世界的演劇作家・岡田利規が、野心で選んだ若手俳優とタッグ
挙動不審な身振りが気付かせる社会の外圧。語り手を移行させて問い直す、演じることの意味。この作品の登場で、大げさでなく、日本の演劇は更新された。2005年、岸田國士戯曲賞を受賞し、世界も絶賛した『三月の5日間』が、25歳以下の俳優でリクリエーションされる。12月から始まる全国ツアーのためにすでに準備を進める作・演出の岡田利規に話を聞いた。
岡田さん主宰のチェルフィッチュが20周年で、それを記念しての代表作のリクリエーションですが、出演者オーディションを25歳以下と限定したのはなぜですか?
岡田「とにかく思い切ったことをしたかったんです。もともと、若い俳優と出会いたいとも考えていました。理由の1つに、チェルフィッチュは海外公演が多く、中には日本国内で思うように活動できないことにストレスを感じる人もいる。キャリアのスタートから僕らのスタイルを当たり前だと思う人が増えたらいいなと」
選ばれた中には10代の人もいて、とても新鮮な座組という印象です。どう選んでいかれたんですか?
岡田「300人近くの応募があり、最初は書類審査で絞りました。次は面接で、その時はちょっと台本を読んでもらったりしましたけど、重点を置いたのは、野心があるかってことでした。さっきの海外公演も含めたチェルフィッチュの活動によって、僕自身がとても多くの経験をし、それを糧にできたと心から思っているから、若い人にもそういう機会を提供できたらと考えているので。その機会をできるだけ活かしてくれそうな人がいいと思ったんです。もちろん良い役者であることは外せない要素ですけど」
野心を問われてキョトンとしない人たちが選ばれたということですね。
岡田「まあ、“野心”という言葉はわりと人をキョトンとさせますけど(笑)。『そんなこと考えたこともなかったです』みたいな人は残っていません」
あるインタビューで「選ばれた7人がすごくおもしろくて刺激を受けている」とおっしゃっていましたが、どんなおもしろさか教えてください。
岡田「みんな上手いですよ。それはもちろん上っ面の技術ではなくて、ちゃんとプレゼンスがあるということ。役者が舞台に立つことでいろんなことが引き起こされるわけですけど、そのことへの覚悟がちゃんとできてる。そういう役者は観ていたくなるじゃないですか。そんな人たちが集まってくれたので、大いに期待してもらって大丈夫です」
インタビュー・文/徳永京子
Photo/斉藤豊
※構成/月刊ローチケHMV編集部 10月15日号より転載
※写真は本誌とは異なります
掲載誌面:月刊ローチケHMVは毎月15日発行(無料)
ローソン・ミニストップ・HMVにて配布
【プロフィール】
岡田利規
■オカダ トシキ 演劇作家、小説家、チェルフィッチュ主宰。独特な言葉と身体の関係性を用いた手法が評価され国内外で注目を集める。’05年に「三月の5日間」で第49回岸田國士戯曲賞を受賞。
【公演概要】
チェルフィッチュ『三月の5日間』リクリエーション
日程・会場:
12/1(金)~20(水) KAAT 神奈川芸劇術劇場 大スタジオ
作・演出:岡田利規
舞台美術:トラフ建築設計事務所
出演:朝倉千恵子、石倉来輝、板橋優里、渋谷采郁、中間アヤカ、米川幸リオン、渡邊まな実