超体感ステージ『キャプテン翼』 元木聖也×鐘ヶ江洸インタビュー

tsubasa01

 

「男だけのリアルな部活感と絆をそのままステージにのせたい」(元木)

「リスペクトする関係性も似ている。いい作品になる自信がある」(鐘ヶ江)

 

世界の超有名選手にも影響を与えたサッカー漫画『キャプテン翼』がついに舞台化。高橋陽一による原作は1981~88年に『週刊少年ジャンプ』で連載され、その後も『週刊ヤングジャンプ』などで続編を連載。1983年にはアニメ化され一大サッカーブームを巻き起こした。オーバーヘッドキックやドライブシュートはもとより、宙を舞うなどアクロバティックなプレイがあまりの“神業”で、舞台化はおろか映像実写化も無理かと思われてきたが、超絶身体能力の持ち主たちと、演出家・振付家・ダンスパフォーマーのEBIKENこと蛯名健一、振付の松永一哉らにより現実のものになる。加えて、演劇界では初となる触覚提示技術(ハプティクス技術)の導入もある。これはソニー株式会社が開発した最先端のインタラクション技術で、特注のハプティックウェアを装着することで、舞台上の役者たちの動きに合わせた振動がリアルに観客の体に伝わってくる仕掛けだ。初めて尽くしの舞台化を前に、タイトルロールの大空翼・元木聖也と、ゴールデンコンビを組む岬太郎・鐘ヶ江洸にインタビュー。初出しのコメントもたっぷりお届け!

 

――オファーがあった時の気持ちとは?

 

元木 日本に『キャプテン翼』を知らない人はいないですよね。お話をいただいた時点ではまだ読んだことがなかったんですが、僕も題名はよく知っていました。大空翼役は素直にうれしかった。とてつもなく偉大な作品、『キャプテン翼』の“翼くん”ですから、責任も強く感じました。

 

鐘ヶ江 小学校の図書館の漫画コーナーに置いてあったから、手にしたことはありました。サッカーをやっていても、やっていなくても、みなさんが知っている。そういう責任感は正直ありますが、しっかり読み込んで自分なりに消化して舞台にのせたい。いい意味で裏切っていきたい気持ちもあるんです。

 

元木 『キャプテン翼』といえば、やっぱり“ワザ”ですよね。

 

鐘ヶ江 間違いない!

 

tsubasa02

 

――そのワザのパフォーマンスを記者会見で見せましたね。あの稽古も大変だったのでは?

 

元木 リハーサルでとてつもなく汗かきました。2日でずいぶん痩せたなー!というほど。

 

鐘ヶ江 濃い2日間だったよね。ダンスの稽古で聖也くんがエンドレスに音楽をかけるから、僕もやんなきゃ!って。座長にくっついていこうと思いました。

 

元木 体に沁み込んで納得するまで練習するタイプなんです。自分が練習しなきゃと繰り返していたら、動ける人が揃っているからみんなも踊っちゃって(苦笑)。

 

鐘ヶ江 会見パフォーマンス用の音楽はサンバ調でテンポが速く、筋肉をシビアに動かす構成だったんですよ。本番もかなりハードになりそう!

 

元木 もう、最初のビジュアル撮影の時から汗をかきました。翼くんは足を上げるポーズが多いからいろんな体勢で撮ったし、トランポリンで何度も宙返り。これ、ビジュアル撮影じゃないよねってくらい動きました。でも、それをやらないと翼くんの絵にならない。すごい写真がいっぱい撮れたのでいっぱい使ってください!本番は日本一運動量の多い舞台になると思います。

 

鐘ヶ江 ゴールデンコンビだから僕もがんばらないと。聖也くんが本当に動ける人だから。僕も巷では動けると言われますけど、聖也くんを見たら、いろんな意味で、いい意味で嫉妬を憶えました。この役者同士の関係もリアルにステージにのせられたら、お芝居につながるんじゃないかと思うんです。

 

tsubasa03

 

――翼くんと岬くんのコンビ感はすでには始まっていそうですね。

 

元木 稽古は7月頭に始まるので、会見後はしばらく会えないねと言っていたんですけど、アクロバットの練習場でバッタリ会ったんですよ、久しぶりって。

 

鐘ヶ江 全然久しぶりじゃなかった(笑)。1週間も経ってないんじゃない?一緒に練習をしましたが、そこから役同士の関係でしたよ。本当に嫉妬するんです。……実は、まだあまり言ってないんですけど、僕は前から聖也くんを見ていました。アクロバットを始めた頃、たまたま最初に見た動画が聖也くんだった。もうすごくて、こんな人いるんだ!と衝撃で。自分がアクロバットを始めた一つのきっかけの人でもあるからリスペクト。たぶん、アクロバットだけじゃなく、芝居の部分でも、そういう生の感じが出るんじゃないかと。

 

元木 僕にも言ってくれたよね、ムズ痒かった(笑)。トリッキングというスポーツなんですが、高校から始めて打ち込んでいたらいつの間にか、影響を受けましたと人に言われるようになって……。

 

鐘ヶ江 すごいワザを練習で普通にやっていましたから。普通にやるんかい!と。

 

元木 初めてお会いした鐘ヶ江くんは物静かで、あまり話しかけてこないタイプかと思ったんですが、一緒に動いていくうちに、すごく熱くて、結構突き詰める人なんだな、こだわりがある人なんだなと。第一印象のイメージがすぐに変わりました。

 

tsubasa04

 

――自分の役はどのように見ていますか?

