少年社中20周年記念第一弾 少年社中×東映 舞台プロジェクト『ピカレスク◆セブン』毛利亘宏 インタビュー<前編>

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2018年1月に上演される、少年社中×東映 舞台プロジェクト『ピカレスク◆セブン』を前に、演出・脚本家の毛利亘宏にロングインタビュー!

『宇宙戦隊キュウレンジャー』にてメインライターを務める毛利だからこその発想で誕生した「“登場人物、全員、悪者”」のピカレスクロマン作品。
その本作を「少年社中20周年記念第一弾」と銘打っての公演に至るまでの経緯を辿った。
毛利自身のルーツ、毛利が全作品を手がけている主宰する劇団・少年社中が20周年を迎えるまでの紆余曲折……。前後編に渡りお届けする。

 

―― 毛利さんが初のメインライターを務められた『宇宙戦隊キュウレンジャー』もクライマックスに向かっています。正義の味方を描く一方で『ピカレスク◆セブン』の構想を思い付かれた、その化学反応についてお伺いできますか?

毛利「圧倒的なヒーローを描きたいという気持ちはありまして、それが『キュウレンジャー』で爆発しています。ずっと書きたいと思ってたのは、本編のセリフで悪役が放つ「1対11なんて卑怯じゃないか」に対して、ラッキー / シシレッドが「宇宙を支配しているヤツがそんなことを言うんじゃねーよ!」と言い返すところ。凶悪犯罪者が目の前にいるとしたら、1対1で警察官が退治するのを誰も望まないじゃないですか。数で制圧していくことには矛盾がないと思っているんです。だけど、それぞれが内包する“悪”や立場を変えたら……というところは、深く描かないようにしていました。『キュウレンジャー』をやっていく中で、自分の頭の中で生まれた想像の分岐先を捨てたり仕舞っていたものがたくさんあったので、それを使いたいと思ったことが『ピカレスク◆セブン』の理由ですね。僕自身が本質的に思うことは、『仮面ライダーオーズ/OOO』で描かせていただいたバッタヤミー回(21話、22話)なんですよ。」

 

―― 「正義」と「悪」の境目について考えさせられる話でした。その2つは実は同じモノであったり、表裏一体のような存在なのでは、と。『キュウレンジャー』の絶対悪であるドン・アルマゲにも「実はこういう理由がはこういう理由が……」と、もしも明かされたりしたら「正義」と「悪」が揺らいでしまいますね。

毛利「そう。悪役にも感情移入させることは当然可能なんですけど、『キュウレンジャー』はそういう作品ではないので。『仮面ライダー』は元々、悪の力を使って正義のために戦うという業を背負っていることが面白さですけど、スーパー戦隊シリーズは正義の力を使って悪を倒すものなんですよね。だからこそ、自分の中で分岐していた別のアイディアが『ピカレスク◆セブン』につながってきているところです。それと脚本家としては、1年間以上40本近くの脚本を書き続けてきたことで、圧倒的に鍛えられた部分があるというか。物書きってやっぱり書く量、仕事をすればするほど向上する側面もあると思うので、今の力を試してみたい。どのくらいレベルが上がったかなと自分でも試してみたいというのがあります。」

 

―― 相当大変なスケジュールだったのでは?

毛利「出来る限りは自分で書きたいと思っていました。とはいえ舞台も何本かやるのが決まっていたので、最初から他の方にお願いする話しをしていました。お任せした結果、キャラクターの違う魅力が描かれて、刺激にもなりました。ラストの方はずっと僕が書かせていただいてます。2本書きながら初稿が書き上がった時点でその次の打ち合わせを始めて、2稿、3稿と次のプロットを並行して……というペースでしたね。1本を2週間で書き上げることを重ねていくような感じです。でも別々の作品を同時に走らせることよりは全然ラクです。つながっている話を書いているので、同時に書いていれば前の話にフィードバックして直せるところもありますし。そういう意味でも、最後に向かってとても良い感じで進められています。」

 

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―― 最終回まで楽しみに視聴させていただきます!ここからは、少年社中20周年ということで、少年社中の始まりから伺っていきたいと思います。まず、ご自身の出身地である愛知県・名古屋で演劇活動をされていたことが始まりかと。

毛利「はい。高校時代の話になりますね。高校生が色んな高校から集まって劇団活動をしていました。その時代の先輩が「少年社中」という名前を付けたことが始まりでもあります。当時から26年来の付き合いになるのが劇団員の井俣太良です。」

 

―― そこから東京に進出しよう、となった理由は?

