「不条理演劇の大家」と称されるハロルド・ピンターの代表作、『管理人』が11月26日(日)よりシアタートラムにて上演中。それに先立ち、ゲネプロが11月25日(土)に行われた。
ロンドン西部のある家の一室を舞台にした出来事を描いた本作。
宿なしの老人デーヴィス(温水洋一)は、店で偶然知り合った親切な青年アストン(忍成修吾)に誘われ、彼の家に泊まり込む。翌日、いきなり現れた青年ミック(溝端淳平)に激しく責め立てられるが、その後、ミックはアストンの弟であると知る。やかましく図々しいデーヴィスに対し、無口なアストン、切れ者のミックがそれぞれこの家の「管理人」にならないかと提案してくるが、兄弟二人に見込まれたデーヴィスの態度は徐々に変化していき―。
溝端が演じるのは、家の所有者を名乗る切れ者ミック。テレビでの溝端の好青年な印象とは異なり、ミックは口数こそ多いものの、常にどこか人を馬鹿にしているような、本心の見えない男。聞いてもいない話を延々と語り、恐ろしいほどの長台詞を流れるようにまくしたてる様には、思わず感心してしまった。
アストンを演じるのは忍成修吾。3人の中で唯一落ち着いているように見えるが、観客を最もハラハラさせたのは彼だろう。危うげな瞳で過去を語る姿には、次にどんな言葉を発するのか、観客を身構えさせる迫力があった。
温水洋一は、みすぼらしいが大口をたたくことだけは達者な宿なしの老人デーヴィスを演じる。兄弟に振り回されながら、自らもトラブルの種となり続ける図々しい老人だが、温水が演じるとどこか弱さを感じさせるようで、その演技力の高さには思わずひきつけられてしまった。
舞台となる一室には、沢山のガラクタが置かれ、ベッド以外にはまともな居住スペースもない。天井からは水が漏れ、使い道のなさそうな新聞紙が積み上げられている。そんな中で、自らの居場所を巡る駆け引きが3人の男たちによって繰り広げられる。
ガラクタを捨てられない男と、ガラクタを処分したい男。そして、ガラクタのように扱われてきた男の、壮絶で、それでいて少し滑稽な物語である。家とは、居場所とは、生活とは何だ、と、自分の存在の意味を考えさせられた。
本作は2017年12月17日(日)までシアタートラム、その後12月26日(火)・27日(水)は兵庫県立芸術文化センターで上演される。
男たちの複雑、横暴で繊細な掛け合いを、是非劇場で体感してほしい。
撮影:細野 晋司
【公演概要】
『管理人』
日程・会場:
11/26(日)~12/17(日) 東京・シアタートラム
12/26(火)・27(水) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
作:ハロルド・ピンター
翻訳:徐賀世子
演出:森新太郎
出演:
溝端淳平 忍成修吾 温水洋一