韓国で社会現象を起こした『ミセン』をホリプロ×韓国クリエイター陣が世界初オリジナルミュージカル化!いよいよ1月10日に開幕する本作の創作の過程が一部公開された。
稽古場披露レポート
(撮影:田中亜紀)
稽古場では初めてのシーンと楽曲、各シーンの披露後には、ノート(演出のオ・ルピナがキャスト陣へ段取りや演出上の確認を行う)の様子もみられ、普段見ることのない稽古の様子をそのまま感じられ、初演の創作の過程が披露された。
この日披露されたのは6シーン。
〈1シーン目〉M1 ワン・インターナショナル
主人公チャン・グレは、幼い頃から目指していた囲碁のプロ棋士への夢を絶たれ、高卒で社会経験もないまま、 突然、大手総合商社のインターンとして働くことに。彼の目の前に広がる世界はどのようなものになるのか。インターン生たちが不安を抱えながらも、夢への第一歩を踏み出すオープニングナンバー。
〈2シーン目〉M4 おはよう、チャングレ
正社員採用本試験のプレゼンテーションのためのペアを探すインターン生たち。自分を引き立たせる相手として突然人気者になるグレは誰とペアを組むことになるのか、インターン生たちの熾烈な争いがスタートする。
〈3・4シーン目〉
M7 君を慰める夜
ペアでそれぞれのプレゼンの準備を進めるチャン・グレとハン・ソギュル、アン・ヨンイとチャン・ベッキ。それぞれの理想と現実のギャップに打ちのめされる4人は、居合わせた居酒屋でお酒を酌み交わし次第に打ち解けていく。
M8 それぞれの戦い
プレゼンの直前まで分かり合えないチャン・グレとハン・ソギュル。現場とオフィスというそれぞれの戦場の厳しさをぶつけ合い、互いを認めていく、二人の関係性の変化を象徴するナンバー。
〈5・6シーン目〉
M15 ヨルダン
インターン試験を経て契約社員として採用されたチャン・グレは、営業3課としてある大きなプロジェクトに挑む。真の商社マンとしてモノを売るために必要なことは何かを学びながら、中東・ヨルダン事業のプレゼンに向けてアイテムを探し、市場調査を進める軽快なダンスナンバー。
M16 給湯室で
一方、正社員として採用をされたアン・ヨンイ。インターンから正社員になっても会社では上司からの風当たりが強く自分の立場に悩むアン・ヨンイに、男社会の中、女性として道を拓き歩み続けているソン次長と女性社員たちが人生の先輩としてのメッセージを伝える。
演出家・キャストコメント
■オ・ルピナ(演出)
このように素晴らしい俳優・スタッフの皆様、日本の素敵な環境の中で初演を作ることができて本当に嬉しく思います。
『ミセン』は私たち人々の話です。会社員の物語ではありますが、会社員だけでなく現代社会に生きている私たちが、いつも考えている物語を作れたらと思い、皆様に感動を与えられるように、一生懸命稽古をしています。国や時代を超える作品だと思いますので、劇場にいらして素敵な時間をお過ごしください。最後までスタッフの皆さんと最善を尽くして頑張りたいと思います。そして俳優の皆様、本当にありがとうございます。愛しています。
■前田公輝(チャン・グレ)
初めて稽古場披露をして、初日前に皆さんの前でやらせていただく緊張感とか、こういうことを気を付けようとか、もう一回振り返る時間が増えたことが本当にありがたいです。
何か一歩を踏み出すというのは簡単なことではありませんが、チャン・グレは信念を持ちながら一手(一歩)ずつ進んでいくことで幸せを掴みます。この作品はそんな希望や幸せを見出せる物語だと思っています。そこに演出のオ・ルピナさんを筆頭に韓国クリエイターたちの引き寄せる力と、日本のリアリティを追求する力と、それぞれのいいところをどんどんブラッシュアップして、新しいミュージカルを作れたらいいなと思っております。
■橋本じゅん(オ・サンシク課長)
今回参加することをきっかけにドラマ版を見て「なんて面白い作品なんだ」と感動して、グイグイ世界観にも引き込まれ、この作品に出会えて本当に幸せに感じています。
劇中でオ課長が「踏ん張るんだ」と言いますが、その言葉がぼくはすごく刺さって、僕たちも毎日踏ん張りながらこの作品を作っていますので、出来上がった作品のメッセージを通して観てくださった皆さんに「ひとりじゃない、今日も踏ん張っている」と勇気を受け取ってもらえたらいいなと思っています。
■清水くるみ(アン・ヨンイ)
私は元々ドラマのファンだったので、アン・ヨンイとして出演できることがとても嬉しいです。ドラマファンの私からしても、ミュージカル『ミセン』はとても満足するような作品だなと思います。
それにプラスして演者の私たちにも響くような演出や、芝居と一体化するダンス、素晴らしい楽曲とで、とても素敵なミュージカルになっていると思います。働く人にはきっと響く、心に寄り添ってくれる作品になっていますので、ぜひご覧ください!