毛利「東京で一旗揚げたかったのもありますし、第三舞台などの劇団がみんな大好きだったので。そこで「東京で勝負するべ」と言った先輩の元、早稲田大学演劇研究会(通称:劇研)に入りました。当の先輩は早稲田大学演劇研究会のキビシイ身体訓練を受けて、いなくなっちゃったんですけど(笑)。

 

―― まさかのリーダーが!

毛利「入って最初の日、1時間くらい訓練をした後に、その先輩がすくっと立ち上がってボソボソッと研究会の方とお話して、スッと立ち去ってしまったんですよ。なかなかすごいですよね。15人くらいで上京したリーダーシップを取っていた人が(笑)。でも結果論として僕が「少年社中」をやるとなって、それから今の僕があるので感謝しかないです。」

 

―― その後、所属されていた劇団「東京オレンジ」を脱退され、劇団「少年社中」を結成されて。当時、20年を迎える劇団となる想像などはされていましたか?

毛利「いやーもう。当時は4、5年もやれば人気劇団の仲間入りが出来るだろうと、変な自信だけがあったんですよ。俺達の作るものは面白いハズだと。でも数字が如実に上がらず、4年くらい平坦な活動をしていて。その辺りで現実が分かって、地道に堅実にやっていこうと思ったところはあります。」

 

―― 平坦な道から上り坂に入って今があるというところもあると思いますが、転機というと?

毛利「個人的なところも含めてですけど、2008年、劇団「少年社中」10周年の時に『カゴツルベ』という作品をやりまして。歌舞伎の演目の「籠釣瓶花街酔醒」(カゴツルベサトノエイザメ)を題材にして、少年社中風にアレンジしてやった作品なんですけど。それを商業(演劇)でやらないかというお話が出て、翌年の2009年に青山劇場とNHK大阪ホールでやらせていただいたんです。ですが、完全に色々と実力が足りず……。」

 

―― 挫折感を味わって。

毛利「そこから一念発起というか、このままじゃダメなんだな、もっと鍛え直さないと! と思ったことが、その後のキッカケになっている部分があります。でも、その後1年くらいは仕事がちょこちょこあったんですけど、そこからふいにプツリと仕事が止まってしまった時期があったんですよ。その間は居酒屋でアルバイトしながら「キビシイ世界だな~」と思いながらやっておりました。」

 

―― 居酒屋ですか……!?

毛利「もう「本当にギアを上げないとダメだ、俺は出来るハズだ!」と信じ込んで。その一念発起した時に作った少年社中の作品が2010年に上演した『ネバーランド』です。それが多くの方に好評をいただき、そしてその年に『仮面ライダーオーズ/OOO』もやらせていただいて、『薄桜鬼』という作品にも出会い……。だからギリギリまで追い詰められてやらないと、良い作品って生まれないんだなと思います。」

 

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―― 少年社中は精力的に新作を生み出されているイメージが強いのですが、その理由は?

毛利「僕が再演に対して、ネガティブなイメージを持っていることが一つの理由です。出来ているモノに向かうのはラクなんですけど、物足りないというか。そうなると作品に向かうエネルギー量が足りていないって思っちゃって、自分に甘えが生まれてしまう。新作が失敗する・成功するという賭けであっても、大きな勝負の時は再演の演目を選ばないようにして自分を奮い立たせているというのが正直なところですかね。再演は本当に良い作品しかやらないと決めているんです。8月に上演した『モマの火星探検記』は『ハイレゾ』という作品から生まれて、16年かけて熟成し続けている劇団の代表作です。再演の演目を選ぶ時は、自分と少年社中にとって、再演することが挑戦と思えてはじめて作品に向かうエネルギーが生まれている時でもあります。」

 

―― 新作のアイディアや構想はどこから生み出されるものなのでしょうか?

