「気づかいルーシー」  ノゾエ征爾 インタビュー

ノゾエ征爾

一番難しいパターンの再演、挑戦します

 

奇才・松尾スズキ作の、可愛いけど少しグロ、なのに、笑いながら最後は温かな気持ちになる絵本を、子どもから大人までが楽しめる舞台にした音楽劇『気づかいルーシー』。
一昨年の初演が大好評で、岸井ゆきの、栗原類、小野寺修二、山中崇ら、人気キャスト全員が続投という幸福な形で再演される。松尾からの指名を受け、脚本・演出を手がけたノゾエ征爾に話を聞いた。

ノゾエ「初演は奇跡的に素晴らしいメンバーが集まって、僕と一緒にキャストもミュージシャンも悩んでくれて、みんなで答えを見つけていく稽古ができました。だから同じ顔ぶれが揃うのはうれしいんですけど、キャストが変わらないまま新しい発見をしていくって、実は一番難しいパターンの再演なんです。しかもこの2年の間に、みんなすごく活躍していて、技術的にきっと進歩している。僕も含め全員が“前回のままでいいよね”とは思っていないはずで、さあ、どうしようかと」

 

俳優やスタッフとのやり取りから生まれる発見を、何よりも大事にするというノゾエは、再演に向けての傾向と対策も、これから稽古で見つけていきたいという。
だが今回はとっておきの秘策がある。ノゾエが俳優として出演するのだ。

ノゾエ「空間に隙間を感じることが時々あったんです。原作の絵本にある、密に詰まっている感じに追いつけていないというか。特に地方は大きい会場があって、もちろんそのための演出はしていたんですけど、あと少し何かが足りないと感じることがありました。今年もありがたいことにツアーが決まっているので、そこの(原作との)ギャップを埋められる便利なポジションに僕がいようかなと考えています。俳優として何かするのかもしれないし、ミュージシャンと絡むかもしれない。それもこれから考えていくんですけど(笑)」

 

松尾の絵本がそのまま再現されたという評価もあったが、巨大ジェンガを模した美術セットは、積み重ねられた日々が実は不安定というノゾエの世界観が見事に反映されている。優しすぎて人生を複雑にしてしまうルーシーたちの物語は、大人たちにこそお薦めだ。

 

インタビュー・文/徳永京子
※構成/月刊ローチケHMV編集部 6月15日号より転載

表紙
掲載誌面:月刊ローチケHMVは毎月15日発行(無料)

ローソン・ミニストップ・HMVにて配布

 

【プロフィール】
ノゾエ征爾
■ノゾエ セイジ ’75年生まれ。脚本家、演出家、俳優。劇団はえぎわ主宰。’12年、「〇〇トアル風景」にて第56回岸田國士戯曲賞受賞。

 

【公演情報】
気づかいルーシー

sayonara
Photo:阿部 章仁

日程・会場:
7/21(金) ~30(日) 東京・東京芸術劇場シアターイースト
8/11(金・祝)・12(土) 富山・富山市婦中ふれあい館
8/16(水) 広島・はつかいち文化ホ-ルさくらぴあ大ホール

原作:松尾スズキ(千倉書房「気づかいルーシー」)
脚本・演出:ノゾエ征爾
演奏:田中馨、森ゆに

出演:
岸井ゆきの、栗原類 / 川上友里、山口航太、ノゾエ征爾 / 山中崇、小野寺修二