「誰か席に着いて」田辺誠一、木村佳乃、片桐仁、倉科カナ インタビュー

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いろいろなジャンルを超えて、共感できる作品に

芸術家を支援するある財団の選定会議を舞台に、それぞれの個人的な現実問題が噴出していく、新作コメディ「誰か席に着いて」。劇団「ペンギンプルペイルパイルズ」の倉持裕が作・演出を手掛け、主演には田辺誠一、共演には木村佳乃、片桐仁、倉科カナらが名を連ねている。プライドや嘘、嫉妬、名声など様々な思いが渦巻く濃密なコメディに、キャスト陣はどのように挑むのか、話を聞いた。

――今回、皆さんがご出演される作品は、倉持裕さんが作・演出を手掛けるコメディ作品になります。コメディへの出演にあたり、それぞれ大切にしていることなどはありますか?
田辺「難しいですよね、コメディって。狙ってもどこがポイントなのか役者はなかなか客観的に判断できないですし、逆に理解しすぎないで一生懸命にやっているところが滑稽になればいいなと思っています。倉持さんとは初めてご一緒させていただくので、そのあたりはとても楽しみにしていますね。会場の大きさによっても、皆さんが楽しいと思える大きさってあると思うので、みなさんに満足していただける形になればと思っています」

木村「舞台って、映像と違うところはしっかりお稽古できることだと思うんです。それってとてもありがたいことですし、とにかく頑張って倉持さんの演出を受けたいですね。毎日どれだけ新鮮な気持ちで切り替えてできるかというのも大事なことになりますよね」

片桐「僕の場合は、コメディじゃない仕事はやりたくないですから(笑)。倉持さんの作品は、最初にコメディじゃないやつで出たんですけど、その時に『笑わせようとしてんの?』って言われて…。自分にはそんなつもり無いんですけどね(笑)。でも、そういう感じで、面白くしようとしなくても面白くなると思うんです。そのさじ加減は、もう稽古でやっていくだけですね。稽古で面白かったことが、お客さんの前でどう受け入れられるか、答え合わせみたいで楽しいんですよ」

倉科「私、あんまり人を笑わせるのに適していないんですよ(笑)。取り柄がマジメとか努力とか…そういうところばかりで。だからコメディだから笑わせようという気持ちではなく、一生懸命に生きているからこそ、その生き様が面白いという風に見えたらいいですね。ストーリーの中の会話の面白さなどを、ちゃんと詰めて表現できればと思っています」

 

――田辺さんと木村さん、片桐さんと倉科さんがそれぞれ夫婦役で、木村さんと倉科さんが姉妹という関係性になります。夫婦だけでなく、姉妹という部分も濃密な人間関係になりそうですね。
倉科「一方的に私が嫉妬している感じはありますよね」

木村「あと、私には子供がいない設定なんです。妹にはいるんだけど…。そこもまた、思うところがありそうですよね。お互いに嫉妬し合ってる」

倉科「でも、姉は仕事はうまくいってるように見えるし…」

木村「実際はスランプに陥っていると」

片桐「何か、身の回りでもありそうな感情ですよね。妹は自由奔放だけど、財団を守る家長として家のことをやらなきゃいけない姉。本当に、微妙な距離感ですね」

 

――片桐さんは倉持作品の常連ですが、田辺さん、木村さん、倉科さんは初めての出演になります。せっかくの機会なので、倉持演出について片桐さんに聞いておきたいことはありますか?
片桐「けっこう、淡々と進むんですよ。倉持さんの稽古って。最初の頃は本当に仏頂面で(笑)。でも、最近はもっと柔らかくなりました。とにかく、繰り返す稽古ですね」

木村「服装はどうすればいいですかね?」

片桐「えっ、服装ですか? 好き好きですよ(笑)。衣裳が決まってきたら、近い服装にしたりしますけど、今回は和装とかじゃないので…ジャージとかで」

木村「私、すごく迷っちゃうんですよ…。私、以前の舞台でちょっと神々しい役とかになったことがあって、ジャージで行っていいのかなって迷ったりしたんで…」

片桐「今回は神々しい役じゃないので、大丈夫ですよ(笑)」

木村「じゃ、ジャージで行きます! 膝の出たジャージで!」

 

――倉科さんは、出演は初めてですが、以前に倉持さんの演技のワークショップに参加されているんですよね
倉科「そうなんです。倉持さんは、とっても穏やかな方で。一緒に参加していた女優さんと女学生の役になって『告白しちゃいなよ~』『えーでも…』みたいな演技のワークショップでした(笑)」

木村「いいなぁ、それ! 楽しそう~!」

倉科「立ち位置をちょっと変えるだけでも、何か広がったりするので…。少しずつ広がっていく感じがすごく面白かったですね」

片桐「ちょっと余地を作ってくれる感じなんですよね」

 