毛利「日頃から並行して考えていますね。昨日はずっと3月にやる新作『ミュージカル「陰陽師」~平安絵巻~』の詞を一日かけて考えていたのですが、その休憩中に再来年の少年社中の企画を思いついたのでそれをまとめていて。その流れで『キュウレンジャー』を書いて……。常に4本くらい平行していたりします。」

 

―― 失礼な質問になりますが、こんがらがることはないですか?

毛利「こんがらがっては……いますね!でも、それが良い影響を与え合うことの方が多い気もします。『モマの火星探検記』は『キュウレンジャー』とすごく相性良かったですし、「Messiah メサイア」シリーズも意外と合わせやすかったので、この夏は大丈夫でした!」

 

―― そのベクトルが上手い具合にいくと、『ピカレスク◆セブン』と『キュウレンジャー』のように新しい作品が生み出されていくと。

毛利「そうですね。ま、食い合わせが悪い時は全く別の刺激がありますし、なんだかんだで頭の中にある色々な作品がアクティブな状態であるのは良いことだと思うようにしています。」

 

―― 少年社中の作風が“ファンタジー”というジャンルで括られることは、意図的に狙っていったものですか?それとも自然にそうなったのでしょうか?

毛利「ポリシーという程のことでは無いんですけど、好きなんですよね。僕自身がアニメやそういうモノが好きなところから入っているので、どうしてもそっちに行きがち(笑)。あとは動いて汗をかいて叫んで……ということをやろうとすると、ファンタジーの方が相性がいいんですよ。」

 

―― 確かに。異世界の方が行動の範囲が広がる気がします。

毛利「元々、80年代の演劇に憧れて上京したので。でも上京したら90年代の静かな演劇が主流になってしまって、見栄を切って前向いてしゃべるのが恥ずかしいとか、昔は散々バカにされたりもしたんですけど(笑)。」

 

―― でもお好きだった演劇を貫いて。

毛利「それしか出来なかったというのもありますけど(笑)。でもそうですね、何よりそういう演劇が好きだった。何も起こらないことの何が面白いんだ?と。大変なことがなにかしら起きちゃって…!と、つい思ってしまう(笑)。」

 

―― 『ピカレスク◆セブン』の鼎談でもお話されていた“散り際”のような。

毛利「美学ですからね。日常から離れたくて演劇に触れるのに、という想いがあるんです。もちろん静かな演劇スタイルの中にも素晴らしいお芝居はありますが、僕はそっちには行かなかったです。それ故に“特撮”の世界にすぐ馴染めたということはありました。「怪人」も「変身!」も、僕の中ではスッと入れた。」

 

(後編へ続く)

 

取材・文/片桐ユウ

 

【公演概要】
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©少年社中・東映

少年社中20周年記念第一弾
少年社中×東映 舞台プロジェクト 「ピカレスク◆セブン」

日程・会場:
2018/1/6(土)~15(月) 東京・サンシャイン劇場
2018/1/20(土)・21(日) 大阪・サンケイホールブリーゼ
2018/1/27(土) 愛知・岡崎市民会館 あおいホール

脚本・演出:毛利亘宏

出演:
井俣太良 大竹えり 岩田有民 堀池直毅 加藤良子 廿浦裕介
長谷川太郎 杉山未央 山川ありそ 内山智絵 竹内尚文 川本裕之

鈴木勝吾 宮崎秋人/椎名鯛造 佃井皆美 相馬圭祐 丸山敦史
唐橋充 松本寛也 細貝圭/大高洋夫