 

元木 こんなに明るい主人公がいるんだ!と。いままでいろいろ読んできた漫画の主人公も明るかったけど、翼くんの明るさは底抜け。何事にもプラス思考で、素直で、言われたことをすぐに実行できる力もあるし、全然卑屈じゃないし。一番は、サッカーが好き、という思いにひたむきに突っ走っている意志の強さ。僕の場合サッカーに置き換えるならトリッキングやパルクールになりますが、一生懸命にやっていたらいつの間にかうまくなっていたりして、そういう点は翼くんと重なりました。

 

鐘ヶ江 岬くんは転校が多いですよね。なのに、あれだけ純朴に人と接することができるのはすごいことだと思うんです。環境が変わっても順応して、翼くんに出会ってゴールデンコンビになっていく。陰と陽。キラキラしている翼くんの影、ではないけれど、受け皿になれる心の広さを持っている点が、岬くんを一番尊敬するところだし、役としても大好きです。自分と共感するとしたら……、コミュ力?自分で言うのは恥ずかしい!

 

元木 似てると思うよ。

 

鐘ヶ江 ここ、記事になるのイヤだわ~。

 

――映像処理のできる特撮ではなく、リアルに、オンタイムに、舞台上でアクロバティックに『キャプテン翼』を見せるための準備などは?

 

鐘ヶ江 オーバーヘッドやツインシュートを舞台版でどう表現するか?会見で集まった時にEBIKENさんやみんなとも話して、すごく興味が湧いています。

 

元木 サッカーに使えるアクロバットはなんだろうと、鐘ヶ江くんとも練習場で話したよね。稽古までの間に探そうと思っています。とりあえず、サッカーボールは買いました!

 

鐘ヶ江 僕も買いました。家の壁に当てていろんな蹴り方を練習しています。……あれ、言ってよ(と、元木に目配せ!)。

 

元木 あ。うん。サッカーボールはお友だち(※大空翼の信条)、なので!

 

tsubasa05

 

――サッカーはやっていましたか?

 

元木 幼稚園から小学生くらいまではめちゃくちゃやっていました。ボールさえあれば、すぐできるスポーツだから。

 

鐘ヶ江 昼休みや放課後に、やろうぜ!って友だちと。で、翼くんの真似をしてオーバーヘッドをやって痛い目を見る(笑)。やっぱりやりますよ、あれは。芝生の上でケガをしないようにやりましたけど、いまなら宙返りしながらできます。共演のみんなもできるんじゃないかな。ほかのスポーツのワザは知らなくても、サッカーのオーバーヘッドはみんな知ってる。サッカーをやらない人も知っているし、ニューヨークのリーグでも観客が湧きますよね。

 

――ジダンやフェルナンドなど超有名選手も『キャプテン翼』に影響を受けたと公言するほどで。

 

元木 そんな作品をやれるのは本当にうれしいですし、ぜひ観に来てほしい!です。

 

鐘ヶ江 呼びましょう!

 

元木 自信を持ってそう言えるのは、体で体現できるキャストさんと、すごいスタッフさんが揃っているから。総合演出のEBIKENさんは動きのプロ。言葉も関係なく動きで魅せることができる。

 

鐘ヶ江 世界に通用するパフォーマンスを作りたい、とEBIKENさんは言っていました。そこは期待をしていただければ。僕らもがんばりますので!

 

――導入される新技術は試してみましたか?

 

元木鐘ヶ江 まだなんです!

 

――わたし(記者)はやりました。舞台上のみなさんの動きが伝わって来て、トラップとシュートでは振動の種類が違うんです。もうびっくり。耳元にシュー!という音も聞こえたりして。

 

鐘ヶ江 映画の4DXみたいな感じかな。

 

元木 僕はもともとガジェット好きですし早く体験してみたい。『キャプテン翼』だけでもすごいのに、新技術が加わるなんて、過去にない取り組みですよね。

 

鐘ヶ江 演劇界初、と、“初”の響きが光栄でうれしいです。ただ、役者側としては、曲のどこで跳ねるのか、蹴るのか、動きをシビアに決めていかなければ、せっかくの新技術とシンクロできないので、かなり精密にゲーム展開の演出があるんじゃないかと思います。で、聖也くんは空中で止まる、と。

 

元木 さすがにそれは無理!(笑) でも、翼くんは空中ワザの演出がいっぱいありそうだな。

 

鐘ヶ江 僕も空中で止まるワザを修得したい(笑)。客席を巻き込む演出もあると思います!

 

tsubasa06

 

――漫画に込められた思いはどんな風に見せたいですか?