■内海啓貴(ハン・ソギュル)
今回、初演に携わることができてすごく稽古もわくわくした気持ちで過ごしています。稽古始めの時に演出のオ・ルピナさんが「この作品の大きなテーマは”ひとりではない”ということ」なんだとおっしゃっていて、僕はそれを自分の中でもテーマにして、観に来てくださったお客様が観終わった後に、友達や家族だったり、恋人だったりに「連絡してみようかな?」と、心が温まる作品を届けていきたいと思います。よろしくお願いします。
■糸川耀士郎(チャン・ベッキ)
この作品は性別だったり年齢を問わず、観て下さるお客様一人一人に「分かる!」と共感していただけて刺さる部分が必ず一つはある作品になっていると思います。劇場全体でこの作品を感じて、いい空間にできたらいいなと思います。本番までまだまだ作りこんでいきますので、よろしくお願いします。
■中井智彦(パク・ジョンシク課長)
僕はいつもミュージカルを見た後に何が残るのかなというのを考えて観ていますが、『ミセン』に関しては何が正解で、何が不正解か本当にわからないです。会社・社会というものがここまでクローズアップされていて、それぞれが思うことを思ってほしいと最後投げかけで終わりる作品を僕はあまり観たことがありません。だからこそ、普通に社会で働いているみなさんに観ていただきたいなと思います。演出のオ・ルピナさんが壊して直して、新しく作って、凄くフレキシブルで素敵な現場だと思っています。劇場でお待ちしております。
■あべこうじ(キム・ドンシク課長代理)
初めてのミュージカルで、歌のリズムがなかなか取れなくて、歌っている最中にスタッフの皆さんがリズムを取っててくれていてその中で歌っています(笑)。本番もそういう方が客席にいたらいいなと思ってます!よろしくお願いします。
■東山光明(居酒屋店長/協力会社社長(2役))
僕の演じるキャラクターは『ミセン』の中でクスクスと笑ってもらえる役どころがあるのかなと思います。そして安蘭さん、清水さんも歌われる「給湯室で」という曲は僕らもいつも感動して泣いています。このように緩急がしっかりとあるこの作品を、最後までしっかりと作り上げていきたいと思います。
■石川 禅(チェ・ヨンフ専務)
韓国の作品を韓国のクリエイターたちが作って、それが日本で初演を迎えるというのは初めての試みです。そのような初めての試みをプレゼントしてくださって、私たちもそれを受け取って、大事に大事に作っていけたらと思います。本当に日ごと日ごとに変って行っています。まだまだこれから成長していく作品だと思いますので、ぜひ観に来てください。頑張ります。
■安蘭けい(ソン・ジヨン次長/グレの母(2役))
私が演じる2役はとても温かく包容力のある女性で、私の中でもどうやって役の違いを演じようかなというのが課題ですが、どちらも私にぴったりの役だと思っています(笑)。
前田君とお母さんのシーンを稽古中している時に、ルピナさんが演出をしながら涙を流されることがあって、ルピナさん自身もすごく愛情をもって接してくださるので、それが伝わって、すごくいい作品になるんじゃないかなと思います。ぜひ、楽しみにしていてください。
あらすじ
主人公のチャン・グレは子供の頃から囲碁のプロ棋士になることを目指し厳しい修練を重ねてきたが、囲碁のプロ棋士になる夢を諦めざるを得なくなり、社会に放り出されてしまう。
特別な学歴やスキルがない彼は、働くことに対して強い不安を抱えながらも、知人の紹介で大手貿易会社「ワン・インターナショナル」のインターンシップに参加することとなる。
入社早々、グレは厳しい現実に直面する。熾烈な争いを勝ち抜いてきたエリートばかりの同期インターンたち。企業社会での経験が皆無のグレは、明らかに遅れを取っている。エリート街道を歩んできたアン・ヨンイや、地方出身で努力家のハン・ソギュル、学歴もありプライドも高いチャン・ベッキ、といった個性的なメンバーが揃い、それぞれが異なる課題に直面しながらも競い合っている。
グレが配属された第3課は会社では日陰の存在。この課を率いるのが、情熱と人間味あふれるオ・サンシク課長。オ課長は、表向きはぶっきらぼうで口が悪いものの、部下たちを思いやり、仕事に対する強い誇りを持つ姿は、「会社員としての生き方」をチャン・グレに教えていく。彼の指導の下、グレは自分の経験や囲碁で培った戦略的思考を仕事に応用し、少しずつ成果を上げていく。インターン生たちもそれぞれの試練を乗り越え、個々の成長だけでなく、互いに支え合いながら成長する重要性を学んでいくことになる。
「ミセン」は、企業を舞台にした物語でありながら、企業内での出来事を通じて社会全体の縮図を描き出している。働くことの意味、人間関係の複雑さや仲間との絆、個々の成長と葛藤がリアルに描かれ、登場人物たちがさまざまな社会的な課題に直面しながら人生を選択していく。企業という社会で繰り広げられる物語は、観客の共感を呼び、働き生きることについて深く考えさせられる。