダンス公演、京都市美術館前での「キャバレーナイト」「中上健次ナイト」を上演。そのステージトレーラーを用いて試行錯誤を重ね『日輪の翼』上演へ向け準備を進めてきました。
昨年、横浜、新宮、高松、大阪と4都市公演を巡回、今年は城崎国際アートセンターでの滞在制作を経て、東アジア文化都市2017京都「アジア回廊 現代美術展」の出店作品として、満を持して京都公演を実施いたします。
『日輪の翼』京都公演は日韓の饗宴
出演者は、俳優だけでなく、大地を踏み鳴らすタップダンサー、天空を舞うサーカスパフォーマー、その間を結ぶポールダンサーのほか、巻上公一によるオリジナル曲を奏でるギタリスト、新内などジャンルも出自も多彩な出演者たちがさまざまな趣向を凝らし、独奏的な万物照応の世界を織りなす祝祭劇です。また、今回は韓国より伝統芸能「プンムル」の使い手、林 承奐(イム・スンファン)と李 性洙(イ・ソンス)を招聘し、更に京都・東九条マダンの皆さんとの共演が決定。
中上健次が愛した漂白芸能・朝鮮半島のナムサダンのリズムが鳴り響きます。
~アジア回廊を旅する夏芙蓉~ やなぎみわ
我がトレーラーは2014年の夏に台湾の小さな工場で産み落とされ、盛大な爆竹音とともに高雄港から横浜に到着、日本に初上陸しました。「移動舞台車」というのはトレーラーの荷台が舞台になっているステージカーで、700~800台が、台湾中を駆け巡っています。冠婚葬祭、寺の祭り、選挙運動などに「貸し舞台」として出向し、油圧の力で屋根ごと持ち上がって「御開帳」すれば、内装には、けばけばしい絵柄と電飾が光り輝きます。我がトレーラー花鳥虹には、「夏芙蓉」の花の絵が描かれています。中上健次の小説に頻繁に現れる架空の花です。このトレーラーを日本に召喚せねばならないと決意させた物語。それは、中上の小説『日輪の翼』でした。舞台トレーラーと中上健次は、必然のように出会いました。
海と山の狭間にある熊野を舞台に多くのサーガを紡ぎ続けた中上健次は、1982年に長編『日輪の翼』を書きました。彼は大胆にも、この作品によって、自らが紡ぐ物語そのものを、愛憎渦巻く故郷〈路地〉から出奔させます。トレーラーに棲む7人の老婆は、生れ暮らした地を懐かしんで語り、御詠歌を唱え、茶粥をすする生活をして、「オバら」が行く先々は束の間の〈路地〉となります。同郷の運転手の若者たちは、老婆たちの望むとおりに、伊勢へ、諏訪へ、恐山へ、そして皇居へとひた走ります。終局のない巡礼を描いた摩訶不思議なロードノベルの通り、南方から黒潮にのって日本に漂着した我がトレーラーも、終わりなき旅公演を続けることになりました。
昨夏の新宮公演で、中上作品を生み出した熊野の地に別れのクラクションを鳴らしたトレーラーは、高速道路を天駆け、今年は京都の十条出口に荷を下ろします。東九条、十条は、昔から韓国はじめ多くの国の人達が共生してきた場所です。韓国併合と、幸徳秋水以下12名の死刑者を出した熊野の大逆事件は同じ1910年に起こりました。国家という共同体維持を掲げた日本近代化が落とした暗い影は今も消えることがありません。小説『日輪の翼』の終盤、天から舞い降りるように唐突に朝鮮半島の芸能者たちが現れ、老婆たちと束の間の狂舞を繰り広げます。
2017年、平穏とはいえない東アジアで、京都から私たちが冷静に歴史を見つめ、未来に向けて思いを馳せる時、熊野の路地の老婆らと、半島の放浪芸能ナムサダンの若者たちの至福の歌垣に託した中上の願いは、韓国ミュージシャン、在日の方々が共に集う祝祭の中に体現できると思います。
有翼日輪のトレーラーのもと、芸能の力で、過去と未来、聖俗、生死、男女、すべてが混合、交配する瞬間に立ち会ってください。
金鳥来たりて 天地交合う 夏芙蓉 やなぎみわ
【あらすじ】
住み慣れた熊野の〈路地〉から立ち退きを迫られた七人の老婆たちは、同じ〈路地〉出身の若者・ツヨシらが運転する冷凍トレーラーに乗って流浪の旅に出た。伊勢、諏訪、出羽、恐山、そして皇居へと至る道中で、御詠歌を唱え、神々との出会いに至福を分かち合う老婆と、女漁りに奔走し性の饗宴を繰り広げる若者たちの、珍妙無比な遍路行。滑稽と悲哀、解放と喪失、信仰とエロティシズム……。〈路地〉の先に広がる遥遠なる旅に、人間の原初の輝きを生き生きと描きだした中上健次の痛快傑作。
【推薦コメント】
<青山真治(映画監督)>
あの懐かしくも生々しい、オバらの哄笑、アニらの衝哭、揺れる夏芙蓉、
ハチドリの羽音に現実として触れる奇跡を目の当たりにし、
今ほど我々に中上健次が必要である時はない、と確信する。必見!
<浅田彰(批評家)>
移動と変貌を続ける『日輪の翼』の舞台に、
またどこかで遭遇できるのを私は心待ちにしている。
<斎藤環(精神科医・批評家)>
聖と俗、性と暴力、父性と母性、差異のヴァイブレーションが、
「うつほ」にこもり疾走する。
この演劇は、固有の土地と時間の中で開花する魅力的な混沌である。
<中上紀(小説家)>
路地は、艶やかで生々しい現実だった。
やなぎみわ氏渾身のトレーラーが繋ぐ、めくるめく「境界」を、
今年も目撃したいです。
<野田秀樹(劇作家・演出家)>
やなぎみわは、夕闇迫る熊野の山並みを背景に、連なるトレーラーを、
ヤマタノオロチさながらに、ぶん回し、運転し、魅せた。
今時、そんな見世物を日本で見られるなんて…。
私は、芸能の荒ぶるエネルギーの根源を目撃した気がした。
【公演概要】
やなぎみわステージトレーラープロジェクト2017 東アジア文化都市2017京都『アジア回廊 現代美術展』『日輪の翼』
日程・会場:9/14(木)~17(日) 京都・タイムズ鴨川西ランプ
原作:中上健次
演出・美術:やなぎみわ
音楽監督:巻上公一
脚本:山﨑なし
出演:
南谷朝子 SYNDI ONDA 檜山ゆうこ 山本静 重森三果 辻本佳 MECAV 西山宏幸
藤井咲有里 高山のえみ 上川路啓志 SARO サカトモコ 石蹴鐘 松本杏菜 浜辺ふう
井尻有美 JanMah
招聘アーティスト:林承奐 李性洙
特別出演:東九条マダンのみなさん 渡辺毅 陳太一
★詳しいチケット情報は下記ボタンにて!