 

元木 この現場は男しかいないし、リアルな部活感みたいなものを作っていけたらいいなと思っています。どれだけみんなで『キャプテン翼』のことを話し合えるか、どれだけ汗がかけるか。まずは自分がすべてを受け入れる態勢になって、チームワークをしっかり作っていけば、リアルな絆がステージにのせられると思う。それが、漫画の持つ世界観を表現することにもつながるんじゃないかと。

 

鐘ヶ江 それぞれ自分の中で作り込むものは少なからずあるけれど、それより、一緒に稽古をしていく中でできていくチームワークですよね。あの会見のリハーサルで感じたんです。時間は短かったけど、別にしゃべるわけでもないのに、一緒に踊ったりアクロバットをしていると、やればやるほど芯の部分でつながっていける感じがして。

 

元木 言葉じゃなく、体の動きで会話している感じだったよね。リハーサルの練習がやれて本当によかったと僕も思う。

 

鐘ヶ江 僕も、あれで方向性が見えた。

 

元木 感じるもの、通じるものがあった。一緒にやっていく結果として、ゴールデンコンビになれたらいいなと。

 

鐘ヶ江 それぞれ特技が似ているところもあるし、僕が聖也くんをリスペクトしている関係性も似ている。稽古場でできるゴールデンコンビが舞台にのせられると思っています。

 

――お二人のファンや、2.5次元ミュージカルのファンもですが、なにより『キャプテン翼』世代が注目しています。どこをアピールしたいですか?

 

元木 まず、漫画やアニメからの2.5次元作品としては意識していないんです。『キャプテン翼』という原作を持つ、舞台作品『キャプテン翼』としてやっていきたい。なので、世代の方々、特に原作ファンの男性陣に納得してもらえるようにがんばりたい。男が見て“すげえ!”“本当『キャプテン翼』だ!”と喜んでもらえるように。それゆえの新技術のガジェットでもあると思うし、僕らのアクロバットやダンスが武器になる。目で見て楽しい、体感して驚く、ショー的要素も多いので、いままで舞台に触れてこなかった方の観劇のきっかけになればと思います。

 

鐘ヶ江 ある意味チャンスにしたいと僕も思っています。僕らが舞台作品を作る時、これまで見たことのない人にどうやって観に来ていただくかっていつも考える。その点、今回の『キャプテン翼』は、小中高の男友だちからの反応が大きかったから、それだけ広い範囲に注目されている証拠だと感じました。ビジュアルを似せて寄せることより、パフォーマンスで魅了していこうという、そこは役者としてもうれしいんです。個人的には、台本があれば芝居はできると思うので、原作にとらわれ過ぎず、僕らが稽古を積んで感じたそのままを表現し、『キャプテン翼』の世界に飛び込んでいきたい。EBIKENさんにはいろんなパターンのアイデアがあるから、僕らの身体能力がマッチできれば行けると思います。

 

tsubasa07

 

―――読者にメッセージをお願いします!

 

鐘ヶ江 見ようかどうしようか迷ったら、ぜひ劇場に来てください!僕らを一度信じて来ていただければ、ご納得いただけた暁には応援してくださると信じています!

 

元木 いいものを作る自信があります。この記事を信じてください!男ばかりだから女の子も観て楽しいと思います、汗臭いのもいいですよ!(笑) 『キャプテン翼』ってなんだろう?という人も、『キャプテン翼』なら!という人も、楽しんでもらえるように僕らは準備します。

 

取材・文/丸古玲子

 

【プロフィール】

元木聖也

■モトキ セイヤ 1993年10月生まれ、東京都出身、俳優。トリッキング、FreeRunning、パルクール、XMAなどアクロバットが特技。主な出演は、映画『麒麟の翼~劇場版・新参者』、バラエティ番組『おとうさんといっしょ』、舞台『ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン』『魔劇今日から(マ)王!』『NARUTO』ほか。

 

鐘ヶ江洸

■カネガエ コウ 1992年11月生まれ、福岡県出身、俳優。特技はダンス、アクロバット、タンブリングなど。主な出演は、舞台ブルーシャトルプロデュース公演、『ミュージカル忍たま乱太郎』シリーズ、『プリンス・オブ・スライド』シリーズほか。

 

【公演情報】

超体感ステージ『キャプテン翼』

原作:高橋陽一
総合演出:EBIKEN(蛯名健一)
脚本:加世田剛
振付:松永一哉

 

出演:
大空翼 役:元木聖也
若林源三 役:中村龍介
日向小次郎 役:松井勇歩
岬太郎 役:鐘ヶ江洸
三杉淳 役:鷲尾修斗
若島津健 役:渡辺和貴
石崎了 役:輝山立
松山光 役:反橋宗一郎
早田誠 役:土井一海
新田瞬 役:加藤真央
立花政夫 役:大曽根敬大
立花和夫 役:廣野凌大
次藤洋 役:皇希

 

ロベルト本郷 役:田中稔彦

 

見上辰夫 役:瀬川亮

 

伊阪達也
北村悠
斎藤准一郎

松永一哉

 

日程・会場:
2017/8/18(金)~ 9/3(日)Zeppブルーシアター六本木(東京都)