――倉持さんの演出については、みなさんどのような印象をお持ちですか?
田辺「どこか品があるんですよね。面白い部分もありながら。そういうあらゆるポテンシャルの隠し味を、クルクルっと出して、みなさんの笑いの最大公約数を出してきちゃう。ちゃんとみんなで共有できるような形にするところが、すごいなと思いますね。一カ所だけ局地的に熱くなるんじゃなくて、IHみたいに全体が熱せられるというか…伝わりますかね?(笑)」

片桐「正直、初めて出たときは脚本の何が面白いかわからなかったんですよ。でも、お客さんの前でやったら『片桐くん面白いね』って言われて、あれ面白いの?って(笑)。何が面白いかは人それぞれなんだなということを身をもって教えてくださった方ですね。本当に視点がすごく面白い方なので」

木村「倉持さんの舞台って、すごく洗練されていてお客さんに媚びていないんですよ。媚びない笑い。演劇好きの方だけに向けているワケじゃないんですけど。ここが面白いですよー!って押してくるワケではないのに、どんどん興奮してくるんです。それはいつも感じます」

片桐「演劇の可能性を広げてくれていますよね」

木村「そう! 倉持さんにお会いしたのはこの間が初めてで、すぐに同年代だな、と思ったんです。でも、なかなか目を合わせてくれず、私もどうしていいかわからず(笑)。お互いに変な感じになって…。でも会うたびに距離は縮まっているし、同世代の強みってある気がしていますね」

倉科「倉持さんの舞台って何度も観たくなるんですよ。言葉のチョイスなどが、その時の心境や状況で響く言葉が違ってくることがあって。視点も面白いですし。ちょっと毒のある、でも主張しすぎない感じがすごく好きですね」

 

――まだ脚本もこれからということで、固まり切っていない部分はあるとは思いますが、こんな舞台にしたいというビジョンは現時点でどのように考えていますか?
木村「そうですね…。倉持さんって、当て書きとかされるんですかね?」

片桐「今回は新作ですし、そういう部分はあると思いますよ」

木村「じゃ、書かれてきたことが私っぽいってことになるんですよね…」

 

――そう考えると、役のキャラクターが固まるのが楽しみですね(笑)。今回は、それぞれがクリエイティブな仕事を持ちつつ、芸術家を支援する財団の選定員という役どころになります。
倉科「私は…まだ役については何も考えていないですね。でも、目の前の現実に精一杯というところは、本当にそうだなと思っていて。仕事をしながら未来の話とかをしていても、結局、頭の中は『どうしよう…』って考えているなんて、当たり前のことじゃないですか。コメディというくくりですけど、とてもセンシティブなところを扱っていると思うので、笑えるけれどどこか心に響くような、残るようなものにしていけるよう頑張りたいです」

片桐「こんなふうに演じようと思ってやって、うまくいったことがないんです。いろいろやってみても『そんなふうにやっているようには見えません』って言われてしまって(笑)。でも、言葉の端々にキャラクターって出てくると思うんですよ。僕が演じる役は、お金の問題はありますけど、不倫とかの大きなものじゃないので…言いたいことをサラッと言ったりするんじゃないかなぁとは思っていますね」

木村「人数も少ないので、ずっと一緒にお稽古していくわけですが、不思議なんですけど…とても深いところに行くんです。その日の体調やいろんな要因がありながらも、いつも同じことをやりきっていく醍醐味があるんですよね。観に来てくださる方もお時間を割いて来てくださっていますし、本当にいいものにしていきたいと思っています」

田辺「芸術家たちを描いたものではありますけど、どこか普通の会社にもあるような部分というか…40代ならではの悲哀なんかは表現できればと思いますね。いろいろなジャンルを超えて、悩みなどの共感できるようなところを持たせていければと思っています。ぜひ、楽しみにしていただきたいですね」

 

――公演を楽しみにしています! 本日はどうもありがとうございました

 

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インタビュー・文/宮崎新之

 

【公演概要】
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誰か席に着いて

日程・会場:
11/10(金)~12(日) 東京・THEATRE1010
11/15(水) 石川・北陸電力会館 本多の森ホール
11/18(土)・19(日) 大阪・サンケイホールブリーゼ
11/21(火) 静岡・浜松市浜北文化センター 大ホール
11/23(木・祝) 福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール
11/25(土) 広島・はつかいち文化ホ-ルさくらぴあ 大ホール
11/28(火)~12/11(月) 東京・シアタークリエ
12/13(水) 新潟・上越文化会館 大ホール
12/15(金) 山形・やまぎんホール(山形県県民会館)
12/17(日) 福島・とうほう・みんなの文化センター(福島県文化センター)

作・演出:倉持裕
出演:
田辺誠一、木村佳乃、片桐仁、倉科カナ
福田転球、富山えり子